Yahoo!の中の人にも直撃取材。Yahoo!プレイス解体新書:これからのGoogleマイビジネスの話をしよう#11
毎週火曜日、Googleマイビジネスの話題をお届けする『これからのGoogleマイビジネスの話をしよう』というマガジンの第11回。
今回はGoogleマイビジネスではなく、Yahoo!プレイスの解説とヤフーさんへの取材です。Googleマイビジネスとの違いを知ることで、新しい集客の可能性や注意点を探ります。
「Yahoo!プレイス」は、Yahoo!検索やYahoo! MAPに載るお店情報を登録・管理できる無料サービス。しかし、Googleマイビジネスに比べて、まだ浸透が進んでいるわけではないようです。
今回、公式サイト・note・ガイドラインを読み解き、機能やGoogleマイビジネスとの違いを整理。さらに、Yahoo!プレイスを担当する中の人、ヤフー株式会社の鈴木さんと日高さんに、サービスができた理由や活用のポイント、今後の可能性などを直接伺いました。
Yahoo!プレイスとは?
Yahoo!プレイスは、Yahoo!検索・Yahoo! MAP・Yahoo!ロコ・Yahoo! BEAUTYなど、Yahoo! JAPANの各種サービスに連携する入稿ツールです。
営業時間やキャッチコピー、衛生対策状況などの詳しい情報や、お店の雰囲気や商品の写真が入稿できます。また、トピックスでイベントやキャンペーンなどの新着情報を投稿できます。
「Yahoo!検索」で、Googleと同様「飲食などのジャンルキーワード+地域と絡む検索」で、通常検索結果より上位に「Yahoo! MAPやYahoo!ロコの店舗情報」が表示されるようになりました。(例:「渋谷 カフェ」)
Yahoo!プレイスの強みは、無料でYahoo! JAPANのユーザー(年間8,000万人)にお店の公式情報を発信できることです。操作画面はシンプルで、特に説明がなくても一通り機能が使えるようなUIとなっています。
Yahoo!プレイスの3つの機能:情報管理・分析・クチコミ返信
Yahoo!プレイスには、主に3つの機能「情報管理」「分析」「クチコミ返信」があります。
機能1:Yahoo! JAPANのサービスに掲載されるお店や施設の情報を作成・管理できる
登録できる情報自体は、Googleマイビジネスと大きな違いはありません。
基本情報では、店舗名、カテゴリ、住所、電話番号、営業時間などの基本情報を登録できます。飲食店や美容室のような業種の場合は、連携しているサービスで利用できる別の機能(予約機能)などもあります。
(https://note.com/yahoo_place/n/ndb86005742ce)
Googleマイビジネスの「投稿機能」と近い「トピックス機能」もあります。お店からYahoo! JAPANを利用するユーザーに、お店の最新状況を届ける機能。イベント・クーポン情報・最新情報(メニューなど)・オーナーさんのこだわりポイントなどを発信するのに向いていそうです。
(https://note.com/yahoo_place/n/n3ae8fa3a73f9)
※なおYahoo!ロコはRettyなどのコンテンツパートナーからの店舗情報の提供を受けているため、Yahoo!プレイスに登録していなくても、Yahoo!ロコに店舗情報が掲載されることもあるそうです。
機能2:施設ページのアクセス分析ができる
管理画面やUIは、Googleマイビジネスに似ているので、管理したことがある方なら違和感なく使えるようになっています。用語は若干違いますが、新しく使い方を覚えずに済むのは、オーナーのメリットとなりそうです。
アクセス分析機能ですが、Yahoo!ロコでのユーザーのアクション数・店舗ページの表示回数が確認できるようになっています。
https://note.com/yahoo_place/n/ne5ac3c4c9d42
機能3:Yahoo!ロコに投稿されたクチコミに返信ができる
Yahoo!プレイスに投稿されたクチコミに返信することができます。ただし、この管理画面から返信できるのは、Yahoo!ロコに投稿されたクチコミだけです。
Yahoo!プレイスの登録方法
公式サイトから申込できます。
申し込みすると「仮登録」になり、その後ヤフーからの電話確認があります。申し込みは申し込みフォームのみ・人による確認フローがあります。(※Googleマイビジネスは、郵送・電話・メールの登録方法が選べ、申し込みから登録までがシステムで完結)
Yahoo!プレイスの禁止事項
公開されている運用ガイドラインから、実際の活用に関わりそうな禁止事項をピックアップしました。
https://s.yimg.jp/images/place/manage/docs/place-guideline.pdf
Yahoo!プレイスとGoogleマイビジネスとの6つの違い
こうした強みや特徴を比べてみた上で、主な違いは6つあると考えています。
1:Yahoo! JAPANのサービスとの連携
