正しく問うこと、そして問い続けること
つい最近、健康面において人生最大級の喜びがあったので、非常に興奮しています。ここ2、3日ずっとハイです。なので、そろそろできるだけきちんと言語化して感情を整理したいのと、健康面(特に身体機能)に一つでも悩みを抱えている人にとって参考になるかもしれないので、シェアさせて下さい。
今年2022年に切り替わるタイミングの年末年始、コロナ禍下にもかかわらずありがたいことに例年通り、世間一般の休み=我々サービス業の繁忙期、ということで仕事は多忙を極め、率直に言って、疲れ果てた。このしんどさというのはかつて感じたことのなかったもので、特に休みなく働いたというわけでもないのに(しっかり週休2日)、指の痛みもなかなか取れず、体全体の重さも抜けずしばらく尾を引いた。それに加え、今まで簡単にできた「しゃがむ」などの動作が億劫になってきているのも実感し、「すっかりジジイだなあ」と苦笑している内はまだ良かったのだが、そこに、ちょっとした動作の一つ一つ、それこそ「しゃがむ&立ち上がる」などの上下の動きをすると、首がガクンと揺さぶられ、まるで「小さな追突事故によるムチ打ち」を喰らったように痛む、という現象が頻発してきたため、さすがに笑えなくなってしまった。実は今までもこの「プチムチ打ち」(以下、「プチ」)は起きていたのだが、これほどの痛みはなく、ずっとスルーできていた。しかし今はもう看過できない、明らかな痛みを伴っている。マズい。これはさすがにもう認めざるをえまい。
やはり筋ジスは悪化している。
僕は筋緊張性ジストロフィーという筋肉の難病を抱えている。発覚したのは2013年だから、もう9年も前になるのだが、これまで特に悪化しているという自覚はなかった。しかし、最近のこの「プチ」の頻発をはじめ複数の身体機能の低下は、やはり筋ジスが進行している確たる証拠だろうという気がする。この流れで、脳裏に自然と生まれてくる「問い」が2つほどあった。
Q:筋肉の病気だから、そろそろこの(それなりに身体を使う)仕事を辞めなきゃダメだろうか?
Q:筋肉の病気だけど、それでも生活のために身体にムチ打って(それこそプチムチ打ちを浴びながら)この仕事を頑張らなきゃダメだろうか?
う~ん。
考えれば考えるほど萎える。というか、そもそもこの問い方がしっくりこない。なんか思考が後ろ向きなんだよな。もっと熱量高くキープしつつ考えたくなるような問いかけを、自分の中で作り出したい。もっと「アクティブクエスチョン」に変えたい。
となると、正しい問いはこうじゃないか?
Q:筋肉の病気だけど、無理なく、しかし施術のクオリティを下げずに、自然な体の使い方を見つけて、楽しくこの仕事を続けられないか?
