キックのボールコントロールは助走で決定される可能性がある。
フットボールにおけるキックの質の重要性は誰しもが知るところであるが、パターン練習の反復練習や実際のプレーシーンに近いなかでのトレーニングが中心となっている。
練習:practice
(理論・思想に対して)実行、実践、実地、実際、(実地で得た)経験、(反復して行なう)練習、けいこ、(練習で得た)熟練、手腕、(個人の)習慣
学習:learning
学ぶこと、学習、学問、学識、知識、博学
学習とは「経験によって生じる、比較的永続的な行動の変化」と定義されており、練習≠学習である。
行動の変化が伴うことは、フットボールではプレーの変化が伴うことと定義でき、キックを学習することによりフィールドでの変化が生じることが必要である。
パスコンなどの練習ではフィールドでの変化が生じにくく、キックのトレーニングにおける構造化の必要性が考えられる。
キックをトレーニングするための事前知識
キックを一般的な練習のなかのコーチングで修正するのは非常に困難を極めることを前置きする。何故なら、最高速度に達したスプリント中に身体の一部位の動きを修正するのはトップアスリートにとっても困難な課題であるからである。
例えば、トップスピードの状態で「膝の皿を外に向ける」課題を提示された場合、膝の皿を外に向けるとスピードが低下する。または、運動連鎖によりつま先も外に向くことや、骨盤が後傾することが考えられる。このように運動の実行には様々な要素が関わっており、ある部位の修正には少なからず代償が伴う。
現在の選手の状態がフットボールに最適化された状態であり、ある修正がその選手の最適化を妨げることとなりうる。キックへのアプローチは根本的な構造から行う必要性が考えられる。
根本的な構造とは身体構造に適した動きの習得となる。フットボールの基本であるキックは専門家による指導の必要性があるのではないかと考え、現在東大ア式蹴球部の田所フィジカルコーチとトレーニングの考案を行っている。
加速フェイズにボールコントロールを含む視点
今回の記事では、メッシのFKの軌道からキックを推察していく。着目ポイントは加速フェイズである。加速フェイズとは一般的には助走にあたり、減速フェイズは軸足の接地である。ボールの軌道はインパクトの瞬間に決定しており、インパクトに時間軸が近ければ身体の運動軌道の修正の難易度は向上し、時間軸が遠くなることで修正は容易になる。
これらからより、インパクトの準備段階にあたる加速フェイズにアプローチすることでボールのコントロールを容易にする。
【ストレートパターン】
【ローテーションパターン】
ストレートパターン:身体の向きに対してボールの軌道が真っ直ぐ飛ぶもの。比較的ストレートの質のボールに使われる。
ローテーションパターン:身体の向きに対してボールの軌道が横に飛ぶもの。比較的カーブの質のボールに使われる。
※選手によりボールの質は変化し、一定ではない。簡易的な概念とするため、上記に示す。
フットボールにおけるキックは動きながら蹴ることが多くなるため、身体の動きはどのような球種でもほぼ同じ動きの方が望ましい。それは、運動効率の観点と相手を欺くために必要なことかと考える。今回はキックの比較的同じ視点の情報が得られるためFKの映像を用いるが、FKでも運動効率と相手を欺くためには変数を少なくすることが望まれる。
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