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福岡堅樹スプリント分析 爆発的加速力の秘密

日本では2015年、2019年ラグビーWカップが盛り上がりましたね。

その中でも日本代表不動のウイングでラグビー界のスピードスターといったらこの男!

福岡堅樹選手です!

50mを5.8秒で駆け抜けるスプリンターを身体機能面に着目して分析していきたいと思います。


Sunnyさんのnoteはフットボーラーが多く見ているかと思いますが、あえて他競技の選手を分析することでフットボールにも生かせる部分は多くあると思います。

ぜひ参考にしていただければ幸いです!!


▼それでは解説に入っていきます!

まずこの動画を見ていきましょう!

この動画を見ていかがですか?

とにかく速いということはお分りいただけたと思います笑

特徴
・骨盤前傾
・速いピッチ(回転数)
・爆発的な蹴り出し 
        



福岡選手の特徴としては骨盤前傾にて身体を前に倒して、爆発的な蹴り出しで加速、足の引付が強く、ピッチが速いというのが大まかな特徴かと思います。

なぜこのようなスプリント動作になっているのかを分析していきたいと思います!


骨盤前傾

福岡選手の特徴の一つ、体を目いっぱいに前に倒して加速する姿が特徴的ですよね


この動画を見ていただければわかると思いますが、手前の選手を交わした後、もう一人の選手を振り切る動画です。

一度スピードを緩めて、もう一度ギアを上げて加速しているのがわかります。

最後の選手を振り切る手前で身体をクイッと入れて加速していることがわかるかと思います。


専門的に言うとスピードを緩めて骨盤を後傾位(骨盤を後ろに傾ける)にした後、加速する際に骨盤を前傾(骨盤を前に傾ける)にして一気に加速しているといえます。


この動画で林大成選手も言っていますが、接地の際に骨盤後傾から前傾することで推進力を得る。

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福岡選手も同じような原理を使っていることがわかります。


なぜ接地の際に骨盤前傾すると加速力が上がるのか?

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骨盤を後傾位から接地の瞬間で一気に前傾にすることで広背筋の伸張反射が生じます。後傾位で筋肉が伸ばされた後に前傾位で縮むことで筋肉のバネの力を利用できます。

広背筋の力がハムストリングス→下腿三頭筋→アキレス腱→足底腱膜へと伝えられる。

これが爆発的な蹴り出しを可能にしてくれます。

また、骨盤を後傾位から一気に前傾にすることで胸郭が前に出されます

胸郭は上半身重心の主で、上半身重心が前に移動すれば身体がより前に進む原動力となってくれます

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また、力の伝達には上行性のものと下行性のものがあります。


足首のバネを利用して足底腱膜からアキレス腱、下腿三頭筋、ハムストリングス、広背筋への上行性の力伝達

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そして、骨盤後傾→骨盤前傾からの広背筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、アキレス腱、足底腱膜への下行性の力伝達の両方が大事になってきます。

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まとめると、、足接地時の骨盤前傾が広背筋の伸張反射を引き起こし、爆発的な蹴り出しを可能にします!


ステップが上手い選手はこの様な身体の使い方が上手ですね!



速いピッチ(回転数)

福岡選手の特徴その2

とにかく脚の回転が速いですよね!


蹴った後に足の引き付けが強いのがわかります。

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前回も言いましたが、スピードの定義は

スピード=ピッチ×ストライド

福岡選手はピッチによりスピードを上げていると考えられます。


また、陸上選手のスタートは蹴った後に足を引きつけず、より前に出して加速する特徴があります。

専門的にはlow heel recoveryという技術にあたります。

中間疾走では足を引き付けますが加速する際は足を引き付けてしまうとタイムロスに繋がるからです。

スタートに定評のあるブロメル選手の動画です。


蹴り出した右足を見てください。

足を引き付けずにすぐ前に出しているのがわかります。

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しかし、福岡選手は違います

蹴った後ろ足をかなり引き付けているのがわかります

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この引き付けがピッチ(回転数)を上げているキーポイントではないかと思います!

上図を見ていただくと後方に蹴り出した後に足首が脱力しているのがわかります。

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福岡選手は蹴り出した後に足が脱力して底屈位(足首が下がる)で足を引き付けています。

一方のブロメルは蹴り出した後に足を引き付けずに前へと運ぶ中で背屈(足首が上がる)方向に動いています。


なぜ脱力出来ているのか?


これは前回記事とsunnyさんの記事でも述べてある通り、足首が使えている証拠です。


後方への蹴り出しが強い、足首の脱力の反動で足が大きく引き付けられる

そしてこの引き付けがピッチ(回転数)を上げているのです!


また、後方に蹴った後の足を引き付ける時間ロスじゃないの?

という疑問が生まれるかもしれませんが、、、


後方への蹴り出しが強すぎる+足首が脱力できているから反動で引き付けられるだけで

これはより後ろ足での蹴り出しが強い証拠ともいえます


まとめると、、蹴り出しの強さ、足首の脱力の反動で起こる素早い足の引き付けがピッチを上げている



爆発的な蹴り出し

先程述べた接地時の骨盤前傾のスイッチに加えて、福岡選手は接地の瞬間にヒップロックが行えてます。

ヒップロックについては

松本さんの記事を参考にしていただければと思います!


ヒップロックとは、2015年ラグビー日本代表コーチを務めたFrans Boschsが提唱しているもので

・支持脚の股関節安定化 
・遊脚脚の挙上

が起こります。

支持脚で支持した際に中臀筋等が働き、支持脚の骨盤下制、遊脚脚の骨盤挙上が生じます。


ヒップロックが使えると片脚支持が爆発的に安定します!

Boschsはツイッターにて福岡選手を使ってヒップロックの説明をしています。

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松本さんの記事を引用させていただくと、

高速でのスプリントでは、接地時間は0.1秒、それ以外の方向転換やジャンプなど瞬時に大きなパワーを必要とするアクションでは、コンマ数秒の接地時間で地面に力を伝えなければなりません。歩行や片足たちでは問題なくとも、スポーツで求められるハイスピードでのランニング、スプリント、方向転換、ジャンプでは骨盤が下がることをコントロールしきれずに、接地の瞬間に骨盤が低下してしまう場合があります。それは、接地した瞬間の力を逃がしてしまうことになりますし、股関節・骨盤の安定性が低下することになり、パワーロスと同時に傷害リスクを高める可能性もあります。

接地した瞬間の骨盤前傾の力をヒップロックにより逃がすことなく推進力につなげている。

これも爆発的な蹴り出しを可能にしている要素です!






爆発的な加速力(1~4歩)を持っていれば、スピードを緩めた相手を置き去りにするのも容易いですね!


まとめると、、接地の瞬間のヒップロックによって力を逃がすことなく前方推進力に変えている



怪我のリスクについて

福岡選手は高校時代左右前十字靭帯損傷を2度、また2019年ワールドカップ前にはふくらはぎの怪我をしています。

爆発的な加速でスピードを出せるが故にストップや切り返しの際に制御しきれないデメリットもあります。

また先程述べた足首を脱力して蹴れている選手は下腿三頭筋を使いすぎる癖もあるため、筋肉系の障害は起こりやすくなります。

スプリントトレーニングと併用してストップ動作の練習は必須かと思います。



以上が

・骨盤前傾
・ピッチの速さ
 ・爆発的な蹴り出し


の分析になります。


少しでも参考にしていただければ嬉しいです。



理学療法士/スポーツシューフィッター 安田智彦



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