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「200字の書評」(341) 2023.4.25



こんにちは。

真夏のような日差しの後は冷たい風が吹く、この時期は何と不安定なのでしょうか。ツツジが満開です。次々と咲いてくれる花と木々の葉先の微妙な変化に、季節の移ろいを感じます。田圃には満々と水が湛えられ、田植えの準備は整いつつあります。食料自給率の低い我が国、せめてお米くらいは不自由しないよう願うばかりです。それにしても、ここ数日の肌寒さには困惑します。

さて、今回の書評はウクライナ戦争に触発されて、ロシアの軍事について探ってみました。なお、著者については評価が相半ばしています。物事は見る側によって、黒くも白くも見えます。




小泉悠「現代ロシアの軍事戦略」ちくま新書 2021年

帝政ロシア、旧ソ連いずれも軍事大国であり一方の旗頭であった。かつての栄光を回復し国際的な権威を高めようとしているのか、核大国であるプーチンのロシアは何処に向かうのか。その意図を軍事思想と作戦行動、兵員兵器、配置などから詳細に分析している。シリアとウクライナでの行動など侮りがたい軍事力と、弱点すら読み解く。 筆者は軍事オタクでもあり、緻密な情報収集観察と同時に独自のこだわりも感じられる。




【卯月雑感】


▼ 政府は学術会議会員選考に関する法律の改正案提案を断念しました。学問研究の世界への政治からの介入はあってはならないことです。スガは6人の任命を拒否し、明確な説明は不能なままです。戦前の教訓から独立性が保障されているのが趣旨です。今回の改正(改悪)に関して国際アカデミーから憂慮の念が示され、著名なノーベル賞学者からの反対声明もされています。今回は見送ったようですが、まだ危険は去りません、注視していかねばなりません。


▼ 一方では入管法の改正案は国会に上程されました。入管行政の非人道性は報じられている通り、あまりにも残虐非道です。難民、避難民の人権は尊重されるべきです。この人権無視の乱暴な措置はいずれ国民にも跳ね返ってきます。人口が減少し労働力不足が顕在化している我が国では、外国人が住み働きやすい環境を整えなければなりません。鎖国状態です。人権後進国であってはいけません。


▼ 統一地方選挙、盛り上がりを欠いているのが実感。古巣の市での県議選、立候補者は前任者の息子一人のみ。無投票当選。衆院選でのこの地区の当選者も前職の息子。世襲のオンパレードではしらけてしまう。地方自治ならぬ痴呆自治か。投票率の低下は深刻で、主権者の意思は示しにくくなっています。現状への漠たる不満はエセ野党への投票行動となり、いずれ深刻なモラル低下を招くのでは?などと思う昨今です。




<今週の本棚>


内田樹/姜尚中「世界『最終』戦争論―近代の終焉を超えて」集英社新書 2016年

両者とも現代の碩学であり発言者であると思っている。その二人の対談が面白くないはずはない。丁々発止、深く浅く現代が切り開かれていく。この社会の脆弱性と崩壊への危機感がにじむ。


以下は再読編
ある本を読んでいると、以前読んだ本と著者が何故か思い出され読み返したくなる。読み直すと、以前は理解が浅く、読んだうちに入っていないことがわかる。読み取る力の不足を感じる。1度目とは別な世界がそこにはあった。


池内了「宇宙論と神」岩波新書 2014年

ハイノー・ファルケ「暗闇のなかの光」で筆者が最後に神を感じる姿に、科学における真理追及と人間心理の複雑さに不可解なものを感じた。研究し探求が進めば進むほど真理への道程の遼遠さに、何か渇望があるのだろうか。


中島岳志「保守のヒント」中公文庫 2018年

同「テロルの原点」を読み、右傾化する現代の背景には何があるのだろうかと疑問が深まる。保守を自認する著者の思想を確認したくて手に取った。いわゆる右派は右翼と保守に分類され、保守とは漸進的改革によって秩序の維持と安定を図る立場であるとする。従ってアベらは保守とは別物であろう。


網野善彦/鶴見俊輔「歴史の話」朝日選書 2004年

青木真平「手づくりのアジール」に触発されて、中世社会史に一石を投じた網野の歴史観に触れたくなった。丁度プラグマティズムを日本に紹介したリベラルな哲学者の鶴見との対談本が本棚で目についた。日本人の意味、中世の悪党、天皇制という表現などについて次々と展開される対話は刺激的だった。




★徘徊老人日誌★


4月某日 黄砂襲来、ベランダの手すりを拭くと黄色になった。花粉は峠を越したのに、今度は海を越えての大迷惑。


4月某日 所用のため那須高原までドライブ。久しぶりの遠出、以前の高性能車とは違うのでひたすらのんびりと。那須塩原市図書館を見学。新築の広々とした空間をぜいたくに使った新思考の建物。デザインは奇抜で、木製書架がが吹き抜けの天井まで届くインテリアとして空間を仕切っていた。窓口は各階(2階建て)に1か所、検索機も各1個、貸し出し返却は機械化され、職員との会話は不必要な考えかもしれない。蔵書は貧弱。もちろん指定管理でありました。いずこも吹く風は同じ匂いがしている。図書館というよりも街中の○○広場と言った感じ。


4月某日 身近なところに異変発生。やはり未来予知はできない。


4月某日 まるで真夏のような日があり、次には冷たい北風。春に三日の晴れはなし。




日替わりの天気です。コロナ感染者も増加傾向。5類に移行しても、ウイルスは依然として漂っています。ご油断めさるな。


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