排卵誘発剤(ホルモン注射)による魔物期
●魔物期初日●
筋肉注射の本気を知ったこの日は、
まだ治療に向けてアドレナリン全開だったので、
会社に行き、夜ちゃっかりジムもこなす余裕があった。
●魔物期2日目●
この日は身体検査、採血、レントゲンと内診モリモリDAYだったため
出社はできず注射後在宅で仕事をした。
ここで注射は日毎に腕を交互に打つといいと教わり、
この日は右肘を差し出す。
ここで1回の注射による費用が診察料込みで
8000円もする事に会計2回目にして今後かかる治療費に不安を覚える。
●魔物期3日目●
この日から毎朝8時半の注射に少し疲労を感じ始める。
と同時に巨人Kはこの日に別口で血液検査を命じられる。
(通院してから旦那2度目の協力要請)
コロナなので、基本診察同伴不可というのもあり、
待合室にいる男性は基本精液検査か血液検査だと思ってる。
そしてこの日の夜から体調にも変化あり。
●魔物期4日目●
昨晩は会食でやや飲み過ぎたため、完全に二日酔い状態での朝注射。
そして運悪くこの日は検診もある。
絶対バレていたと思うけど…どうすることもできず…
気持ち悪いのを抑えながら、卵胞の育成状況をチェックされる。
この時に知らされたのは、左右に1個ずつ大きい卵胞があるが、
残りは全部小さいので、もしこのままこの二つが独走した場合、
今期移植は中止となるとのこと。
ちゅ、中止!!!?
ちょっと待って、こんな痛い上に高い注射を4日も我慢したのに、
それは何がなんでも避けたいので、
とりあえずお酒をがぶ飲みしたことを反省。
たまたま二日酔いが長引いたせいだと思っていたが、
この日から排卵痛が強くなり、お腹の張りも顕著になった。
そして何よりものすごく眠い。そして体がだるい。
●魔物期5日目●
待って…ものすごくだるい…
寝ても寝ても眠い…お腹が張って気持ち悪いし、
排卵痛が1個ではなく、ゴロゴロしてる気がする。
この日からおりものも出るようになった。
そして何故かこの日は午後15時の診察&注射。
ここに来て、毎回前日に「明日〇〇時に来てください」
と言われる事に少しずつストレスを感じ始めてしまう。
いくら家が徒歩圏内と言えど、午前中ならまだしも、
しれーっと1日を分断する午後の時間帯を言われると
ああああ、会議が、締め切りがー。と第一に脳内が…
●魔物期6日目●
癒える訳も無い交互に差し出している腕の注射痕(アザ)が目立ち始める。
同じ腕でも被らないように打つように注意を払う時期へ突入。
ここに来ると、担当看護師の当たり外れが自分の中で
できてしまう。針を刺したときに痛いとかではなく、
痛いから早めに終わらせようと急いで激痛を短時間
味わわせる天使と痛いから可哀想と思っているのか
ゆっくり丁寧にそれなりの激痛を長時間味わわせる
天使の2パターンがいる。
正直どちらも地獄だ。
いつになったらこの注射に慣れるのだ。
毎日毎日打ってるからいい加減脳が麻痺っても
おかしくないのに、ちっともその傾向がない。
割と激し目の排卵痛に耐えられない眠さ。
歩いてても寝てしまいそうなぐらい眠い。
●魔物期7日目●
この日は土曜日だったため、高校の同級生ら6人と
楽しいひと時を過ごしていると、ついついまた深酒を
してしまい、皆で最後ラーメンを食べて帰ることに。
そこにいた巨人Kは眠すぎたのかラーメンを抱えたまま眠りにつく。
それを見た私が激怒し、なんとこの日家に帰る事なく、
家の前のホテルに宿泊してしまった。
翌朝目覚めると、なぜそんなことをしてしまったのか
自分でもわからないまま、無常にやってくる病院の時間のため、
家に戻り、ルーチン化した注射タイムへ。
ここに来て、連日のホルモン注射による体内のホルモンバランスが崩壊へと向かっていることを知らされる。
通常1周期で一つしか排卵しない卵を1回の周期で10個+排卵させてしまうのだから、それそうの副作用があっても確かにおかしくはないのだが、
事前に誰もそんなことを教えてはくれない。もちろん個人差はあるものの、
徐々に自分の知らない自分が大きくなっていくのが恐怖で恐怖で堪らなくなる。
家出したおかげで、喧嘩を免れたが、私が恐れていたのは、
そんなことで怒って家を出てしまった私は、決して私が知っている私ではなかったということ。
●魔物期8日目●
日曜日は病院は通常やっていないが、注射をやめるわけには行かないので、
朝から緊急センターで並ぶが、当直医しかいないため、注射を打つだけなのに、
1時間半も並ばされた。そして今日の天使はかつてないぐらい悪魔であった…
こうしてせっかくの週末午前中はあっけなく終わった。
昨日あたりから夜になると直立できないぐらいの眠さに苛まれ、覚えてないぐらい久々に寝落ちをする。そして今日は何もする気が起きない。
だるい…眠い…お腹が痛い…
この時点で1週間で増えた体重は三キロ…
この時期になるとお腹がエブリタイム張っているので、
大好きなビールをあまり飲みたいとも思わなくなってしまった。
飲んでも1杯ぐらいでお腹がパンパンすぎて苦しくなる。
結果としてそれでいい気がするのだが、
これに痛い眠いだるいがおまけでついてくると、
毎日仕事終わりの楽しみもなくなり、
気持ちが急降下していく。
●魔物期9日目●
朝が….起きれなかった….
