今推したいギャグ漫画『大門寺と問題児』
◆ギャグ漫画大好き!
察しの通り、ぼくは毎週ジャンプの感想を欠かさず17年間続けてしまっているほど漫画が大好きだ。
バトル漫画は当然大好きだし、老若男女問わずかわいいキャラが出てくる漫画も好きだし、『いいな!』を積み重ねるタイプの漫画も好きだ。けれど一番欠かせないのはギャグ漫画だ。ごま塩程度に覚えておかないといかないくらい大事だ。
ジャンプなら今連載中の『僕とロボコ』『ウィッチウォッチ』『イチゴーキ!操縦中』がまさにギャグ漫画に該当する。いずれも好きな漫画だ。勿論、ジャンプ以外でもSQの『ギャグマンガ日和』も愛読している。
既に連載終了済ではあるが、『クロマティ高校』『坂本ですが?』が特に大好きなギャグ漫画。なお最近ジャガーさんに再熱している。
◆大門寺と問題児
というわけで、今回ダイマ紹介するこの漫画。
掲載誌は『最強ジャンプ』というコロコロコミックのライバルにあたる児童誌なのだが、昨年ジャンプ本誌に2週連続で出張掲載されたことから存在を知った人は多いかもしれない。覚えている人はどれだけいるかは分からないが、とても面白い漫画なのでどうか記憶にズバズバ刻んでほしい。また本誌に出張掲載されないかなあ。
なお作者の佐世保太郎先生は過去に大人気丸太バトルホラーアクション漫画『彼岸島』のスピンオフ『彼、岸島』をヤンマガWebにて連載していた。青年誌から児童誌へ移るのもなかなかすごい経歴だな。
◆メスを入れるタイプのギャグ
第一印象としては「そんなに児童誌っぽくないシュールギャグ漫画」だった。恐らく、児童誌連載なのは小学校が舞台だからだと考えられる。とはいえロボコも同じく小学校が舞台なのだが、まあ、週刊と月刊という違いもあるしな。SQでもイケそうだが、少し浮いてしまうかもしれない。
しかしこの漫画、児童誌連載とはマジのガチでなめてかかれない。
基本スタイルは問題児のまひるくんがボケ、大門寺先生がシュールなツッコミを繰り広げるショートコントだ。単行本にまとめると結構ネタが多くてお得な気分になれる。
まひろくんの問題児ムーヴ兼ボケは出オチのような破壊力があるのだが、これをどう掘り起こしていくかが面白さのカギである。つまるところ、ギャグ漫画に大切なのはツッコミのセンスだとぼくは持論している。
今回、1巻発売を記念して公開されたジャンプ+出張掲載版を参考に分析・言語化してみたい。
ギャグ漫画を分析すること自体ギャグみたいだが、だがしかし「面白い!」を言語化して伝えるのはとても大事なことなんだ!ぼくはふまじめに見えて案外まじめなんだぞ!!まじめ系クズなんだぞ!!
Case1.スパゲティ
一本目は家庭科の調理実習でスパゲティを作ることがテーマなのだが、まひるくんはどういうわけか食品サンプルを作ったという明後日の方向で大門寺先生を困惑させてくれる。
冷静に考えてとてもすごいのでここは褒めてやってもいいが、あまりにもカテゴリーエラーすぎるので説教すべきだし、肝心のソレをどうやっていいのか、どうツッコんだらいいのかハードルが早速高い。
まひるくんはいつもの涼しげな表情でThis is spaghettiと主張するも、ひとつずつ積み重ねるような大門寺先生のツッコミ。固い、匂いがしない、湯気が出ていない、フォークが重力の楔から解き放たれているという、最後にスリーランク上のギャグをブチかましてくれる。
食品サンプルすべてがこんなものだとは限らないが、ごくまれに見かけるだろう、フォークが浮いているという冷静に考えて面白い日常光景をギャグに活かしたのはすごく良い着目点だった。まさにメスの如く鋭さだ。というか、大門寺先生ノリ良くね?
