5歳児健診とインクルーシブ教育 -発達障害の早期発見と支援の重要性-
5歳児健診は、小学校入学前の大切な節目に、発達障害の早期発見と適切な支援につなげるための重要な取り組みと言えそうです。国の助成制度が2024年から始まり、これまで以上に各自治体での実施が期待されています。この記事では、5歳児健診の現状と課題、そしてその意義について考えてみたいと思います。
この記事は2024年11月4日付日経新聞電子版に掲載された「5歳児健診、成長つながる支援に 発達障害を早期発見(佐野敦子)」をもとに作成しています。
5歳児健診の目的と背景
5歳児健診の大きな目的は、発達の課題を早期に見つけ出し、適切な支援へとつなげることです。この時期は言語理解や社会性が発達する重要な時期とされており、特に学習障害(LD)のような軽度の発達障害を把握するには最適なタイミングといわれています。
健診の主な内容には、身体発育や言語能力、社会性の発達状況の確認が含まれます。例えば、東京都大田区では、SDQ(強みと困りごとの質問票)を用いた事前アンケートを活用し、保護者や保育士の意見を取り入れた上で、医師による問診を実施しています。
早期発見がもたらす可能性
発達障害の早期発見には多くのメリットがあります。子どもが入学する前に適切な支援を開始することで、学びの場での困難を軽減し、自信を持って学校生活をスタートできるようになります。また、保護者が子どもの特性を理解し、適切な育児方法を学ぶ機会にもつながります。
一方で、専門医療機関の不足や、診断待ちの期間が長引く問題も指摘されています。特に都市部では、診察の予約が半年から1年先になることも珍しくありません。このような状況に対して、国は医師の研修支援や自治体での体制整備を進めています。
5歳児健診とインクルーシブ教育の接点
5歳児健診の結果は、その後の就学の選択にも影響を及ぼします。通常学級、特別支援学級、特別支援学校など、どの環境が子どもにとって最適かを見極める重要な情報源となります。
一方で、子どもの特性を理由に分離教育が進むことへの懸念も根強くあります。特別支援学級に通うことで、通常学級の子どもたちとの交流が減るとの声もあります。
当社が運営する放課後等デイサービスも分離教育、分離支援の環境であると言えます。「インクルーシブ教育」の理念をどう実現していくかが問われています。
健診が目指す「包摂」の未来
健診の結果をきっかけに、家庭、医療、福祉、教育が連携し、子どもたちがその特性に応じた支援を受けられる環境を整えることが重要です。同時に、全ての子どもたちが一緒に学び、成長できる環境づくりも進めるべきです。
学校では、デジタル機器の活用が進み、発達障害のある子どもたちが授業に参加しやすくなるなど、新しい可能性も見えています。5歳児健診を通じて、子どもたちの多様なニーズに応じた支援を行いながら、真に「包摂的な社会」を目指す取り組みが広がっていくことを期待します。
インクルーシブ教育が進み、全ての子どもたちが一緒に学ぶ環境は素晴らしいものであると推測できます。しかし一方で、学校生活や学習に困難を抱えたり難しさを感じる子どもたちもいます。まさに、家庭、医療、福祉、教育が連携して取り組みべき問題と言えます。
おわりに
5歳児健診は、子どもの未来を見据えた非常に大切な取り組みです。しかし、それを成功させるには、専門家の育成や支援体制の拡充など、多くの課題を解決していく必要があります。私たち一人ひとりが、健診を子どもたちの可能性を引き出すチャンスと捉え、共に支え合う社会を目指していきたいと思います。