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DIC川村記念美術館を守りたい!!


初めて行ったのは何歳の頃だっただろう。
千葉の郊外に住む小さなわたしに、美術館の世界を教えてくれたのは川村美術館だった。
少しひんやりとした石作りの入り口で迎えてくれたレンブラントの『広つば帽を被った男』の優しい瞳と美しい繊細なレースの襟を今でもよく覚えている。
広い池のなかの噴水と白い水鳥にわくわくしながら小道を進み、両親と兄と一緒に緑の中に溶けっていった記憶は、わたしの思い出の大切な1ページだ。


手をひかれていたわたしが、今は父の車椅子をひく。時が止まった絵とともに、わたし達の人生の時の流れを受け止めてくれる変わらない場所。
絵画と四季折々の草花を見て、心の洗濯をして、美味しいイタリアンを食べ終えて言う。
「またみんなで来ようね。」わたしだけではない、たくさんの人の小さな思い出が詰まっている美術館だ。

「ああ、どうかお願いだ。この美しいグレーと緑の世界をこのままにしておいてはくれないか。」
こちらを振り返りながら、そうつぶやく、広つば帽の男の声が聞こえてくる。



晴海 たお

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