Case2.黒板消し落とし
二本目は黒板消し落とし。
今の小学生もこのようなトラップカードを発現をしているかは分からないが、大門寺先生に近しい世代にとってはノスタルジック以外の何者でもないだろう。これを仕掛けるまひるくんたちを目撃するも、子供たちのことを考えてどのように教室に入ればいいのかという謎の心理戦が始まった。
立ち止まって開ければ黒板消し回避できるが子供たちには冷たい所業。後ろから入るとかえって白けることに危惧。普通に入って上手く黒板消しを回避………
教師って大変なんだなあ………
今回の出張読切はジャンプ+だし、大門寺先生視点で黒板消し落とし対策なので、若干年齢層が上なのを意識していると思うのだが、小学校が舞台ならではの面白い心理戦が繰り広げられている。だから単行本に収録してもそんなに違和感はないだろう。ていうか、黒板消し落としにマジになってる大門寺先生が面白い。あとなんだかんだで生徒からの信頼を得たい良心さに応援したくなる。ただでさえ苦労人枠も担っているからな。
壮大に疑心暗鬼になりながらも、結局黒板消しは落ちなかったオチは脱力感もあり、案の定まひるくんに翻弄されたダブルミーニングなオチでもある。彼が一体なにを考えているのかは分からないが。というか、アロンアルファでも使っているのか確かみてみたいくらい固定されているのもかなり厄介な問題児ではないだろうか。
Case3.宿題写し
肝心の答えが分からず、ゲームをやりすぎて時間が足りず、結局クラスメイツから算数ドリルを借りて写してもらったことはないだろうか?本来やっちゃダメなんだけども共感を呼び寄せる小学生あるある描写が本作の醍醐味のひとつだ。
算数の宿題や作文はともかく、自画像トレースはものすごく手の込んだいたずらプレイだが。線の強弱までトレスとかもはや確信犯なのを匂わせているのに「偶然ですね」とすっとぼけるまひるくんのその謎の余裕さはなんなんだ一体。
宿題コピペしすぎてまひるくんの自我がバグったミステリアスオチも、この子なら案外あり得るかもと確信できてしまった。単純に先生をからかっているだけかもしれないが、ほんと謎に多芸で、謎に大物感あるんだよこの子!将来がある意味期待である意味不安なんだよ!単行本の帯で絶賛コメントしていた和山やま先生もまひるくんの将来を心配していたのがすっごいしっくりくるんだよ!
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そう、紙版には帯に『女の園の星』『カラオケ行こ!』の和山やま先生の絶賛コメントが掲載されている。
勿論ぼくは和山先生の漫画も好きなので、意外でありながらすげえ嬉しい。そして絶賛していたのも腑に落ちた。なんとなくだけれど、このシュールギャグは似ている気がしたからだ。まじめに分析してみると、大門寺先生のツッコミは児童誌らしく強くメスを入れているのが分かりやすい違いなのかもしれない。
とまあ、こんな感じの話が毎度展開されている。
この漫画で一番やべーやつはアニメで小野Dが演じていたまひるパパだと思う。
◆アニメ配信中
現在アニメが配信されている。
アニメとあるが本格的なソレではなく、約2分間のフラッシュアニメといったほうがしっくりくるか。縦型なのでいずれTikTokでも配信されるのだろう。バズったらいいと思う。
原作ネタ再現なのだが、豪華声優陣の熱演のおかげで面白さを昇華している。しかもこれ、現在4話まで公開中なのだが、上述した公式HPによると第10話まで公開予定(5/2予定)というビッグボリュームである。この手の企画は大抵5話くらいまでお試し感覚で配信なのだが、2分が10話って30分アニメに匹敵する気満々である。案外作りやすいんだろうなあ。
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なんでこんな記事を書いたのかというと、みなさんのズレ落ちたメガネをかけ直してタイトルを再度見直してほしいし、なにより本屋に全然単行本が置かれていなかったのをぼくは強く主張したい。発売日だというのに三軒目でようやっと一冊だけ見つけられたくらいである。
まひるくんがひとつなぎの大秘宝感覚で本屋のあらゆるコーナーに単行本をばらまいたとかそういう厄介ないたずらをやらかしたとか、流石にそういうのではないと思う。ツチノコじゃないんだから集英社はもっと刷って増刷してくれないだろうか。ノコッチが23年の時を経てノココッチに進化したくらい出世してほしい。
まあ、どうしても見つからないのなら増刷を待つか、電子版を買うのも乙だろう。もっと評価されるべき漫画です。