#077 「さざなみ」
原題は「45years」。45年連れ添った夫婦の話。
45年の結婚生活を送り、70歳を越えた夫の遠い過去の女の訃報に、そんなにも心乱されるものかしら。と思っていたけれど、年老いていくということは、選択すべきことが無くなっていくということなのだ。
それは、とても気楽で安らかなことではあるけれど、今、目の前にある限られたものたちのウエイトが肥大していくことでもある。
今日の食事や、来週のパーティーの約束。夫の存在。さっき言われた嫌味。
とても重大で重要で、他の何かで紛らわせたり時間が解決したりしてくれない。
そこに飛び込んでくる、20代に雪山の事故で無くなった夫の恋人の遺体が見つかったという連絡。人生の中にずっと引っかかっていたであろう、彼女に纏わる知らせは、全てのトピックスを吹っ飛ばして最優先事項になってしまう。
一日中彼女のことを考える夫。考えるだけじゃ無くて、妻にべらべら喋る。
(聞いてくれるとなると、本当に何でも喋るよね。程度ってもんがあるでしょうよ。とか私でも思った。)
一時のことだと分かっていても、心乱されてしまう妻。
そして、常に一緒に時間を過ごしている夫婦は、些細な変化が目に付くし、見過ごせなくなる。
誰にだって過去はあるし、そんな昔のことにこだわっても仕方ない。一緒に過ごしてきた日々が全てじゃないか。今こうして目の前で、愛と感謝を伝えてくれる夫が居て、それを祝福してくれる友人・知人に囲まれている。幸せじゃないか。
でも。でも!!!!
シャーロット・ランプリングの演技って何とも似ていない。感情が大きく表情に出ないのに、どうして心情が手に取れるのだろう。本当に不思議。
ラストのダンスシーンの照明の演出がとても良かった。