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源氏物語 二次創作「黄昏に見る夢」 9

源氏物語 二次創作「黄昏に見る夢」 9


こんばんは。^^
ご愛読を誠にありがとうございます!
更新が大変遅くなってしまって、誠に申し訳ございません。(;_;)
完結まで更新できるよう、頑張ります。(;人;)

これからも、楽しんでご覧いただけるよう、更新を頑張ります。よろしくお願い申し上げます。^^

学生の時に、源氏物語を題材に書いた小説を再編いたしました。
源氏物語では「紫の上」が特に取り上げられるヒロインですが、
私は、光源氏の最初の本妻、「葵の上」の魅力に惹かれています。
この二次創作の小説は、光源氏と葵の上との間に生まれた息子、「夕霧」を主人公に、「家族の想い」をテーマに、書きました。
……原文の光源氏・夕霧より、大分「オッサン」なのでご注意下さい(汗)。
楽しんでご覧いただけると、大変嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。^^


赤城 春輔






「黄昏に見る夢」 9







 夕霧は、ふと、父の言葉に再び母屋の空間が沈んでしまったことに気付いて、慌てて言葉を紡いだ。
 「 そっ、そう言えば! この後、父上は何をなされたのでしょうか? おそらく次は、その情景に移り行くのではないかと……! 」
 すると、母を見つめる父の横顔に、夕霧は、思わず絶句してしまった。
父は、目を大きく見開き、口を開けたまま、恐ろしく顔を青ざめさせていた。両腕を抱える二つの手が、酷く震えている。
 「 父上! 」
 夕霧は大変驚いたが、父の尋常ではないその態度に、不意にある事を思い出して、背筋へ一気に鳥肌を立たせた。

 ー この後、父上は、のちに本妻の二人目となるかの姫君様を、初めて二条院へと受け入れたのだ! ー

当時、本妻であられた母上が、その噂を周りの女房達からお聞きになった時には、どれほど苦しくて、寂しくて、悲しくて、虚しくて、辛くて……父上をお想いになった事であろう!
 その父上は……、昔からずっと母上のもとから離れて疎遠なさって、……その上に、他の姫君様達のもとへと、去っていかれたのだから。
その事で、母上の、父上に対する想いの刀傷は深奥に、心底にまで達して、心が乱れ狂うほど、荒れられ たに違いない。その母上の哀しく切ないお恨みを、もし、目の前で背を向けていらっしゃる母上が自分達にお見せになり、お伝えになりたかった事なのならば、この母屋は、母上の自分達に対する呪いの現れなのであろうか。

 夕霧は不安げに、父の酷く震える様相を見つめて、父上もおそらく、母上の恨み思われるお気持ちを察しなさったのだろうと、同情した。
 しかし、それでも、やはり妻から恨み呪われるということは、いくらなんでも悲しくて辛くて、また母上にも、人を恨み呪われるようにはなられないでほしいし、そういった人と思われてもほしくない。

幸せになってほしい。

 思いながら、母の後ろ姿を見つめた。
 信じたくない。
 
 
 すると、
 
 突として、
 母屋の暗い空間に、女性の儚い声が響いた。

 ― 悲しい。 ―

 夕霧は、母の声だと気付いて、その空間を見渡した。再び、母の後ろ背に見止める。
 
 ― 寂しい。 ―
 
 また、響いた。
 
 ( 母上の、自分達にお伝えになりたい御心の声だろうか。 )
 
 刹那に、
 何故か、ここに立っているのが酷く息苦しくなってきて、
 父と同様、恐る恐る両腕を抱えて、前かがみになっていく。
  
 渇いていく目を強く瞑り、胸が非常に締め付けられて、
 生きている心地が全くしない。
 
 強く握られた掌に、嫌な汗が滲み出す。動悸も酷く早くなる。
 
 息を吸うことさえ忘れて、立っていられない……!
  ……涙が出た。
 
 
 
 ― 辛い。 ―





続きます。












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