発見の感動を何度も味わえる秘密兵器(植物判定アプリ)
数年前まで、植物に全く関心がありませんでした。
樹木や草花の名前も、ほとんど知りませんでした。
そんな私が植物に興味を持ち始めたきっかけは、植物判定アプリという文明の利器を手にしたことでした。写真を撮るだけで、その植物の名前をかなりの精度で判定してくれます。
このアプリを片手に散歩すると、毎日がうれしい発見に包まれます。
Picture This という腕利きアプリ
植物判定アプリにも色々な種類があるので、私もほとんど全てのものを試してみました。その中で、判定の精度がダントツのNo.1だったのがこのアプリです。年間4,200円とそれなりに高額なのですが、植物の図鑑を2冊ほど買うよりもはるかに効率的なので、私の数少ないサブスクアプリの1つとなっています。
実際に、私の散歩の様子をご紹介しましょう。
急に暖かい日が増えてきたこの頃、桜の開花はかなり遅くなっていますが、植物たちは一斉に芽吹いています。まさに観察日和。
この週末は八ヶ岳ではなく東京にいるのですが、近くの公園を散歩しながら植物を観察してみました。今回は、苔に注目です。
都内の公園にも、多種類の苔がある
東京都内の公園でも、色々な種類の苔があるものですね。
遠目から見ると緑の絨毯にしか見えないのですが、近づいてみるとそれぞれ形が違うことが分かります。
苔は地面の低いところを這いつくばっています。
そこから胞子を飛ばしても遠くへ飛ばないので、なるべく高いところから胞子を飛ばそうとするんですね。そのために伸びているのが、朔(さく)と呼ばれる部分です。正確には、伸びている部分全体のことを胞子体と呼び、その先端にある部分を胞子嚢(のう)と呼びます。朔と胞子嚢は同じ意味です。ここに、胞子がたくさん詰め込まれています。
たくさん朔を伸ばしている苔があったので、アプリで判定します。
出てきたのは、「ヒョウタンゴケ」の文字。
おお。お前が噂のヒョウタンゴケだったのか。ちょっとうれしくなります。
ヒョウタンゴケのことは、苔の本を読む中で存在を知っていました。
焼け跡にいち早くやってくる植物です。成長がとても速く、いち早く朔を伸ばして胞子をまき散らせば、枯れていなくなってしまいます。
同じ場所に留まらないことから、「逃亡者」とも呼ばれます。
街中でもよく見られる苔とのことでしたが、私が実物を認識できたのはこれが初めてでした。
一度認識すると、そこら中にヒョウタンゴケが生えていることが分かりました。こんなに身近な苔だったんですね。
次に、トップの写真にも掲載したジンガサゴケです。
ヒョウタンゴケなどが生えているすぐ横で、不思議な傘の形を見つけたので、植物判定アプリをかざしました。
この苔については、アプリは正しく判定してくれませんでした。ゼニゴケと表示されたのですが、明らかにゼニゴケの雄株や雌株とは違う形です。
まあ、こういうこともあります。それでも、8割くらいの精度で正しい植物名を表示してくれるというのが私の実感です。
自分で調べ直してみて、これがジンガサゴケであることが分かりました。
文字通り「陣笠」の形をしているので、分かりやすい名前ですね。
正確には、陣笠の部分は正確には雌器托(しきたく)と呼ばれていて、これから傘の下に黒い胞子嚢ができて、胞子を飛ばすことになります。
この苔も、私にとっては初発見でした。
人生で初めての発見を何度も体験できるというのが、植物観察の醍醐味ですね。
判定が難しい苔も多い
次に紹介するのは、とても身近な苔です。
都内の公園でもたくさん生えていますし、八ヶ岳の家の庭にも群生しています。私は、この苔を「コツボゴケ」と認識していました。
今回都内の公園でこの苔を撮影すると、何度トライしても「ツボゴケ」というようにアプリに表示されます。
名前のとおりで、コツボゴケとツボゴケは、非常に近い仲間です。
そして、見た目がそっくりなので、この茎や葉の形だけでは区別することが困難なのです。
両者の大きな違いは、生殖方法です。
コツボゴケ : 雌雄異株(しゆう いしゅ)
ツボゴケ : 雌雄同株(しゆう どうしゅ)
コツボゴケの生殖時期は、梅雨の季節です。この季節に雄株と雌株を視認することができれば、正確に判定することができますね。
3月末の初春の段階では、人間には判定することは難しいと思うのですが、植物判定アプリは人間には検知できない部分までを判定材料にしているのかもしれません!?
苔の撮影環境
ちなみに、全ての写真はスマホ(旧式のiPhone)で撮影しています。
スマホ単体でも近距離でのマクロ撮影ができるのですが、苔の細部をくっきり撮影するには、もう一工夫が必要です。
この写真は、スマホにマクロレンズをつけて撮影しました。
100円ショップにも同様のレンズがあり、このレンズも有用です。
ただ、レンズの口径自体が小さいので、写真の周辺部分がぼやけるという特性があります。その点、このレンズは3,000円程度するのですが、さらにくっきりとした写真を撮影できます。
なお、スマホに接続できる顕微鏡についても試行錯誤中ですが、こちらはまだ使いこなせていません。
こちらは顕微鏡なので、手動でピントを合わせながら撮影します。
そのひと手間がなかなか煩わしく、マクロレンズのほうが使い勝手が良いという印象です(スマホ本体の機能でオートフォーカスされるので)。
顕微鏡で撮影した写真は、こんな感じです。ライトの当て方やフォーカスなどが慣れていないので、もう少しきれいな写真が撮れるとは思います。
センスオブワンダーを味わう
レイチェル・カーソンの名言の1つ、センスオブワンダー。
神秘さや不思議さに目を見はる感性、のことです。
植物の世界は、このセンスオブワンダーにあふれています。
本でしか見たことがなかった植物の実物に出会うという喜び。
未知の植物の種類を同定できたときの達成感。
植物の生殖方法の多様さや防御方法の巧みさに驚く知的満足感。
私はこの刺激に取り憑かれて、もう1年以上が経ちました。
日々の暮らしに退屈してしまった方。チャンスです。
植物判定アプリを試してみてください。
センスオブワンダーを、取り戻せますよ!