うん、これだな。「手で触れただけでガンを治すにはどうしたら?」みたいなトンデモな願望じゃなく、充分に現実味もあるし。しっかり頭の中で、クリアにイメージできる。
というわけで、この問いを今年に入ってからずっと抱き続け、でも解決策は思いつかず、しかし必ずどこかに答えはあるはずだと信じ続けて日々生活していたわけだ。なんの根拠もないのに。
でも正しく「問い」さえすれば、必ず答えは見つかる。
ちょっと話が飛躍してしまうが、なんか人類って飛行機とか宇宙船とかもそうやって発明したと思うんですよ。きっとライト兄弟は「人が空を飛ぶには?」という問いにリアリティを感じてたんだ。「いや、冗談とかじゃなくて、ガチで」って、周囲に真顔で訊いて回ったりしてさ。すごいよね。
で。
4月のある日、僕は突然気づいた。
ある動作を意識して行っていると、「プチ」がだいぶ減っていることに。それを足のつま先で地面をつかむ、というものだった。この行為が健康に良いということは割と有名な話で、転倒しがちなシニアの方にとって「タオルギャザー」という足でタオルをつかみ寄せる運動がいい、というのをおそらく聞いたことがある人もいるはず。だから、僕も以前何度か試したことがあったのだが、いまいち効果を感じ取れず、続けることはなかった。しかし、今回改めて試してみて、そしてどういう変化が起こるかをこれまでよりも強く意識してみたのだった。だって今までより切実だったしね。
うん、まだ完璧ではない。時々首の後ろに痛みは起こる。でも、だいぶ減っている。近づいてる。正解に近づいてるよ。
こうなると俄然、やる気が出てきた。もっと試行錯誤を続けねば。
そのタイミングでたまたま名古屋に出張に行かないか、という話が職場から来た。
平たく言うと他店舗の応援なのだが、なんかやる気に満ちてたので、後先考えず行こうと決めた。時には直感で動くことも大事。
そしたらその出張先のお店で、熟練セラピストの方からたまたまヒントをいただいた。その時点では、それはただ純粋に仕事上のアドバイスだった。その方は我らがリバース東京ではなく、この業界に入った時は別会社の研修を受けていた方で、「自分が習ったところではリバースよりももっと、つま先立ちを重視するんだよね」と教えてくれたので、僕もそれにならってバレリーナ並につま先立ちを意識してみた。すると施術はより精度が上がり、さらに「プチ」の頻度と程度も減った。
よし。さらに近づいたぞ。どんどん改善してる気がする。もはや「プチ」はほとんど出ないし、出ても痛みはなく、せいぜいコリっていう後頭部の違和感ぐらいだ。
しかし、この「バレリーナ立ち」も決して安定はしないのだった。僕はこの体勢を思うように維持できない。その時は単純に僕自身がバレリーナでもないし、またこのベテランの方のように慣れていないからだろう、と思っていた。まあ時間が解決してくれるだろう。そしたらもっと楽に立てるようになり、それは純粋に仕事に役立つだろう、ぐらいに思っていた。
しかし、その日は突然来た。
楽しく充実した一週間の名古屋ライフから帰京して3日後の、4月23日(土)。
足指つかみ、そしてバレリーナ立ちを続けていたら、いつの間にか自分の足の中節骨、つまり指の腹(反射区的に言えば目と耳)と、拇趾内転筋(同じく僧帽筋)の間の、腱の部分が、地面にピッタリと付けられるようになっていた。ということは、当たり前だが、僕はこの部分が浮いていたことになる。ずっと。44年間、ずっと。
小学生の野球大会でランニングホームラン性のヒットを打ったのに足が遅すぎて二塁打どまりになった日も、
大学時代にサークル仲間と夜通し山手線を歩いて一周した日も、
好きな人とディズニーシーを歩き倒した日も、
セラピストとして初めて体重移動ができた日も、
ようやくマスターセラピストになった日も、
つい昨日も、
ずっと、僕の足の指は浮いていた。
地に足がついていなかったんだ!(メンタルの意味でも?)
つまり、僕は足の指先が浮く「浮き指」ではなく、そのもうひとつ奥側が浮くという、いわゆる「ハンマートゥ」だったのである。いや、厳密に言うと、そこまではっきりと変形しているわけではない。やろうと思えば、足裏全体を地面にピッタリと付着させることはできた。だが、そうするとどうもこの中節骨がソワソワしてくすぐったくて、すぐ地面から離してしまう。そういう癖がずっとついていたのだ。だから、実質ほぼハンマートゥみたいな状態(あるいはクロウトゥ、マレットトゥなど細かい区別がある。詳しく知りたい方はググって下さい)だと言っていい。
となると、足指つかみも、ハンマートゥのまま、地面をつかんでいた、ということだ。足裏全体をつけずに、結局は不安定なまま、タオルをギャザーしていたわけである。バレリーナ立ちだって同じこと、これじゃつま先立ちなんてキープできるわけがない。だってつま先を安定させるための土台の部分(中節骨)を浮かせてるんだもの。
とにかく、2022年4月23日に、僕はようやく、ちゃんと、正しく「立てる」ようになったんです。人並に。世間の方々と同じように。生まれて初めて。
するとどうなったか。
これまで筋ジスのせいにして上手くできなかった日常動作まで、あっさりできるようになったのです!
