お母さんが笑うから
--- 私的忘備録 --- (以前に某SNSで書いた記事のリメイク?再掲)
私は小さい頃からレモンが大好きで、レモン味のなんとか〜だけじゃ物足りなくて、コロッケとか頼んだ時についてくるカットレモンなんかは絞らないで果肉を丸かじりして食べるようになってた。
息子が3〜4歳の頃、当時の私は離婚して息子と二人の生活をしてた。職場の仲の良い友達と近くの居酒屋によくご飯を食べに行ったりしてて、そんな時いつも息子は私が食べようとしたレモンを欲しがった。
「え、食べるの?すっぱいんだよ??」って言いながら口に入れてやると、予想通り「すっぱーい!!」って目も口も寄せれるとこが全部寄ったようなしわくちゃな顔になる。それが可愛くて面白くて大笑いする私と友達。ゲラゲラ笑ってた。
「美味しい?」って聞いても返事がないぐらいの酸っぱさなのに、毎回毎回、必ず欲しがって私は大爆笑する、を繰り返してた。
そんな息子も成長して高校に無事合格した時、お祝いで「いつもよりも高いけど美味しい焼き肉食べよう!」と行ったお店でお肉のお皿に乗っていたカットレモンを見て「そういえば…」と酸っぱい顔をしていた息子を思い出し、何気なく当時の事を覚えてるのか聞いてみた。だいぶ小さかった頃だし、まぁ覚えてないよなぁきっと…と思いながら。
「…覚えてるよ」
クールで口数少ない息子から想定外の返事が返ってきた。
(へぇあんなこと覚えてるんだ、意外だなぁ。そんなに印象深かったのかなぁ)
続けて、「あんなに酸っぱいのになんでいつも食べたがったの?レモン美味しかった??笑」軽くからかい気味に尋ねる私に淡々と返ってきた言葉に私は固まった。
「だって、あれ。お母さんが笑うから。」
時が止まった。何か言いたくても何も返事ができなかった。旦那も息子も黙々と焼き肉を食べて、まるで何も会話がなかったかのように。何も聞いていないかのように。
その当時は「子供を食べさせなきゃ。育てなきゃ。二人の生活をなんとか守っていかなきゃ。親の勝手で母子2人の生活にしてしまった息子を守らなくちゃ!!」って必死になってた頃。
けれどまだ当時小さかった息子も彼なりに一生懸命だったんだ。一生懸命にしわくちゃな顔をして母を笑わせてたんだ。
胸の奥になにかが刺さったような胸の中身を鷲掴みにされたような感覚。
その後も一生懸命な息子の気持ちを感じるコトはいろんな場面で多々あったけれど、成長してすっかり落ち着いてきた頃にこの言葉はあまりにも不意打ちで、私はすっかり言葉を失ってしまって
「…そっか」って下を向いてまた肉を網に乗せ出すことしかできなかった。
例えば眉間にシワが寄ってる私の顔を見ると、真剣な顔をして小さな手で左右にシワを伸ばそうとする。その仕草が可愛くてわざとシワを寄せたりとかしていたのだけど。
子供は本当に親の顔や雰囲気をよく見ていて、当時私にはきっと笑顔が少なかったのだろう。難しい顔をしている事が多かったのだろう。それを見てあの小さな手で小さな胸で彼なりに一生懸命だったことを思うと胸が痛い。
それをただ「可愛い」なんて思っていてごめんね。
心の中は色んな気持ちでいっぱいだったんだな、と思う。
私には出来たとても優しい息子で。この子がいたから私も生きて来れた。今は仕事やら友達の付き合いやらで忙しい日々でやんちゃもするけれど、だけどそれでも母に気遣ってくれてるのがよくわかる。
支えて支えられて、育てただけじゃなくて私も育てられてきた。息子に感謝。あなたのおかげでお母さんも幸せだよ。