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"結婚"という次なる目的地へ

「もしさ、結婚したら子供は欲しい?」
「できれば欲しいかな」
「私、卵管が両方なくて、100%自然妊娠できないんだよね」
「それはもう確実なのか?」
「うん…医者が手術失敗してなければ、奇跡が起きることはないかな」
「でも妊娠できない訳ではないんでしょ?」
「そうだね、体外受精すれば望める」
「じゃあ原因不明な不妊より確実性があるってことだね」
「それでいうと私は一度は努力をしてみたい」
「うん。じゃあ答えは一緒だね!あ。お金貯めないとね」

そしてこの会話は終わった。
この時、私の中で咄嗟に「結婚」という二文字がよぎった。
と同時に生まれて初めて他人同士が家族になることに必要なものを悟ったような不思議な感覚に駆られた。

そうか…今まで私は恋愛の延長線上で限界突破した先にスキン替えしたきらきらしてる"結婚"というものがあると思ってた。だから、限界突破できるアイテムを揃えることに没頭し、揃えられない場合や揃わなかった場合は諦めるしかなかったんだな。その場合、また限界突破前のカード探しに出ないとなと思ってたけど、そもそもガチャ池には最初から激レアが存在することだってあるのだ。たったの1%未満の確率かもしれないけど、いやもっと低いかもしれないけど、確実にそれは存在するのだ。最初から限界突破したカードがね。恋愛の延長線上でしか愛が育まれないわけでない。最初からずっと欲しかったカードが出れば、それはそれで感激・愛情メータは一気にして爆上がりするわけだ。

この辺りから先が見えないコロナの影響と度重なる緊急宣言やまんぼうによる在宅機会が増加していった。そして合間に少しだけやってきたGoToキャンペーンの恩恵を使って、毎週末のように近郊に足を運んだ。料理の腕もいつしか「居酒屋ハーベスト」と呼ばれるぐらいに友人が食べに来たいと言ってくれるように成長した。KはA型もあってか掃除や洗い物がびっくりするぐらい得意だったので、家事の分担は自然と凹凸がドンピシャでとてもストレスフリーな半同棲生活が続いた。

それに夜遅くまで会社の付き合いで飲んで帰ってきても、文句ひとつ言わず、飼い猫たちの世話をしてくれ、可愛がってくれ、家事をして先に寝ていてくれる。何事も心穏やかに対処する彼につられ、いつしか自分でもわかるぐらい優しい気持ちになっていく私がいた。

もはや半分ぐらいの時間を在宅するのが当たり前になり、加えて解ける気がしない宣言下で起きる働く勢のご飯問題もあり、気づけばKは自宅に帰ることなく、
ほとんど我が家で一緒に過ごすようになった。その頃にタイミングよくやってきたK宅の契約延長更新。ごく自然と解約し、我が家で一緒に暮らす話が上がるが、その直前の彼のトラウマもあってか、結婚の予定がない人と私は2度と同棲しないことを告げる。彼はただただ驚いた顔で、「僕は最初からそのつもりさ」と笑顔で言った。

これは激レアだ。逃すわけには。

この頃から、私たちはどことなく自然な流れで、新しく一緒に住む家を、新たなスタートを切れる家を毎週のように見て回った。気づけば趣味がギャラリー見学となった。

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