コロナが紡いだ二本の糸
当時私のスタートラインは、家無き猫2匹所持だったため、賃貸ではなく分譲に踏み出したわけで。お一人で住むにはちょうどいい1SLDKの天空の城を選び謳歌しようと企てていた。これが住人二人となると中古物件ゆえの収納力の無さから、少し窮屈な日々を送っていたため、今後を見据えてもう少し広い家をとりあえず見てみることにした。
4,5ヶ月ほど見て周りなかなか不動産知識も身についてきた頃に、東京屈指の繁華街まで徒歩10分という神のような立地にある新築マンションのローンを試しに申し込んでみることにした。(気づけば物件見学が趣味になってきたので、いつか不動産周りのうんちくも垂らしたい所存ではある)
いくらまでローンが借りれるのか。
月々のランニングコストはいくらなのか。
駐車場は確約できるのか。
などを話しながら周辺環境をぷらぷら散歩している時のこと。
そこはブライダルジュエリーが並ぶエリア。
最近友人がプロポーズされ、婚約指輪をもらったこともあり、
冷やかしでいくらするのか、どんなデザインがあるのかを見に行くことにした。
ほへーというぐらい正直見た目ほぼ変わらないリングに少々胸焼けしながら、王道ですというデザインの試着をとゴリ押してくる店員さん。全然心躍らないな…と性悪オーラ全開になってしまった私だったが、ふらっと入った店でまさかの一目惚れをかましてしまったのである。あまりのブリンブリン具合と形に心の中で「パーフェクト」と念じるものの、特に入籍の予定もまだなく、プロポーズされた訳でもないやや痛い状況に気づき店を後にした。
遅めの昼食をラーメン屋で過ごしていると、
「いやーしかし本当に綺麗だったな。一目惚れしたな」
「うん。よかったね!じゃあ食べ終わったら買いに行こうか!」
え?それって….?
店内に戻ってもソワソワが止まらない私に、
「刻印の日付どうしますか?」と問われ固まっていると、
3日3日にしますと横で回答する滑舌巨人K。
一瞬なんかの詐欺にでも合っているのかとよぎるが、現状私の損失は相手の結婚指輪ぐらいだと言い聞かせ、婚約指輪工程をすっ飛ばし、ひょんなタイミングで互いの結婚指輪を唐突に決めるのであった。
そこからの段取りは実に早く、意外と巨人がコミットした3日3日まで日数がなく、その間に新居の契約・周囲への報告等を済ませ、滑り込みアウトの思い出あと上書き保存のプロポーズを受けたりと、あっという間に役所の日がやってきた。
そしてめでたく35歳独身女性の成婚率に1を貢献する日が終わる。
そこには血の繋がらない関係ない他人ではなく、"家族"というペアルックを着た糸で繋がれた他人がいた。
未知で心許ない妊活生活の幕開けだ。