2:きめ細やかな機能
3:情報の作られ方・確実性
4:登録方法の違い
5:現在、Yahoo!プレイスにはサードパーティーによる管理ツールははない
6:現在、Yahoo!プレイスには広告サービスはない
①Yahoo! JAPANの他のサービスとの連携
Yahoo!ロコ、Yahoo!検索、Yahoo! MAP、Yahoo! BEAUTYなどの各種サービスに必要に応じて連携されています。今後も順次サービス拡大予定とのこと。
②きめ細やかな機能
いまはコロナ対策の機能が充実し、検索結果に、デリバリー・テイクアウトや衛生対策などがラベルで表示され、強調されています。Googleのように、ユーザーの編集やクチコミの内容をもとに属性やラベルは追加されることはないようです。
(デリバリー・テイクアウトの表示)
ロコの検索窓で、『テイクアウト』もしくは、『デリバリー』を選択し『地域』を選択すると、『テイクアウト』もしくは、『デリバリー』可能なお店が表示されます。
(コロナ対策:9項目の衛生対策情報の設定が可能)
・施設内や入り口に消毒液を設置
・施設内の清掃、消毒を徹底
・施設内の換気を実施
・施設内に空気清浄機を設置
・従業員の手洗い、うがいを徹底
・従業員のマスク着用を義務化
・従業員の検温、体調報告を義務化
・客席の間隔を空けてお客様を案内
・来客上限数の設定、入店制限を実施
https://note.com/yahoo_place/n/n7321f2fd505a
③情報の作られ方・確実性
店舗情報は「連携している外部サービスから取得した情報」+「Yahoo! JAPANが保有する情報」+「Yahoo!プレイスでオーナーが入力した情報」で作られます。
Googleのように勝手に店舗ページが作られたり、プラットフォームによる営業時間変更・閉業リスクは高くありません。
外部ユーザーによる「修正提案」も、フォームによる報告制。フリーテキストによる入力で、フォーム自体もあまり目立たない仕様です。正確性が担保され、オーナー側は安心できる反面、ユーザーが入力することでの情報の鮮度は劣る面があると思われます。
④申込・登録方法の違い
実店舗ならほぼ全業種が登録可能なGoogleマイビジネスと違い、Yahoo!プレイスはYahoo! JAPANが不適当と判断する業態(性風俗店などが対象)は利用できません。
Yahoo!プレイスに登録(管理)してある店舗は、店舗ページ下部の【情報提供元】に「Yahoo!プレイス」と表示されます(Googleの場合は未登録店舗には「オーナーですか?」などのメッセージが表示されます)。
複数店舗の一括登録も50店舗から。フォームの入力項目が多いので、中規模チェーンには辛いかもしれません。
https://s.yimg.jp/images/place/manage/docs/place-guideline.pdf
⑤現在、Yahoo!プレイスにはサードパーティーによる管理ツールはない
現状では、Yahoo!プレイスは、公式の管理画面からの編集・設定・確認しかできません。GoogleマイビジネスはAPIを利用して、サードパーティーによる管理ツールから施設情報を編集したり、アクセス解析・順位計測・クチコミ計測ができるサービスがあります。
⑥現在、Yahoo!プレイスには広告サービスはない
現在、Yahoo!プレイスには、Yahoo!広告と連携したサービスはないため、店舗ページの露出を増やすには、広告以外の施策が必要となります。
Google マイビジネスはGoogle 広告とアカウントを連携することにより、広告配信に活かすことができます。広告経由で実来店があったか知れる来店コンバージョン機能もあります。
Yahoo!プレイスの魅力を担当者さんに直接聞きました
Yahoo!プレイスを担当するヤフー株式会社の鈴木さんと日高さんに、Yahoo!プレイスができた経緯や活用のポイント、今後の可能性などを直接伺ってきました。
取材協力:ヤフー株式会社 O2O統括本部ロコ本部マーケティング部業務推進 鈴木 雅也さん・ヤフー株式会社 O2O統括本部ロコ本部マーケティング部業務推進 日高 華子さん
ーYahoo!プレイスは2019年12月18日に開始され、話題になりました。Googleマイビジネスがあるなか、似たサービスができた経緯を教えてください。
ヤフー鈴木さん:Yahoo! JAPANは検索サービスを提供しているので「ユーザーの求めている回答を集めて、回答力を高めたい」という目的が変わらずあります。
これまでもコンテンツパートナー(Retty・Ozmallなど)の情報をもとに地域の店舗情報を作ってきましたが、店舗オーナーの方から「さらに情報更新の頻度を高めて管理したい、修正したい」という問い合わせを頂きました。それなら「直接管理、発信していただくツールがあった方が良いのでは」となりました。
Googleマイビジネスとの違いは「届ける層」と「連携サービス」
ーGoogleマイビジネスと似た機能が多いですが、どんな差別化を考えていますか?
