五月大歌舞伎、「團菊祭」ではないが、菊之助の『春興鏡獅子』も華やかに、見どころのおおい公演となった。
歌舞伎座から五月大歌舞伎の案内が届く。長年、「團菊祭」が行われていた月だけれど、今年は菊五郎劇団と吉右衛門中心の一座が、合同公演を行っている。そんな印象の役者が揃っている。
一方、海老蔵はどこに行ってしまったのか、気になる。調べてみると、明治座に立て籠もって無人の一座で、二日だけの興行が予定されている。実盛物語とKABUKUと題した新作歌舞伎舞踊を見せるのだという。
長く続いた團菊祭がこんなかたちで中断されてしまうのを惜しむ。このごろ公演に「海老蔵歌舞伎」のタイトルを用いている。独立独歩、荒野ひとり行く気構えなのだろう。
さて、歌舞伎座は、五月も三部制となる。
朝幕は、尾上右近のお嬢、隼人のお坊、巳之助の和尚、莟玉のおとせという顔ぶれの『三人吉三』が出る。次代を占う顔ぶれだが、同世代で別の配役での上演も可能だろう。だとすると、この世代が、『三人吉三』のどの役を当り役とするのか。苛酷な競争が始まっているのがわかる。
第一部は、松緑の『土蜘』。音羽屋ならではの舞踊の大作だが、今回は、源頼光に猿之助がつきあうのが話題となる。
猿之助には、身内の一座で固定した興行を行うだけではなく、他流試合に乗り込んでいく勇敢さがある。
パリのオペラ座で行われた團十郎、海老蔵が、弁慶と富樫を交互に務めた公演で、義経をクレバーに演じていた舞台が忘れられない。
第二部は、久々の『仮名手本忠臣蔵』。かつては歌舞伎の独参湯といわれ、興行の切り札となったが、今は、それほどの威力はないときく。「道行」を錦之助、梅枝、萬太郎と伯父甥の三人が踊る。
六段目は菊五郎久々の勘平で、時蔵のおかる。又五郎の千崎弥五郎に、東蔵のおかやと、芝居巧者が加わって、重厚感のある舞台になるだろう。なんといっても、菊五郎の勘平は、色気にあふれる。またとない機会なので、見逃せない。
年々、演劇を観るのが楽しくなってきました。20代から30代のときの感触が戻ってきたようが気がします。これからは、小劇場からミュージカル、歌舞伎まで、ジャンルにこだわらず、よい舞台を紹介していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。