とんでもない料理人に出会ってしまった話(下)
こんにちは、昨日は自身のバースデーライブで、後輩のアーティストが
「今日は飲みましょう!」と言ってくれたのだがちょうど良く体調不良だった為、
コーラを2杯ご馳走してもらったヘーゼルです。
間とタイミングの悪さには自信がある。
さて、上中と続いた「とんでもない料理人に出会った話」もいよいよ最終回である。
前回まででようやく鮨松榮さんの玄関まで至った。
これから入店だ、
玄関は至って普通の自動ドアだ、
しかしもう、ここまでくると自動ドアの自動具合すら他の自動ドアより流麗な様な気がしてくる。
「ズッ、ス、ウィーーーーーン」ではなくて
「・・・・・・スィイッン」の様な気がする。
ともかく初め良ければ鷲掴みの状態である。
そしてその流麗な自動ドアを通り抜けいよいよ店内だ。
むむっ!?
客席じゃないだとっ??、、、、、、、
そう来たか、、、、、、
ここまでくればもう「びっくり免疫」が出来ているヘーゼルである。驚かない(ふり)
落ち着きのあるアンティーク家具と大きなモニターが設えてある優雅な空間。
時にここは食後のティータイムとしても使用するとの事。
もうここがイギリスなのかイバラキなのか分からなくなるくらいの混乱だ。
そしてついに寿司屋の花形
メインカウンターに通してもらった。
どうだろう、
きっと相当な興奮をしていたんだと思う、
今カメラロールをくまなく探してもメインカウンターの碌な写真がない。
なので上記の写真にご自身の想像力を付け加えて読み進めてほしい。
広々とした低めのカウンターは料理人の自信の現れである。
一般的にカウンターは調理の手元がギリギリ見えない様にする事が多い
ところが鮨松榮さんは見事に真逆、カウンターの高さは実に“板の高さ”数cmで終わっているのだ。
極限の低さ、つまり
「全てご覧ください」と言う圧倒的な自信と誠実さを込めた無言のメッセージなのだ。
まるで魅せても語らぬジブリ映画の様相だ。
そして今一度この写真を見てほしい
赤い丸の中に周りより若干濃い色の逆台形が見えるだろうか、
これは日本古来の伝統工法、継ぎ手(組み木)である。
もちろんどんな大工さんも出来るわけじゃない、神社仏閣などを専門に建築、修繕する宮大工さんの手法である。
これに気づいた時もはや僕は臼井シェフのその狂気的なこだわりに悶絶してしまった。
しかしこの悶絶にはまだ続きがあった、
まず、手前の焼き場に注目して欲しい、
営業後なので何かを焼いた形跡がある、
この形跡自体が美しい、藁である。
季節柄戻りガツオが旬である、
きっとこの中央の焼き場では旬の戻りガツオを藁で炙っていたに違いない。
そして何より左上の木の金庫である。
僕も商売柄この様な造作はよく見た事がある、
これは冷蔵庫なのだ、
しかし僕も長年飲食業に携わっていたが
こんな化粧(造作)は見た事が無い、美しい木目の木板に重厚な金具が取り付けてある。
もちろん「近くで見せてもらってもいいですか?」と言った流れになる。
近づいた途端、鼻に触れたのは華やかな木の香り
まままままさかっ!?
「これ、もしかして檜ですか?」
「そうです」
再びの悶絶である、厨房内の中央の奥の冷蔵庫だ。
無論お客様なんて近づけないのである、
なのに檜の化粧をした冷蔵庫を置いちゃうのである。
そして中を開かせてもらってまた驚愕、
どこを探しても冷気を出す冷却口が無いのである。
「これ、冷却口無いんですか?」
すると臼井シェフは静かにこう答えた
「ええ、天然ですので」
・・・・改めて確認だが
僕は冷蔵庫の話をしていたはずである、
まるで別の空間に強制ワープさせられた気分だ。
しかしそんな混乱の中でも
必死に会話について行こうとあらゆる知識を総動員し、脳内で検索をかけまくる事1秒
たわいもない雑談のはずなのに、
鋭い緊張感に包まれた会話の真剣勝負の様相を呈している。
こんなに緊張感と高揚感のある会話を楽しめるのは記憶に久しい、
「オラワクワクすっぞ!」まるでドラゴンボールの孫悟空の気分だ。
「もしかして氷の古式冷蔵庫ですか?」
「そうです」
青天の霹靂だ、今は令和なのだ。
氷の冷蔵庫など古書でしか見た事が無い。
そして当然ながら僕は質問を重ねる
「なぜ氷の冷蔵庫を使ってるんですか?」
誠実な面持ちを保ったまま
臼井シェフはボソっとこう言った
「電気の冷気って、少しネガティブな冷え方をするじゃ無いですか」
この瞬間僕の脳内はマツケンサンバが鳴り響いた
嗚呼、ここに居たのだ
本物のアーティストが
恐れ入った、もう畏怖である。
僕は長い事火を入れる料理を得意として来た、
電気やガスの機材も年々クオリティが上がってるとはいえ、
やはり備長炭や薪や藁の天然の力には敵わないのだ。
しかし冷気にまでは気が行ってなかった、
心の底から脱帽である。
今回は営業終了後との事で食事とまでは行かなかったのだが
もう既に驚きで胸とお腹がいっぱいであった。
その後も、奥の個室の設え、こだわりや仕掛け
男女トイレそれぞれの大理石のこだわり、
手洗い皿に使用している笠間焼の大皿のこだわり等を聴かせてもらった。
聴かせて貰ったと言ったが厳密に言えば臼井シェフがさも自慢話の様に語っていたわけでは無い。
「どうぞご自由にご覧下さい」と見せてくれた中で、僕らが質問する事に逐一丁寧に説明してくださると言った形式であった。
表層的な美しさや面白さもしっかり抑えつつ
感覚を研ぎ澄まし注視しなければ気づけない様なメッセージもふんだんに散りばめている、
それはまるでマーティン・スコセッシや宮崎駿の映画作品を観ている感覚だった。
そして何より惚れ惚れするのは
決して自らは語らないその姿勢だ。
聴かれた時にしか話さないのである、素敵だ。
「とんでもない料理人に出会った話」
と言うタイトルにはやや誤りが含まれる
その実、僕らが出会ってしまったのは
とんでもない狂気の芸術家であった。
背筋が伸ばされた思いがした、
そして同時に解放の鐘が鳴り響いた。
まだまだ世界にはすごい才能が居る、
この世界は、そして日本は、とてつもなく広く楽しい。
最後までお読みいただきありがとうございました。完
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2024年11月29日(金)
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