『渡船、ザンビアの留学生』


渡船で出会った留学生の思い出を短歌にした。

  ザンビアの留学生を忘れない「こんにちは」っていつも渡船で

 赤いセーターがよく似合ってて笑顔のかわいい女学生だった。ザンビアからの留学生。渡船乗り場で会えた時いつもほほえんでくれた。私が暮らしている鳴門には鳴門教育大学がある。
ザンビア、ケニア、中国、ベトナム、アメリカなどいろいろな国からの留学生が学んでいる。留学生たちは、買い物の時、高島渡船に乗って黒崎に渡り鳴門の中心街に行く。中心街で日用品や南瓜、鶏肉、長葱、スパイスなどを買った留学生たちは帰りの渡船に乗る。その南瓜、鶏肉、長葱、スパイスでどんな料理を作るのだろう?
船の出発まで洋書を読んだり鳴門の地元の方と楽しそうに話をしていたり。留学生と英語が話せる地元のおばあちゃんが笑顔でハイタッチしていたなぁ。笑顔がかわいかったザンビアからの留学生は、きっと仕事で活躍していることでしょう。あの子を渡船で見かけなくなって二年が過ぎた。
毎年たくさんの留学生が来るけれど赤いセーターが似合ってたザンビアからの留学生の笑顔は特別心に残っている。国に帰っても鳴門の渡船、鳴門の風を忘れないでね。三十年後四十年後写真を眺めて鳴門で過ごした青春の日々を思い出してほしい。子どもや孫、友達にも渡船の思い出を話してほしい。
 私は、これからも鳴門の街で暮らしてたくさんたくさん渡し船に乗りたい。そして渡船の歌、渡船のエッセイを書き続けてゆく。三十年後四十年後、歳を重ねたその時、この文章を読み返したらどんなことを思うだろう。
春夏秋冬季節は巡る。渡し船の出会いと別れ・・・。四月になったらまた新しい留学生に出会えるだろう。
 春の海、季節の風、いつも歌作に行き詰まったら渡し船に乗りに行く。風に吹かれて三十一文字を。  (2023・2 楠井花乃)

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