#061「if i stay」
小説や映画の何が特別かって、そこに自分が登場しないことだと思う。
その90分や120分や260Pは、自分を見なくて済むし、自分が存在していない世界がちゃんとあることを見ることが出来る。考える間でも無く、全ての人が自身と生きて、私の世界は私の中にしか無いんだけど。
で、この映画は、家族と共に事故に遭ってしまった主人公が昏睡状態のまま、亡霊の様に身体から離脱した状態で病院の中に居て、自分の人生を振り返っていく物語。
家族や友人や恋人に恵まれていて、自身は音楽の才能にも恵まれていて、人生の選択に悩んだりする。とても普通で特別な、希望ある人生だ。
映画的には、非常にオーソドックスでひねりの無いお話なんだけど。
で、映画の終わりの瞬間が素晴らしくて(やっぱり終わり方至上主義)、その人生に戻ってくる感じとか、自分の目で世界を見る瞬間とか、音の使い方とかが素晴らしくて、エンドロールが始まった瞬間に、物語と自分の人生の境目をはっきりと見ることが出来る。
頑張って言語化してみると、身体がふわっとなって、視界がわーっと遠くに広がったものがぎゅーっと還ってきて、自分の中に小さく焦点を結ぶ。
という感じ。
物語の終わりはだいたいそうなんだけど、その物語と自分との境目に居られる時間が濃密で、ほんの少しだけ長い映画です(なんだそれ)。
久しぶりに良いエンディング体験が出来て、嬉しい。