たとえば、
・バスマジックリンなどのスプレーのレバーを、片手で引く。
これまではサブマシンガンをぶっ放す兵士のように、両手で持ってから、引くことしかできなかった。
・「こちら側のどこからでも簡単に切れます」というあの醤油パックのマジックカットが、本当に簡単に切れる。
これまでは何度トライしても切れず、せいぜい不格好にビニールが伸びるようなねじれが生じるだけ。わざわざ調理バサミで切っていた。
他にも、転ばなくなった、片手で鼻がかめるようになった、よく聞き取れないと言われる口の動きもスムーズになった、もちろん「プチ」も皆無になった、などたくさんの改善がなされ、さらには施術もこれまでより遥かに安定して圧迫できるようになった。仕事面も生活面も同時に、格段にQOLが向上したのだ。地面に足裏を密着させて立つことが、こんなにも大事だったなんて! 足裏の筋肉がこんなにも手や首の動きと連動しているだなんて!
これを読んでいる筋ジスの皆さん、そして実際にハンマートゥ系の疾患を持つ方々、とりあえず足指全体をピッタリ地面につける、「足指ピッタリ」生活をしてみて! まるで生まれ変わったような気持ちになれるから!
おそらく僕が「疑似ハンマートゥ」になったのは筋ジスのせいだろう。しかし、それが自分にとってあまりに当たり前すぎて、意識できなかった。そして、中節骨をつけるとくすぐったいから長続きしなかったこと、足指つかみが健康にいいと知りながらも中節骨自体を浮かせたまま実行してたからそりゃあ効果が薄かったこと、また足指つかみがいいと主張しながらも、疑似ハンマートゥという注意点までをも指摘してくれる書籍やネット情報がなかったことなどなど、色々不運が重なって、ここまで生きてきてしまった。
でも、ようやくたどり着いた。本当に正しい答えを自力で(でももちろん周りのたくさんの人の協力があって)たぐり寄せた。なんか、絡まった糸を一つ一つほどいて解決策をつかんだ、という感覚が強くて、すごい達成感。ちょっと今、嬉しくて仕方がない。
逆に今までこんな不安定な姿勢のままで立ってたのか、歩いてたのか、そして施術してたのか…ということは、お客様にこんな不安定な施術を受けてもらっていたのか、ということも同時に思ったり、一気にいろんな感情が渦巻いてもいるわけですが、まあメインの感情としては、大きな一歩を前に進められたことに感謝したいです。
もちろんこの結論も一過性のものに過ぎない可能性もあるし、筋ジスが悪化してるはしてるだろうし、とはいえ今後また別の喜ばしい発見だってあるかもしれない。そりゃいいことも悪いことも今後も起こるだろう。その意味でも、まだまだ僕の身体機能向上の旅は途上に過ぎないはず。
とまあ、長々と書いたけれど、それでも今回一番大事な点は、
《正しい質問をして、その解答をあきらめないこと》
に尽きると思う。
NLP色強めの人なら、「それはカラーバス効果(日常の中で特定のものを意識すると、それに関する情報を集めやすくなる)と言ってね」とか説明してくれると思うけれど、でもそういうカテゴライズはどうでもよくて、ただ自分がそう強く信じてたってこと。そして願いは約5ヶ月後に実現したって話。
きっと皆さんそれぞれにとっての「プチムチ打ち」と「足指ピッタリ立ち」があると思います。季節の変わり目に必ず起こる頭痛だとか、パートナーに八つ当たり不可避の生理痛だとか、春先に絶望に襲われる花粉症だとか。
ただ、その症状のそれぞれに対応した、正しい問いと、正しい答えは、必ず存在する。ソースは僕自身の今回の体験、それだけなんだけれど。
なんだか最後は安いJポップの歌詞みたいになっちゃったけど、うまく伝わってくれれば幸いです。みんなで健康になろうぜ。