源氏物語 二次創作「黄昏に見る夢」 5
こんばんは。^^
ご愛読を誠にありがとうございます! 楽しんでご覧いただけるよう、更新を頑張ります。^^
学生の時に、源氏物語を題材に書いた小説を再編いたしました。
源氏物語では「紫の上」が特に取り上げられるヒロインですが、
私は、光源氏の最初の本妻、「葵の上」の魅力に惹かれています。
この二次創作の小説は、光源氏と葵の上との間に生まれた息子、「夕霧」を主人公に、「家族の想い」をテーマに、書きました。
……原文の光源氏・夕霧より、大分「オッサン」なのでご注意下さい(汗)。
楽しんでご覧いただけると、大変嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。^^
赤城 春輔
「黄昏に見る夢」 5
「 大臣、いくら向こうの方々が気付かれていないと言っても、やはり、この行動は道理に合いません。早くここから出ましょう。 」
否、自分自身が、この場にいる事を道理に合わず、恥ずかしく思っているだけなのかもしれない。
心より片手が先に父の肩を掴み、引き寄せようとする。
しかし、父は、無言で夕霧の手首を掴み返し、驚いた夕霧を静かに制した。
女房達の中央で顔をふさぎ込む女性が、泣きじゃくりながら嘆いた。
「 私は、あのお方と共に、黄昏の光を眺めていたく存じておりました。しかし、あのお方は、黄昏の光よりも煌めかれて……。私は、あのお方の隣に座れます程、良き者ではございません。 」
夕霧は、静かに、その女性の方へ向いた。
この女性も父上に対して、ずっと辛く悲しまれ、想い悩んで来られたのだろう……。
しかし、この女性の言葉には、父を取り巻く他の女性達の恨み事とは少し違うような気もした。
女房の一人が、女性を慰めるように、一言一言丁寧に言葉をかける。
「 お泣きにならないで下さい、姫君様。仮初(かりそめ)の恋ならまだしも、姫君様は、あのお方のお隣に、ご立派にいられるお方ではございませんか。 」
けれども、女性は、まだ両手で顔をふさぎ込んで、すすり泣く。他の女房の一人が、女性の悲しむ様子を見兼ねて、彼女に身を乗り出して、こう諭した。
「 姫君様がどれだけ想い続けていられても、いつまでも、そうやって似つかわしくなく恥ずかしいと思われて、内にばかりいらしては、結局は何にもなりません。
姫君様なら、大丈夫です。姫君様の本当のお気持ちを、あのお方にお伝えしてみてはいかがでしょう。 」
すると、女性は、女房のしっかりした言葉を聞くと少し落ち着いて、安心して泣き止んだ。夕霧も、その女房の言葉に心が大変落ち着いて、父の袖から手をそっと放した。
女性が言った。
「 ……しかし、私の想いをあのお方にお伝えしましたところで、私はあのお方の心がわからず、そして…… 」
そう言って、さらに掌に顔を埋めた。女房達は顔を見合わせて、困り果ててしまう。
夕霧は、彼女達の様子を後ろで静かに見ながら、肘で軽く、父を小突いた。
それに父は気付いて、夕霧を横目で見てみた。
― 夕霧の顔が……!? ―
「 いやあ、駄目じゃないですか、父上。全く、罪ばかり作っていらっしゃるのですから。 」
何故か夕霧は、自分でも大変おかしく思える程に、心と口が軽く、何でも声に出してしまう。父は、夕霧の突然の言葉に、彼の方を向いて、驚いた。
「 ……は? 」
夕霧も父の方を向いて、笑いながら、さらに肘で小突いた。
「 仮初の恋ばかりしていらしては、姫君様達を悲しませになられるだけですよ。 」
もう、自分を自分で止める事が出来ない。
父は口を開けたまま、自分に笑いかけてくる夕霧を見て、そして、不思議そうに応えた。
「 …… 夕霧、あのお方は、お前の母上だぞ? 」
続きます。