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今週は「バランス」でよろしく【2023.09.12】
高校3年生の夏休みに、とある料理宿に訪れた。ぼくはそこで食べた料理の美しさに心を打たれ、高校卒業後はその宿屋へ見習いに入った。そこには何か特別な技術があるわけではないけど、とことん丁寧に料理をしていた。
"最善を尽くせ。しかも一流たるべし。"
そんな言葉がよく似合う厨房だった。仕込みで千切りをする時も、太さは一ミリ単位で決められていた。もし太すぎたら、ひとつひとつ半分に切り直したりするほどだった。
料理は命と向き合う行為である。だから目の前にある小さな命に失礼のないように出会い、失礼のないように料理し、失礼のないようにいただく。そんな"料理の心"を学んだ。
だけどそういった料理をしていく中で、どうしてもひとつ引っかかるところがあった。それは、答えや正解が決められた料理は、どこか楽しさに欠けるということだ。
ぼくは小さい頃から、なにかを「つくること」が好きだった。自分の力で試行錯誤しながら道筋をたてていくのが楽しい。だから、決められたことをその通りにするものづくりは、ぼくが好きなものづくりではなかった。
料理研究家の土井善晴さんは自身の著書の中でこう言っている。
「お料理を作る純粋な楽しみは、強制されない、自由の中に湧き出るものです。」
その通りだなと思った。
相手を想って丁寧に料理をすることと、自由に楽しく料理をすること。どっちも大切。それはどっちをとるかという極論ではなく、丁寧でかつ自由な料理だってできるはずだ。そのバランスを決める自由がそこにあればそれでいい。
来週は、「自由」でよろしく。
2023.09.12 いぬつか ゆうき