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【ミニ社長塾 第41講】経営幹部の育成における「お金」視点の話。

おつかれさまです。
中小企業診断士で、社長の後継者に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。

先日、社長塾のOBOG会を開催いたしました。第一部と第二部併せて30名近くの方に参加いただいた会で、これくらいの人数が集まったのは約4年ぶりでした。ご参加いただいた修了生の皆さま、ご多忙のところありがとうございました!

今回のOBOG会ではアンケートで「今後のOBOG会で学んでいきたいこと」という質問を入れさせていただいており、多かった回答が「経営幹部の育成」でした。

具体的には、「自責の姿勢をどう持たせるか」や「どの点から育成するのが会社にとって良いのか」といったことなど。色々な視点があると思いますが、今回は「お金」、財務的な視点での話になります。

今回は『経営幹部の育成における「お金」視点の話』ということで、ミニ社長塾どうぞよろしくお願いいたします。


1.財務って、そもそも何?

アタックスグループは会計事務所が母体です。社長塾でも数字に関する講義は多いのですが、そのなかで「財務とは何か?」と聞かれますと「お金の流れをマネジメントすること」と答えています。

お金の流れとは、
・お金を調達し、
・そのお金を運用(投資)し、
・運用成果として得た(回収した)利益を内部留保、あるいは次の運用に使う

です。

運用には「事業投資」はもちろん「財テク投資」のほか、社員への「教育投資」などがあります。お金の使い道とその結果の見通しを示しているのが「経営計画」です。

したがって、「財務を学ぶ」ということは「経営を学ぶ」ことと同じになります。

また、「数字に強くなくてはいけない」ということは、お金の流れを記録する「経理業務」に強くなるわけではありません。「どこからお金を調達してきて」「そのお金をどこで運用して」「どのくらいのリターンが見込めるか」という各ポイントで意思決定できるようになるために、数字に対する意識を強く持つということです。

決算書の数字を読めればOKではなく、数字から得た情報を経営の意思決定に活かしていかなければならない、と社長塾での「財務分析」の講義ではいつもお伝えしています。
(今週末の第21期の講義が、まさに「財務分析」です)

2.経営感覚を持ってほしい、ということ

経営幹部は経営者の右腕左腕です。そのため、経営者と同じ「経営視点で全社の活動を見る」ことが求められます。これまでは現場からの視点で判断していたものが、現場を俯瞰して全社視点から判断することになります。その時に大事なことは「経営感覚」でして、分かりやすい例が「人の採用」です。

例えば、人出不足で手が回っていないと現場としては「新たな人の採用」を求めるわけですが、経営の視点で見ると「ちょっと待ちましょう」となります。手が回っていないことは分かりますが、人を採用することで解決する問題でしょうか…。

労働分配率を見てみると60%を超えています。目標値が52%であれば、人件費の割に目標としている粗利が出ていないということになります。つまり、生産性がよくない。

そうであれば、人を採用するよりも前に、現状やっている業務の中で「やらなくてもよい業務は何か?」「まとめることで業務を圧縮できるものは何か?」など業務改善を図るべきではないでしょうか。

現場視点ではなく経営者視点で見ると、顕在化している問題の裏にある本質的な問題を精査し、解決に導いていく思考が必要です。そのためには意思決定に必要な情報をどのくらい多く持っているか(その情報を読み取れる力)がとても大切です。

特に、労働分配率のような経営数字についての見方もそうですが、先述したように「調達、投資、回収」のお金の流れもしかり。だから、「経営感覚」を身につけるには「財務」の知識は必須科目になります。

また、「感覚」という点でもう一つポイントだと思うのは「金銭感覚」です。ある社長が経営者と経営幹部の違いについて「紙一枚で辞めることができるか、辞められないかの違い」と言っておられました。

会社のお金に対して、経営者は自分の財布から出しています。そのため、経営者は常に「最低限の投資で最大のリターンを得ることを考えて」います。また、「金がないなら、何とか工夫して投資対効果を高める」という強い意識や姿勢を持っておられます。金銭感覚は、経営者と経営幹部の方とでは違ってくるところです。経営者の金銭感覚について、少し話をさせていただきます。

私の同僚のあるコンサルタントに、今の仕事に就いたのかの理由を聞いたことがあります。すると、前の職場で経営支援として関わっていたある会社の社長が資金繰りに行き詰まり、自ら命を絶ったという経験をしたそうです。その経験から、二度と経営者にそのような苦しみをさせたくない、という強い想いを持ち、彼は現在企業再生などの業務に携わっています。

経営幹部が経営者の金銭感覚にどうすれば近づくことができるかというと、まずは「自分の財布だったらどうするか?」を常に考えることだろうと思います。実際に、会社に自分の財布からおかねを出すというのも一つです。

3.お金の使い方はどこで学ぶのか

少し個人的な話で恐縮です。7年前に前職の経営企画室にいた頃、リニューアル発売される一個10万円もする高級クリームの販促動画を制作する仕事をしました。動画制作をするにあたり、ラグジュアリーな世界観や最先端の研究成果を示すためにCGを使うなど条件とともに付いた予算が200万円です。

200万円という大きなお金は、数分の動画と引き換えにすぐに溶けていきました。そして、肝心の動画は販売の現場の背景として使われ、売上に少し貢献はしていたようです。

この時、私は「お金には、生き金と死に金がある」ということと「お金はすぐに溶けてなくなる」ということを学びました。

販促のために動画という打ち手はあるものの、動画を見ることで一個10万円の高級クリームが果たしてどのくらいの方が「買おう!」と思ってくれるのだろうか。「買いたい」という心のスイッチを押すための打ち手にはどのようなものがあるのだろうか。「200万円を使うのなら、他に打ち手はないの?」ということをもっと考えるべきでした。

経営者は「お金の使い方」にシビアです。「1円の節約は1円の利益」という言葉があるくらいです。そのため、経営幹部は「お金の知識」だけでなく「お金の使い方」についても学ぶ必要があります。

ところが、「お金の使い方」は学校では教えてくれません。「お金の使い方」を学ぶためには、実際にお金を使うことでしか学べません。

決算書の数字だけ見ていると「勘定合って銭足らず」ということになってしまいます。実際に手持ちのキャッシュがどのくらいあるかを意識しないといけません

だから、経営幹部に「お金の使い方」を学んでもらうためには、お金の「調達、投資、回収」の一連の流れを経営者ご自身と一緒になってやってみるということが大事になってくると思います。

今回の記事は『経営幹部の育成における「お金」視点の話』ということで話をいたしました。何かしらのお役に立てておりましたら幸いです。

次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。

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