孤高のバーテンダー 2
まさか、この男が恵子の父親?この世にそんな奇跡みたいな事があるだろうか?
僕は男に、「何か軽食でもお作りしましょうか?」と訊いた。
男はカバンからタバコを取り出すと、「そうだな。そう言うば、昼メシからなにも食べていなかった」と言った。
僕は恵子に目配せすると、恵子に奥に行かせた。
男に、「焼きうどんをお作りします。それで、失踪されたのはいつ頃なのでしょうか?」て訊くと、「もう、かれこれ20年前ですかね。子供らも成人しているでしょうね」
年代は合っている。恵子は今年26のはずだから。
ほかの客がやって来た。常連のご夫婦だ。「いらっしゃいませ、加藤様、お久しぶりでございます」僕はこちらの客の接待に移った。
男はタバコに火をつけ、スマホを取り出すと、熱心に検索しているようだ。
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