#043「ジュリー&ジュリア」
1960年代にフランス料理を英語版で出版した料理研究家ジュリアと、現代でその524のレシピを1年で作るブログを書いたジュリーの物語。
基本、お料理の映画は元気が出るし、ポジティブなエネルギーに満ちていて、話の内容とか、時代の描き方とか、なんか色々あったんだけれど、もうとにかく何もかもがチャーミングに覆われていて、チャーミングで圧死。
ジュリーもジュリアも素直で、一生懸命で、元気で、でもプンスカ怒ったり失敗して落ち込んだりしているんだけれど、全部がポジティブ。
そして、その二人の夫が素晴らしくて、爛漫な妻に振り回されたりもするんだけれど、ずっと温かく見守っていて、どんな時も君の味方で、励まして、一緒に共有しようとする。まぁ愛情表現は日本向きではないけれど、でも、これが器か。と思う。
でかい。もう、何でも煮込めるし、オーブンもレンジもがんがん行ける器。
その上、決して割れない。その凄く愛情深い器でチャーミングを煮込むのですよ(なんだそれ)。
とにかく、この夫にしてこの妻だし、この妻にしてこの夫よね。と、納得。
価値感の違いとか、男女の根本的な分かり合えなさとか、そんなの当たり前じゃない。
女は集まればキャーキャー騒がしいし、したたかで、結局逞しい。
男は直ぐに決めつけたりプライドを振りかざしたりするくせに、軟弱だ。
そんなの100年前から変わらないのだから、気にしないで笑顔で軽々と流す。そんなつまらないことはどうでも良いから、私達の家を楽しみましょう。という二人になりたい(切実に)。素敵なご夫婦のハッピーでポジティブなシーンの連続が、思いの外えぐってくる。ストーリーの本筋も、チクッと刺してくる部分があって、笑顔の彼女たちのものすごい執念と努力は、語らなくても充分。
結果、足りないのはチャーミング。
私が男でも、どうせ煮込むならチャーミングよ。