プレーの自動化のプロセス。フットボールの意思決定論。
自分の意思で決意してプレーしていると感じるのは錯覚である。
前回の記事で意識と無意識の脳内プロセスについてまとめた。意思決定は無意識かつ自動的にされるプロセスと、思考を用いて意識的にコントロールされるプロセスがあるが、私たちのプレーは無意識で生じており、意識化も脳内の無意識プロセスの1つであると解説した。
本記事は無意識的プレーのプロセスを中心にプレーの自動化とは何かについて解説する。
心理学的要素分解
心理学では一般的にプレーおける心理過程を刺激(入力)、反応(出力)に分け、その間にある意識・思考・意思・感情などの内部の処理過程から研究されている。
この情報処理過程は3つに分類される。入力と出力の対応関係、学習過程やスキル獲得など入出力間の処理過程、脳内の物理的な変化に分けられる。これらの3つの分類で様々な研究が行われており、プレーの自動化、自動化したプレーを意識化するためにはこの過程にアプローチする必要がある。
入力と出力の対応関係
入力・出力間の処理過程
脳内の物理的な変化
自動的処理(automatic processing)と統制的処理(controlled processing)
認知過程において意識しないまま行えるプレーと詳細に注意を払いながら行うプレーがあることに着目した理論である。
Kahneman(1973)は、何らかの心的課題を行うために必要な一種の心的エネルギーを注意資源と呼んだ。そして、何らかの課題を行う際に人が払う注意には一定の容量があり、限られた注意資源を課題の困難性や興味にあわせて適宜割り当てながら処理しているとする注意資源を配分説を提唱している。
Shiffrin & Schneider(1977)はこの理論に基づき、複数の刺激の中から目的の刺激を発見する視覚的走査課題において、この注意資源を多く用いて行う制御的探索(統制的処理)と、最小限の注意資源で行われる自動的検出(自動的処理)という2つの方略があることを示した。
自動性処理と統制的処理はプレーに密接に関わっている。
例えば、Baumeister(1984)は、緊張した状態では練習を積んで自動的に遂行可能なパフォーマンスを、あえて統制的に処理しようとしてしまうため、パフォーマンスが低下することを示した。
Gilbert & Osborne(1989)は、対人的印象の形成過程において、認知的混乱が生じた状態では、統制的に対象をモニターする活動が抑制され、直感的で自動的な印象形成が中心になることを示した。
フットボールの認知(Percepción)はこの統制的探索(統制的処理)である。実際の試合環境ではBaumeisterの研究で示されたように認知により(統制的処理)パフォーマンスを低下させる可能性が示唆される。また、試合状況で認知的混乱が生じた際は、直感的で自動的な処理が中心となり、主観的な状況判断となることが考えられる。
これらの先行研究を知ったうえで自動化の定義を紹介する。
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