ヤフー鈴木さん:差別化よりも「Yahoo! JAPANのサービスを使っている方への回答力を上げていく」のを一番に置いています。
現在はYahoo!検索やYahoo! MAPとの連携を始め、今後もYahoo! JAPANの各サービスとの連携を増やしていきます。全体性のあるものから取り組み、Yahoo! JAPANの強みとしているカテゴリや業種に特化したサービスとの連携を進めていきます。
ヤフー鈴木さん:店舗オーナーがYahoo!ロコに入稿いただいたデータの外部提供もできるなら進めていきたいです。例えば、Yahoo!プレイスに入稿すれば、他社のプラットフォームに掲載されるような。
ーGoogleのローカル検索の情報は「Google+ユーザー+Googleマイビジネスユーザー」によって作られています。そのため「オーナーが知らずに営業情報が変更された」というケースが怒っています。Yahoo!ロコでも同じことは起きますか?
ヤフー鈴木さん:Yahoo!ロコの情報は、Yahoo! JAPANが保有する情報+コンテンツパートナーの情報+Yahoo!プレイスで作られています。報告フォームを利用してユーザー・施設から修正提案は可能ですが、担当部署で確認した上で対応していますので、勝手に閉業にされたりはないですね。
ー外部コンテンツとYahoo!プレイスの関係を教えてください。例えば、2つのデータが違っていた場合はどうなります?外部コンテンツのクチコミの返信は可能ですか?
ヤフー鈴木さん:重複している場合はYahoo!プレイスの入力情報を優先しています。また、Yahoo!プレイスからクチコミの返信ができるのは、Yahoo!ロコに投稿されたクチコミのみです。
ーユーザーの口コミ投稿への特典は禁止ですか?また、投稿ユーザーへのヤフーからの特典はありますか?
ヤフー鈴木さん:禁止している事項は、ガイドラインに記載の内容になります。現在、キャンペーンなどは除いて、投稿ユーザーへの特典はありません。
https://s.yimg.jp/images/place/manage/docs/place-guideline.pdf
ーYahoo!ロコへの口コミ投稿依頼のURLは作成できますか?
ヤフー鈴木さん:現時点ではございません。今後の実装を検討中です。
ーいわゆるGoogleではローカルパックと言われている掲載面ですが、Yahoo! JAPANの場合、出たり出なかったりします。飲食は出やすいですが、そのほかの業種はあまり目にすることがありません。
どのような仕組みで掲載されていますか?業種が今後拡大していくことはあるのでしょうか?
ヤフー鈴木さん:申し訳ありません。掲載に関するアルゴリズムは非開示になっています。
店とユーザーとのエンゲージメントをストレスなく、より深く
ー今後、どんなアップデートや改善が予定されていますか?
ヤフー鈴木さん:ユーザーとオーナーのエンゲージメントを高める機能を強化する予定です。例えば「ユーザーからのクチコミや写真が投稿されたら通知される機能」や「マイページでお気に入りにした店舗の最新トピックスがユーザーに通知されるような機能」です。
あわせて、ウィズコロナで求められる新しい情報(混雑情報)や、オーナーがスマホから管理しやすい機能のUI・UXの強化にも引き続き取り組んでいきます。
ー他にも類似サービスとしてPayPayマイストアがあります。こうしたサービスとの連携や統合は考えられますか?
ヤフー鈴木さん:PayPayマイストアとの連携は、現在予定されていません。
ー今後、サードパーティーによる管理ツールやAPIの提供などは考えられますか?
ヤフー鈴木さん:はい、検討中です。
Yahoo!プレイスの活用事例や活用のポイント
ーYahoo!プレイスは、どんなジャンルのお店の利用が多いですか?
ヤフー鈴木さん:ジャンルとして多いのは、この3つです。
1:飲食系
2:教育・塾・英語学校
3:スポーツジム
それ以外には「美容室・整体・接骨・マッサージ」なども多いです。デジタルマーケティングでの集客に慣れた業種の施設やお店に使っていただいているのかも知れません。
ーどんな店舗が活用できているイメージでしょうか?
ヤフー鈴木さん:飲食店はテイクアウト・デリバリーを発信して集客につながっている事例を聞きます。衛生対策状態も検索結果でも反映されるようになっているので、ぜひご活用いただきたいです。
ー「こういうお店に使って欲しい」「こう使って欲しい」など、お店の方にはどのようなアドバイスをしていますか?
