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#093 「ウーマン・トーキング」

この時期、女性の権利や、女性が虐げられてきた歴史などについての映画が多かった気がする。様々な表現で、色々な角度から掬い上げられていた、女性たちの声の一本。

大きな、思い切った決断をする時に、信仰というのは力を発揮するのかなと思った。断腸の思いで。という程の状況は、日常的には起こらないけれど、勇気を持って団結して超えなくてはいけない場面で、彼女たちは聖書の一節や歌や、言葉で鼓舞されていく。女性が文字が読めない村では全てが口伝えなので、誰かが紡げばみんなそれを言える。
宗教によって侵害されて、宗教によって不自由で、でも、頼るところも宗教で、男たちに痛めつけられてきた彼女たちが、神を指して「father」と歌うことを、とても切ないと思った。

女性と一言で括るには、余りにも様々な立場があり、世代にも信仰にも、ジェンダーにもグラデーションがあって、皆で一つの答えを出すのは難しい。それでも、怒っても泣いても、寄り添って子供達の未来のためにみんなで決断する姿は勇ましかった。
沢山のシーンの沢山の台詞が、闘うということ、愛や平和について問いかけてくる。

最後に銃を手渡されるところを、暴力に帰着しないで欲しいというレビューを見たけれど、私は、男性が銃を手渡し、女性がテキストを置いていくという対比に、価値が混ざり合う様な、細く繋がる希望を感じた。
男性が銃を持ち、女性が話し合いのテキストを携えて出て行っては分断が深まるだけだ。
一人残るベン・ウィショーの気持ちを考えると、余りに過酷で、彼の立場で泣いた。彼が銃を手放すのもまた、彼女たちの僅かな希望と繋がっていく覚悟の表れだと思う。