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連載小説『イケおじホストの恋愛と結婚』

 ◇◇◇◇◇◇ミチとの遭遇◇◇◇◇◇◇

 その女と初めて出逢ったのは6月の小雨模様の肌寒い、午後9時を回った頃だった。
 彼女は職場の同僚に連れて来られたようだったが、着古した薄手のコートの下にピンクの花柄のワンピースを着ていた。歳の頃は三十代半ばだろうか決して美人ではないが、愛嬌のある顔をしている。芸能人ならば、そうだな、いきものがかりの吉岡聖恵に似ていた。

 オレの名は陽人。ハルトと呼ばれている。もちろん源氏名だ。ホストになってかれこれ十年。来年還暦を迎えるから相当なロートルだ。バツイチ。子供は女の子ひとりいるが、別れた女房が引き取っている。親父ホストていうわけだ。歌舞伎町でも最古参最年長だろうなぁ。
このロートル親父と、ミチ(美智子)が出会ってしまったんだから、これは運命だろう。うん、運命や。運命に決まってる。ベートーヴェンも真っ青さ。

 ミチに話を戻そう。彼女もバツイチ。看護師の仕事で小五の息子を養っている。何を血迷ったんだか、オレを指名しちまったんだから、初心者は恐ろしいや。笑。

この狼とお姫様がどのように付き合い、結婚しちまったか、続きが知りたいかい?おいおい語っていこう。

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