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#059「プラネタリウム」

戦争が起こることって、どういうことなのだろうかといつも思う。
誰も殺し合うことを望んで居ないのに、そっちへ行きたくはないのに、ただただ流されていくだけの様に思う。誰がその流れを作った訳でもないはずなんだけど。
こんな時にだけ運命という言葉を使うのは狡いと思うけれど、抗えない流れは、運命なのだろうか。流れの中では、それも見えない。

そしてこれは、戦争映画だと思った。
二人の美しい姉妹とその周りにあるものたちが、時代と一緒に静かに戦争に飲み込まれていく。
映画本編は、とにかく掴み所のない、はっきりとした結論の出ないぼんやりとしたストーリーで、それぞれのエピソードも登場人物も、はっきりとしたことは描かれなくて、終始微妙な気持ち悪さがある。

ナタリー・ポートマンと、リリー=ローズ・デップの姉妹は、妹の霊能力を使って降霊術のショーで旅をし、二人きりで生きている。どんなものであっても、それが霊能力であっても、自らの才能をで生きてくことは強くて眩しい。それに、圧倒的に美しい。
二人に興味を持った映画プロデューサーとの出会いで、彼らの人生が狂い始める。ということなのだろうけど、それよりももっと大きな流れに飲み込まれている様に見えて、最後までそれが何なのか分からなくて、気持ち悪さが残る。ストーリーが明らかにならない気持ち悪さかと思ったけれど、そうじゃない。
姉妹が生み出しているうねりの様なもの。それは、殆ど見えないものだけれど、それらが増幅した時の、眩しいくらいのきらめきや、どうすることも出来ない絶望が映し出された映画だったのかもしれない。

本当は、二人でささやかに目立たず旅を続けて居られたら、彼女たちはもっと違う人生を生きたかもしれないけれど、自らが強い光を放っていると、暗い場所では良くも悪くも目立ってしまう。
その光に惹かれて巻き込まれた人もまた、陰りゆく時代の中で目をそらすことの出来ない光を見たことは、運命だったのだろうか。


ポスタービジュアルがとても好きだったのだけれど、シーンとしては使われていなくて、あーとても残念。と、鑑賞中に思ったけれど、あれも散らばめられた光のひとつなのだなと思う。今は。