歩くあるく:みちのく潮風トレイル日記・ 第1日(2021年6月17日、被災地巡礼開始。松川浦ー相馬中村神社7.48km)
出発
11時いよいよ相馬市の松川浦環境公園を出発。八戸市蕪島のゴールに向かって、北上ルートで、1043.43kmを一歩、一歩、歩み出した。東北地方は梅雨入り2日目、曇り。降水確率10%。結局降られなかった。ひたすら黙々と歩く。
松川浦のところに、小名浜税関支署相馬出張所があった。相馬港からも離れているのに、どうしてここに税関の出張所があるのだろう。主に何を扱っているだろう。
松川浦環境公園の所を除くと、松川浦は期待したいほどは見えない。
建設工事のための大型ダンプがさかんに往き来する。
巡礼のようだ
約4km、1時間ぐらい歩いていると、歩くことは「巡礼」のようだと思う。被災地を歩き、犠牲者の霊を弔う巡礼だ。一歩一歩踏みしめていると、大地との対話、歴史との対話のようにも感じられてくる。
「21世紀版おくのほそ道」:きっかけ
きっかけは6月10日に、閖上在住の知人から閖上のトレイル・センターに案内されて、板橋真美さんから、みちのく潮風トレイルの存在を教えていただいたことだ。それまでロングトレイルについて何の予備知識もなかった。
東日本大震災の津波被災地1000kmを歩くということにとてもロマンを感じた。車で点と点を訪れ、途中は通過するのではなくて、太初以来の自分の足で、ひたすら一本の道を辿るのだ。これぞ「21世紀版おくのほそ道」ではないか。芭蕉の「おくのほそ道」は、西行の足跡を慕う歌枕の旅だった。みちのくトレイルは、津波被災地を訪ね歩く旅だ。
道を間違える
公式 Map Book は2万5000分の1の地図。地図上の4cmが1kmだが、地図と現実の道の長さとの距離感がまだ掴めない。コースは頭に入れ、ときどき地図を見るが、それでも3箇所で道を間違え、1箇所は工事中で通れなかった。橋と城内は難しい。
1)百間橋付近は、小泉川を渡ったところで右折すべきだったが、右折箇所に気づかず、百間橋を渡り終えて、宇多川も渡り、南飯渕側の道路を歩いていた。しかも6号線と交差するまで、そのことに気が付かなかった。
2)6号線を常磐線方向に横断すべき場所も小さい道で、気が付かなかった。
3)中村神社の入口・大手門は工事中で立入禁止だった。相馬高校側から入らざるをえなかった。
4)中村神社から蓮池に出るルートもわかりにくい。ここは案内表示が欲しい。
予定を変更、相馬駅に戻る
当初は駒ヶ嶺駅接点までの14.34kmを歩く予定だったが、相馬駅に比較的近い桜ヶ丘小付近で15時18分。駒ヶ嶺駅まであと6km以上を歩くには、休憩時間を入れて3時間はかかるだろう。スマフォのバッテリー残量もなくなりかけていた。事前のルート確認が不足していたことも痛感。本日は、ここまでとする。
相馬駅から松川浦方面へのバスは2時間に1本しかない。使えるのは、10時10分発しかないから、松川浦11時出発にならざるをえなかった。松川浦9時出発だったら、駒ヶ嶺駅まで行けたのだが。
昼食場所をどう見つけるか
マイルールとして、1. 極力公式ルートを尊重する。2.当日のスタート地点と帰路までは、極力公共交通を利用する。3.昼食は、できるだけ地元の食堂を利用する。コンビ二やチェーン店はできるだけ避ける、ことにしたいが、相馬市中心部ですら、昼食場所の確保が結構難題だった。この先が思いやられる。
幸いこの日は、和菓子の船橋屋に隣接する和カフェゆったり庵で、天ぷら蕎麦を食べることができた。店員さんは、トレイルコースにあたっていることを知らなかった。これまでトレイルの客が立ち寄ったことがあまりなかったのだろうか。
相馬駅は市内観光に冷淡
JR東日本の相馬駅は、城をイメージした駅舎こそ立派だが、市内観光には極度に冷淡だ。駅構内の案内図に数分先の福島交通相馬営業所(松川浦方面へのバスに乗る)の位置が示されていない。市内観光用のパンフは駅構内に一切置いていないという徹底ぶりだ。駅構内にあるパンフは、常磐線沿線全体の案内と他地域のものばかり。相馬駅に降り立つ外からの旅行者を想定せず、相馬駅から出発する地元客のみを想定している。相馬市観光協会は何をしているのだろうか。
観光パンフ的なものは、千客万来館にはたくさん種類が置いてあった。
人口3万6000人の市ですら、ひどく縦割りのようだ。
仙台と相馬
常磐線で仙台駅と相馬駅間はちょうど1時間。亘理駅がちょうど中間点だった。予想以上に近い。原町までは仙台大都市圏のようだ。
16時過ぎの電車を待っていると、南側の原町方向に戻るらしい女子高校生が「このまま4時13分に乗って仙台に行きたいな。お金ないけど」と友だちと話していた。彼女たちにとっては、仙台がつかの間の「解放区」なのだろう。仙台が憧れの街なのだ。
【本日歩いた距離】
ルート上では松川浦ー相馬中村神社7.48km
自宅ー福祉大駅、桜ヶ丘小ー相馬駅を含めた徒歩の総距離は17.57km、4時間38分、21,933歩。
66歳だが、まだまだ気力・体力とも元気だ。来年中には八戸の終点までゴールインできるだろうか。
【本日の教訓】
どこで間違いやすいのか、事前に周到なコース確認が必要。
スマフォ用のモバイルバッテリー、GPSデータは必携。
今回はトレッキング・ポールを使ったが、平地はノルディック・ウォーキングポールを使うべきだ。
【足へのダメージ】
5kmぐらい歩くと、右股関節に疲れが来る。幸い、マメや靴擦れなどは起きなかった。翌日膝裏の筋が痛くなった。翌々日には回復。