サッカーにおける体幹の運動を細分化する能力を考える。
前回の記事では体幹の知覚を精密化することについて紐解いた。体幹についてのこうした知見はあまり知られていなく、単純化したトレーニングのみが広まっている現状である。
是非、読者の皆さんにはこの知見を基にトレーニングにおけるコーチングを展開して頂きたい。
体幹には姿勢制御と運動制御が存在し、様々な要素の相互作用で成り立っていることを説明したが、まず復習することから始める。
体幹の姿勢制御システム
姿勢制御は複数の構成要素間の「システム」の産物である。Horakは「姿勢制御は単純な静的反射ではなく、むしろ複雑な技能としての動的な感覚運動過程の相互作用に基づいており、姿勢制御の機能的な目標は姿勢バランス(postural epuiqbrium)と姿勢の方向づけ(postural prientation)である」と述べている。これを体幹の姿勢制御に置き換えると、姿勢バランスは体幹の姿勢制御、姿勢の方向づけは体幹の運動制御というニュアンスになる。
姿勢バランス:体幹の姿勢制御
姿勢の方向づけ:体幹の運動制御
Horkは姿勢制御システムに必要な複数の構成要素として、次の6つが重要だとしている。
力学的制約(Biomechanical constraints):運動の自由度、筋力、安定性限界
認知過程(Cognitive processing):注意、学習
垂直性の知覚(perception of verticality):視覚的、姿勢的
運動ストラテージ(movement strategies):反応性、予測性、随意性
感覚統合(Sensory integration):感覚の優先度、感覚統合
感覚モダリティ(Sensory modalities):体性感覚、視覚、前庭覚
人体は単純に見えるシステムほど複雑系で構築されている。単純化したものはエラーが見えにくく、コーチングの対象外となりやすい。しかし、なぜ現場では体幹トレーニングの重要性が説かれるのか。これは概念的なものが幅を利かせていると考えて良い。
「体幹は木の幹で、四肢は枝である」
これは整形外科の父と呼ばれているAndryが示した概念であるが、この基本概念は一般的にも深く浸透している。体幹が動くことは誰でも知っているが、体幹は静的で四肢は動的であるかのように解釈されている。皆さんがご存知の体幹トレーニングは静的もしくは、幹の様に使うものが多いのではないだろうか。
また、この概念は「体幹の感覚は鈍感で、手の感覚は敏感である」との考えを生み出した。
手は巧緻な運動器官であると同時に繊細な知覚器官であることが知られている。特に、示指の指腹は「第2の眼」と呼ばれるほど触覚の識別能力が高く、物体の表面の肌面を精密に捉える。そして、それは「2点識別覚」の制度の高さが反映されている。
LedermanとKlastzkyによれば、手は「ハイプティック・タッチ(haptic touch=能動的触感)」や「アクティブ・タッチ(active touch=能動的触覚)」によって、物体の属性である表面素材、温度、形や大きさ、硬さ、重さ、エッジ(縁)などを精密に知覚することができる。これは、足でも同様である。
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