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「MBOの統合的アプローチ:4つの象限」 -会社のパーパスと個人のパーパスをどのように結びつけるか②-/「目標管理入門」より

マネジメントは経営者が扱うものだと思われがちですが、私はあらゆる人があらゆる状況で活用できると思っています。ドラッカーによれば、マネジメントは「組織を使って顧客に価値をもたらすこと」です。当然、経営者は組織を使って顧客に価値をもたらしますが、それはマネジャーもそうでしょうし、働く一人ひとりにも言えます。

私は、書籍「THE HEART OF BUSINESS(ユベール・ジョリー著)を通して学んだ「会社のパーパスと個人のパーパスを結びつける」という視点に強く感銘を受けました。

そして、それを実践するための方法として書籍「目標管理入門(坪谷邦生著)が示すMBOの考え方が適用できるのではないかと考えました。

冒頭にも触れましたように、マネジメントは現場で働く一人ひとりが活用できる道具だと思います。それは、「会社のパーパスと個人のパーパスを結びつける」というプロセスのなかでとても重要なパートを占めています。今回は「組織と個人」の関係も含めて、MBOの統合的アプローチについて見ていきたいと思います。

MBOに関しては前回、言葉の定義をご紹介しましたのでご参考ください。

MBOの統合的アプローチ

著者は、MBOの統合的アプローチを次のような図で表しています。言葉で説明すると、「個」と「組織」それぞれについて「主観」と「客観」について表現し、それらを「目標設定」で方向づけしています。さらに、この4つの象限のサイクルを繰り返して向上させていくというものです。今回はこの4つの象限について見ていきたいと思います。

図解 目標管理入門(坪谷邦生著)p.27より

「個の主観」 -夢-(左上)

従業員一人ひとりの目的ややりたいこと、夢は、個人の主観です。著者は「MBOは、4象限の真ん中にある「共有の目標」によって方向づけされた個人からの自発的な思いや行動が大切だ」と説明します。ここがなされていないと、やらされ感でモチベーションが下がったり、燃え尽き症候群に陥るといいます。

では、誰もが夢を持たないといけないのでしょうか?私は無理に持つ必要はないと思っています。目指す目的や夢がなくても、目の前の仕事に集中することはとても素晴らしいことだと思います。

それでも、もしかしたら夢や目的、やりたいことに気づいていなかったり、整理できていないだけかもしれません。著者は、夢の解像度をあげるための考え方や見つけ方を示唆しています。

「個の客観」 -強み-(右上)

著者は、「客観とは測ることができるもの、誰が見ても同じもの、つまり外から見てわかるもの」であると説明し、最も重要な個の客観は「強み」であるといいます。人は弱みではなく、強みで業績に貢献します。自分の強みを自覚し、仲間に貢献し、活用してもらう必要があります。

著者は、自分が「強み」だと思っていることは思い込みに過ぎないことが多いと指摘します。強みを明確にするツールを使用するのも有効だと思いますし、他者からの意見なども参考にできそうです。

「組織の客観」 -業績-(右下)

業績は組織の客観です。まさに売上高や利益など計ることのできるものを指します。P.F.ドラッカーは著書「現代の経営」のなかで、「企業の活動には、従業員の幸福、コミュニティの福祉、文化への貢献などの非経済的な成果がある。しかし経済的な効果をあげられなければ、マネジメント失敗である」と説明しています。つまり、利益(業績)をあげることは、目的を達成するための前提条件であるということです。

私たちは障害児者の支援という福祉事業を営んでいますが、前提条件として適切な利益が生じていないければ、「支援の質向上」や「従業員の処遇改善(給与など)」に資金や時間を投入することができません。

福祉事業はそもそも福祉優先だろうと考える従事者は多いと思います。しかし、少なくとも民間企業が行う福祉サービスは、適切な利益を確保し、そこから「支援の質向上」や「従業員の処遇改善(給与など)」のための資金を捻出しなければなりません。福祉事業者にも当然、倒産はあり得ます。「支援の質が向上すれば利用人数が増えて利益が増える」という考えもありますが、経営者としては、事業を継続するため、従業員に給与を支給し続けるためにまずは適切な利益を確保することを日夜考えています。

「組織の主観」 -使命-(左下)

会社の夢やパーパス、創業者の思いなどは組織の主観であり、著者は「使命」と表現しています。利益の追求が営利会社の目的という意見もあるでしょうが、利益や売上を上げることは組織の使命を果たすために必要な前提条件でであり目的ではありません。

私は、「使命」というと「社会から必要とされているから応える」という、何か受け身のような感じを受けるので、最近よく使用されている「パーパス」と呼ぶようにしています。パーパスは組織が自発的に発信する夢ややりたいことという印象があるためです。

会社のパーパスのもと、それを具体化したビジョンを描き、どのような行動や心構えを持つかというバリュー(行動指針や行動規範)を据えて日々仕事を行うという理念の構成で従業員のベクトルを合わせます。

最後に

今回は著者によるMBOの統合的アプローチの4つの象限である、

  • 個の主観(夢)

  • 個の客観(強み)

  • 組織の客観(業績)

  • 組織の主観(使命)

について見てきました。この4つの象限は共通の目標設定によって方向づけられ、サイクルとして繰り返されていきます。著者はこれをスパイラルアップと表現しています。

次回は、この4つの象限のサイクルと、4つの象限をつなぐものについて触れたいと思います。


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