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「200字の書評」(320) 2022.6.10



こんにちは。

道沿いではクチナシの花が匂っていました。渡哲也の歌を思い出しますが、今は白いクチナシよりも紫陽花が目立つようになってきました。茅屋の庭の片隅の紫陽花も開きかけています。雨に良く似合う花です。梅雨に濡れた紫陽花には華やかさと儚げな色合いもあって、危うい雰囲気を醸し出しています。雨が似合うと言っても、ここ数日は氷雨です。衣替えをしたはずなのにこの冷え込み。カーディガンを出してこなくては。

田圃の苗はかなり伸びています。食糧危機の現実化が迫っているので、瑞穂の国の米に注目です。

めっきり報道が減りましたが、知床観光船事故の行方不明者、未だに家族のもとに帰れません。冷たい海で彷徨っているのでしょうか。

さて、今回の書評は本と戦争のお話しです。




モリー・グプティル・マニング「戦地の図書館」東京創元社 2022年

先の大戦中、米軍は前線に弾薬と一緒に本を送り続けていた。兵隊文庫である。こんな国と戦っていたのだ。兵士たちは欧州の塹壕の中でも、太平洋の小島でも、洋上の輸送船でも本は離さない。ナチスが焚書した本を上回る点数が提供された。政府、出版界は選書、体裁、印刷を工夫して(反対論に抗しつつ)提供した。復員し進学した学生は、定着した読書習慣により熱心に学んだという。戦場でも本を求める、1冊の本の重さを感じる。




【水無月雑感】


▼ 防衛費を倍増したいという、約5兆円になります。5兆円とは目もくらむような額です。アベのハッタリと名ばかり宏池会のキシダは未来に責任が持てるのだろうか。この金で何ができるだろうか。教育子育てなら、大学授業料を無償化し児童手当を高校まで延長し、小中学校の給食費を無償化できる。年金なら受給者全員に年間12万円が追加支給できる。医療に使うなら、保険の自己負担がゼロになる。消費税は2%引き下げられる。皆さんどう考えますか。国の借金が1200兆円もあるのに…。


▼ 「誤解を招く発言をした」日銀黒田総裁の弁明です。消費物価の値上げを国民は受け入れているとのたまわった。たとえ値上げになっても、買わざるを得ないのが庶民です。賃金は上がらず先進国最低、年金は切り下げられる。でも、高くなっても買わなければ暮らしていけないのです。10年もこの職に居座り年間3千万円の報酬を受け取り、黒塗りの高級車で送迎を受け、100均どころかスーパーにも行ったことのないクロダ君には生活感が無いのでしょう。スーパーで2割引き3割引きの品を探すのは普通、夜には弁当に半額のシールが貼られるの待っている中高年は沢山います。誤解ではなく、本音を庶民は見抜いてますよ。何故自公政権を支持するのでしょうか、不思議です。


▼ ウクライナ戦争は長期化の様相です。戦火に追われ逃げ惑う一般人の被害は深刻です。東京大空襲を体験した母は生前「戦争はもう沢山だ、偉い人はわかっていない」とよく語っていました。プーチンの野望と好戦性は許せませんが、同時にウクライナ側と支援する欧米の側もどうすれば停戦できるのかを、一般人目線で考えるべきです。戦争は世界的に食糧危機を招きつつあり、環境破壊の進行でもあります。武器を送るだけではなく、平和の使者を送りたい気持ちです。一般人も双方の兵士も、かけがえのない人命なのです。


▼ 昨日従兄弟の一周忌だったので、電車で都内に行きました。墓所は墨田区スカイツリーの近く、池袋から秋葉原経由で錦糸町へ。電車で都心に足を踏み入れるのは、コロナが蔓延してから初めてでした。行く先々でビルがそびえ立ち風景が変わっていて、お上りさん気分でした。山手線に乗って座席に腰を下ろし前を見ると、向かいの席は7人見事にスマホ病でした。帰りの東上線で一人だけ本を読んでいる人を見かけて「同志よ!」と呼びかけたい気持ちでした。




<今週の本棚>


篠原雅武「『人間以後』の哲学」講談社 2020年

人新世の時代における、哲学の見取り図を描こうとしているように受け止められる。現代の哲学者たちの主張を紹介しているのだが、文章が生硬で、誰に読んでもらおうとしているのか疑問。ただ、西田幾多郎に関する解釈は教えられた。私には難解で、もっと嚙み砕いた記述であってほしい。


角田光代「さがしもの」新潮文庫 2010年

ラジオが好きで、よく聞いている。ある夜、ラジオからやや硬質な女性アナの声が聞こえてきた。聞き終わって、題名は「さがしもの」だとわかった。病床の祖母に依頼された本を探す孫娘の物語だった。印象的だったので、図書館から借用してみると、短編集。いずれも本が鍵になっていて、著者の達者ぶりに感嘆。表題作以外で面白かったのは「ミツザワ書店」。


吉田健一「55年体制の実相と政治改革以降 元参議院議員・平野貞夫氏に聞く」」花伝社 2021年

長く衆議院事務局幹部を務め、議会運営を陰で取り仕切り、参議院議員に転じて小沢一郎の懐刀だった平野貞夫の聞き語り。戦後政治の裏表を知り尽くした、いわば政界の生き字引の話は興味が尽きない。55年体制とは裏を返すと自民党と社会党の実質的な連立政治であったとか、吉田茂は岸信介を評価していなかったとか、民主党政権を潰した真実は等、政治の一寸先は闇だと思わさせられる。政治改革の理想とかけ離れた、その実態に虚しさを覚える。人物評は辛辣。中曽根以降の新自由主義の横行と、政治家の劣化への嘆きには共感する。保守本流を自認して、9条堅持を主張する。




コロナ禍はやや沈静化のようです。でも油断大敵、ウイルスはそれほどやわではないはず。注意おさおさ怠りなく。


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