日々は「たまには」の連続―【アンコンシャス35→80】黛冬優子
各コミュのあらすじをまとめたあと、各コミュタイトルの意味を考察し、最後に「アンコンシャス35→80」の意味を考察します。
冷えらる気
寝違えて元気がない冬優子。プロデューサーはごはんに連れて行ったり、仕事のことを褒めたり、お店の装飾の話をしたりしてどうにか冬優子の気を紛らわせようとするが、ことごとく失敗する。
そんな不器用なプロデューサーを見てため息をつきつつも、少しほっこりする冬優子だった。
メタ///コンポジション
新しいアクセに気付かなかったのを挽回するため、冬優子のいい写真を撮ろうとするプロデューサー。なかなか構図が決まらず、撮ってみたものの冬優子にダメ出しされる。
「どういうふうに見せたいのか、その構図にする必然性を考えたほうがいいんじゃない?」
悩むプロデューサーを見かねて冬優子がお手本を見せようと手を伸ばすと、プロデューサーが誤って連写してしまう。そこには驚いた顔の冬優子がダイナミックかつバランスの取れた構図で写っていた。
温室
冬優子がプロデューサーに会いに事務所に来るが、見当たらない。事務所の様子からすると、どこかにはいるようだ。ひととおり回っていると、倉庫から音が。プロデューサーは倉庫でストーブをつけていた。灯油くさ、と言いながらストーブに近寄っていく。あったかい。
「どうした?」
何も言っていないのに、何かあったことを察してる。
冬優子は否定はしないが、何も言わない。
その様子を見たプロデューサーも、それ以上は聞かない。
「……たまにはいいよな、こういうのも」
「……たまにはね」
各コミュタイトル考察
「冷えらる気」
「冷えらる気」は冬優子の気分が冷えてることと、アイドルとプロデューサーの上下関係を表すヒエラルキーをかけているのだと思います。
上下関係っていっても、アイドルの気分が落ち込んでるときはプロデューサーが励まさないとね、くらいの感じ。
「メタ///コンポジション」
メタ(meta)は「高次の」、コンポジション(composition)は「構図」。冬優子が「必然性」という言葉を出していますが、そういう「ファンには自然に見えるけど考え抜かれた構図」を作るという冬優子の在り方、自分の見せ方を表した言葉ではないかと思います。
「///」3本スラッシュは不意に撮られた写真に恥ずかしがる冬優子を表しているのか、もしくは「メタ」と「コンポジション」の間の仕切り、ファンに「メタ」を気付かせない鉄壁の壁を表しているのか。
「温室」
温室はそのままあったかい部屋。でもそこは倉庫という283プロの事務所の中でもっとも寒そうな場所です。ストーブのあったかさと、言わなくても伝わることのあったかさが一層強調されます。
「アンコンシャス35→80」とは?
まず、35→80はカメラの焦点距離のことだと思われます。調べたところカメラの焦点距離は35mmー80mmのものが多いとのこと。35→80は35mmから80mmとズームアップしていることを表しています。
アンコンシャスは「無意識の」。
つまり「アンコンシャス35→80」は、「無意識的なズームアップ」という意味になります。
コミュを振り返ってみると、3つのコミュにストーリー的な繋がりはありませんが、プロデューサーの冬優子に対する理解度について、3様のシチュエーションが取り上げられました。
「冷えらる気」では冬優子を励まそうとするも空回り。
「メタ///コンポジション」では冬優子が納得する構図に苦戦しましたが、偶然いい構図で撮ること(=価値観の共有)ができた。
「温室」では、冬優子が何も言わなくても、何かあったことを察して、冬優子の気持ちに自然に寄り添う。
理解度という観点でみると、だんだんにそれが上がっているのがわかります。
この様子をカメラのズームにたとえたのが、「35→80」なのだと思います。
一方これは月日の経過を表してはいません。冬優子の私服が同じなので、3つとも同時期のエピソードです。
理解度が月日とともに上がっていく、という話ではなく。
ふゆ心が全然わかってないときもあれば、アクセに気付けないときもあり、たまたま上手くいくときもあるけど、大事なときには必ず気付いて気持ちにそっと寄り添ってくれる。
意識的に接し方を変えてるわけではなく、無意識に。
冬優子から見たプロデューサーはそういう人。
それが、「アンコンシャス35→80」なんだと思います。