いよいよ採卵当日
採卵当日は7時15分に病院に到着し、7時半から採卵手術となる。
しつこいようだが、本当に家が極近で助かった。
前日あまりの緊張で、ほぼ寝れず、色々とネットで情報漁るも
そこまで有益なものにたどり着けず、この記録を書く事に決心したのも、
そのためである。誰かのために記録として残せればと。
病院に到着するや否や、分娩をする病棟へ案内され、
目にする景色(新生児)に心踊りながら、しっかりとした病院着に着替えさせられ、
いざ手術室へ。
既に何人かの看護師やお医者さんが慌ただしく準備している中、
筋腫緩和剤を点滴で打たれ、徐々にほわーんとしていく中で、
何かが始まる音、忙しなく呪文のような数字を念じる執刀医。
「〇〇かけ〇〇クリア」
「〇〇かけ〇〇ブレイク」
のようなことを反復していく中、
それが卵子を採取できているかどうかの合図であることに
気づくまでそう時間は掛からなかった。
思えば、注射が始まった3日目ぐらいから、
左右にそれぞれ一つずつ大きな卵胞ができたせいで、
他が育たず、このままだと断念かもねって言われてから、
よージャイアンに負けず均衡に育ってきたなと思うと、
(確か1つが20mmを超える大きさになると採卵強行となるため、
1回で多くを採取するためにも可能な限り均等に育って欲しいのである)
そして反復される掛け声を聞くと、
問題なく複数の卵子が採取できていることがわかった。
この時点では、膣内に違和感はあるものの激痛の感覚はない。
徐々に緊張が解けて、なんなら一層眠ってしまおうと思ったおその時。
ズキッ!
ズキキキキキイ!
WHAT'S!!!!?
げ、激痛やないかい!!!!
激しく全身の体毛が逆立ったのが自分でもわかる。
しかも2段階で来る…….!!!
これは….
見つけた時の激痛と刺した時の激痛か?
それとも刺した時の激痛と引っ張り出す時の激痛コンボか?
いやいや。どっちでもいい。
つまり1つを採取するのに、2回異なる激痛が来るわけだ。
まだ始まって15分。
これは….効果が切れたのか….
まじか….あと何個あるんだ….
この時、側でずっと手を握りしめてくれた看護師がいた。
すがる思いで相当強く握りしめたと思うけど、
引っ込めることなく、肩を叩きながら手をずっと握り返してくれた。
全身が痙攣してしまいそうなほどの激痛にやがて変わったことを今でもまだ体が記憶している。個人差はあるかもしれないし、病院によって方針は異なるかも知れないが、想像を遥かに超える痛さにまるで不妊治療に対する己の覚悟を再確認されているようだった。
おそらくそこから20分ほどひたすら耐えたのち、
やがてあと2つだからねと掛け声が。
ということはこの痛みもあと4回!!!
もうこの時点では、
体を踏ん張る体力があまり残っていない。
激痛の度にピクッとすることに精一杯であった。
やがて終わりの合図がかかる。
全身から力が抜け、3人に運ばれ簡易ベッドでどこかに移送される。
その後の記憶は皆無だ。
寝不足だったのもあり、疲れ果て、また緊張が解けたせいか、
その後すぐに眠りに落ちたようだ。
時刻は10時半。
採卵の日は、相方も決まった時間に強制召喚が決まっている。
なぜならば、採卵の時刻に合わせ、新鮮な精子を提供しなければいけないのだ。
10時から11時の間に必ず来院が必要であった。
その帰りに様子を見に来てくれた巨人Kは、
予想外の点滴に繋がれたぐったりした私の姿に涙ぐんでいた。
そうだよな。
まさかこんな管いっぱいつけられて、
ここまでぐったりすると思わないよな。
そしてこんなにも激痛だなんて聞いてない。
病院の先生たちは治療のプロであっても、
経験者ではないから仕方のないことだが、
これから卵子を採取する方々へは、
「激痛だから覚悟した方がいい」と、
声を大にして伝えたい。
近年、独身女性の中でも、卵子凍結に踏み出す方が増えたようだが、
ホルモン注射による表現し難い精神的に苦痛と採卵過程による海馬に叩きつけられる身体的苦痛を事前に熟考してから進むべきだ。
もし結婚していなかったら、
私もおそらく少し安易な気持ちで卵子凍結を選択する一人の働く30代だっただろう。
さて、やがて結果が出た。
全部で13個の卵子を採取できたとのこと。
すごいじゃん!多い!
と一瞬喜んだのだが、
平均が何個かも知らず、
そのうちの受精率も知らず、
少し複雑な気分になった。
巨人Kが持参したおたまじゃくしとこの後ご対面とのことで、
翌朝10時に電話をして、受精卵の数を確認するように言われ、
13時ごろ病院を後にした。
不運にもこの日は、
ズラすことのできないお客様の生放送がある日で、
遅くとも18時までには会場に行かなければいけない。
のに体が鉛のように重い。
普段1つしか排卵しない子宮に13個もの(失敗も入れるともっと多いのかも)卵子がいるなんて、お腹の張りが半端なく、それは術後すぐでもあまり変わらなかった。
体重も重いまま、お腹も痛い。
仕事へ行かなければ。
働く女性の不妊治療は無常なものだ。
明日朝の結果を肴にとりあえず今宵を乗り越えよう。