ヤフー鈴木さん:大前提として「ユーザーの求めている施設・情報が正しく表示されている状態」が望ましいです。定期的に情報が更新されている、クチコミに返信されている、クチコミや写真が多いなど。
ヤフー鈴木さん:Yahoo! JAPANは「ユーザーファーストの観点」、ユーザーが正しく知って判断する情報が多いなどを重要視しています。
Yahoo!プレイスの活用方法としては、まずは「正しい情報をきちんと入れる」ことをおすすめしています。綺麗な写真も重要ですね。クチコミ返信やトピックスは工数がかかるものなので、その後で取り組んでいただければと思います。
ヤフー鈴木さん:Yahoo!プレイスは無料のサービスなので、小さなお店でもご活用いただけます。コロナでどこのお店も苦しい状況なので、地方のお店でも使ってもらえると大変嬉しいです。
ヤフー日高さん:お店はコロナ禍において、いろいろ大変だと思います。無料であることを生かして、ぜひ積極的にご活用いただきたいです。
ー鈴木さん、日高さん、ありがとうございました!
Yahoo!プレイスの活用方法のまとめ
1.今後、各サービスとの連携が増える可能性がある
2.Yahoo!ロコの施設情報は「Yahoo! JAPANが保有する情報+コンテンツパートナーが提供する情報+Yahoo!プレイスで入稿される情報」で作られる
3.ユーザーやプラットフォームによる勝手な変更はGoogleより起こりにくい
4.上位表示のことは考えず、まずはユーザーファーストの観点で、正しい情報をきちんと埋める
5.コロナでの取り組みは、反映できる機能が多く、今後も増えていくので積極的に載せよう
Googleマイビジネスに比べると、ヤフー側が情報をしっかり管理していて、よりポータルサイトに近いサービスのようです。コロナ対策やデリバリーなどの機能が魅力的なので、特にYahoo! JAPANユーザーが多い業種や、飲食・ビューティー業種は有効だと思います。
ただし、Googleのように上位表示のガイドラインが開示されておらず、ヤフー側によるチェック体制も設けられているため、一部のMEO対策のような無闇な上位表示対策は一層おすすめできません。
Googleマイビジネスに比べて、いたずらや乗っ取りのリスクも少なくユーザー層も異なっているので、まずは登録してみて、変わったことや新しいお知らせがあれば都度更新していく運用をおすすめします。
↓これまでの連載記事はこちらから
今週の気になるツイート
自店を見たユーザーにライバル店の情報が出るようになると、確かにかなりエグい…。広告掲載面から目が離せません。
まだテストかもですが「更新者と更新日」が表示されるように!
インサイト機能が使いやすくなることを期待!
何となくですが「要望」としての使われ方なのではないかと思います。とはいえ登録してみるのも手ですね。
予約リンクの仕様。ちょっと分かりにくいですよね。トラブルも少なくないようなので、オンオフがオーナー側で出来ればとは思うのですが。
ローカルビジネスリスティングの構造化マークアップの必要。構造化データの作成と設置は、実はそこまで難しくないので一考の価値ありです(更新を忘れそうになるのが要注意ですが)。
重複対応時はご注意を。
面白い仕様。Googleマイビジネスがあれば、ブログやHPが必要ないというわけでないはず。
笑いました。どんな人がレビューを書いているのかを想像するの大事です。
今週の気になる関連記事
米国の一部のユーザーを対象にしたベータテストですが、電話がかかってきた日時・発信者の電話番号・出られなかった電話が管理画面から分かるようになるとのこと。インサイト機能の進化は大歓迎とともに、個人情報の取り扱いが若干心配。
「Googleマイビジネスがあれば、ホームページは要らない」旨の主張を見かけることが増えてきましたが、基本そんなことないと思います。飲食店でもHP代わりのポータルサイト登録などは必要。広告との違い、プラットフォームの向き不向きを理解して、ユーザーの求める情報を丁寧に発信していくのが近道。
投稿機能の業種ごとの事例や必要な素材と規定がまとめられていて、便利。
Shufoo!にチラシを掲載すると、Googleマイビジネスの投稿情報に反映されるサービスが開始。すでに効果が出ている店舗もあるそうです。こうした自動化はとても良いと思います!
あとがき
前回お休みをいただきましたが、だいぶ間が空いた気がするのが不思議です。
「これからのGoogleマイビジネスの話をしよう」第11回を読んでいただき、ありがとうございました。次回も火曜日に、気になるGoogleマイビジネスの最新情報をお届けする予定です。
取材協力:ヤフー株式会社 O2O統括本部ロコ本部マーケティング部業務推進 鈴木 雅也さん・ヤフー株式会社 O2O統括本部ロコ本部マーケティング部業務推進 日高 華子さん