正確には目は覚めたが、体が動かず、
どう足掻いても起きれる気がしないぐらい
だるさと眠さと謎の不安MAXで全く原因不明の号泣を決める。
腫れた目で会社に行けるはずもなく、
この日も16時診察のため、休みを取ることを決める。
今日は仕事は無理だ。どうした私。
心当たりは全くないけど、とても不安な気持ちで胸がいっぱいになる。
そして誰とも喋りたくなく、暗い部屋でしばらく過ごす。
全く私らしくなく、自分に恐怖を感じる。
この魔物期間本当に早く終わってくれ….
●魔物期10日目●
久しぶりに注射だけの日。
この日は、いつもの激痛hMGホルモン注射に加え、
新キャラ「セトロタイド」も仲間に加わりました!
セトロタイドとは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アンタゴニストというもので、簡単にいうと卵子の早期排卵を防止する薬である。
つまり、この頃になると卵胞は大きくなって欲しいのだけど、
まだ排卵しないでというそれぞれの薬で制御をしなければいけなくなる。
この「セトロタイド」はお腹に刺す注射で、かゆいと説明を受けたが、
激痛hMGに比べると正直どうでもいい。もう両腕がアザだらけだ。
皮肉にもこの季節はまだまだ初夏が残る10月頭。
腕にいくつものアザを作っている人は見た目がデンジャラスなので、
やむなしで一足先に長袖を着用する。季節先取りか意識高い系的な。
そして明日また診察だ。
そこで採卵日が決まるとのこと。
ようやく…ようやく!!
魔の情緒不安定期とおさばらできる!!
この時期は何より切に心の不調の終わりを切望していた。
痛い事やお金がかかる事、スケジュールに全く融通が効かない事など、この時点ではもはやどうでも良くなるぐらい、私の中でホルバランスの崩壊による判断力の迷走、思考力の奇行がもたらす弊害にストレスを強く覚えることとなった。
time is money的に常に効率を求められる仕事環境において、ちょっとした判断のミスや心情的な奇行が取り返しの付かない仇となる事があまりにも恐ろしく、そんな確率を最小に防ぐべく、可能なら誰にも会いたくない気持ちにたったの10日間でなるとは。人間って恐ろしい生き物だ。
そしてここで初めて働くながらの不妊治療は難しいと世間が口を揃える事の真意を知る。スケジュールの融通が効かない事と金銭面の問題だとばかりに思っていたからだ。
あと1日だ。ゴールはすぐそこなはず。
そして頼む。たくさんEGGが取れますように。
●魔物期11日目●
問題ないとのことで、ついに2日後に採卵が決行!!!
雨天決行ですよ!!!いやー来ましたね!
そのためこの日は昼の注射に加え、
夜21時に時間ぴったりにhCGの注射を受けないといけないとのこと。
今日は高校の同級生の晴れ舞台を見にいく予定だったのに…贈呈するお花だって買ったのに…なんてことだ…この間で一番楽しみにしていたというのに、仕方ない…
そしてこの注射も激痛。
もうどうでもいい…ゴールが見えてきた…
あと2日で解放される!!!
いや、これで一歩前進だ。我が子まで一歩進めるのだ。
もはや自分が何のために毎日痛い注射を受けていたのか、
ルーチン化されすぎて忘れかけたが、
この時は久々に期待に溢れる前向きな気持ちへ。
トラウマレベルの採卵が待っていることも知らずに…