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源氏物語 二次創作「黄昏に見る夢」 8
こんばんは。^^
ご愛読を誠にありがとうございます!
更新が大変遅くなってしまって、誠に申し訳ございません。(;_;)
完結まで更新できるよう、頑張ります。(;人;)
ベトナム旅行から何とか復帰しました。( ;Д;)
これからも、楽しんでご覧いただけるよう、更新を頑張ります。よろしくお願い申し上げます。^^
学生の時に、源氏物語を題材に書いた小説を再編いたしました。
源氏物語では「紫の上」が特に取り上げられるヒロインですが、
私は、光源氏の最初の本妻、「葵の上」の魅力に惹かれています。
この二次創作の小説は、光源氏と葵の上との間に生まれた息子、「夕霧」を主人公に、「家族の想い」をテーマに、書きました。
……原文の光源氏・夕霧より、大分「オッサン」なのでご注意下さい(汗)。
楽しんでご覧いただけると、大変嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。^^
赤城 春輔
「黄昏に見る夢」 8
夕霧と父は、先程と同じ母屋の中に立っていたものの、そこは夜の静かな帳が降りていた。女房達の姿は一人も見えず、ただ、中央の座に、こちらへ背を向けて座している母と、その隣に源氏が不服そうな顔つきをして、座していた。母は、整えられた、長く清らかな黒髪しか見えず、やはり、顔は分からない。
夕霧はふと、目の前の二人が夫婦らしく見えず、何故か、よそよそしさを感じとった。
母は、ただ絵に描いたような姫君のごとく、ただ静かに据えていて、身動き一つにしても堅く麗しかった。源氏は、暫くどこかの山道の景色について語っていたが、母は、何の返事もせずに、ただ黙っていた。源氏は、その様子に少し困ったという顔をして、
「 時々は、世の常にあるご様子を見たいのです。堪え難く患っていましたことを、『どうか』とだけでも問うて下さらないのは、珍しくないことと言えど、やはり、恨めしい……。 」
と、問う。すると母は、
「 『とわない』とは、辛いものでしょう。」
とだけ、応えた。源氏は少し恥ずかしそうな顔つきになって、視線を反らす。
夕霧は二人の様子を見て、状況の理解がなかなか出来なかった。対して、その隣に立つ父は、未だ、目の前の様子を見つめて怪訝な顔つ きをしている。
源氏は、目を合わせられずに、
「 ごく稀にしては、とんでもない御言でございますね。『訪わない』などという間柄では違うじゃございませんか。嘆かわしい仰りようですね……。
世と共につれない振る舞いを、『もしかしたら、思い直してくれる時もありましょうか』と、色々試み申している間に、いよいよ思い疎まれて……。まあ……、せめて『命さえ』……。 」
と遺して、そっと腰を上げて、帳台の中へ独り入ってしまった。母は、すぐにも入ろうとはしなかった。
夕霧は、「あっ、」と気付いた。
「 ああっ、父上が、確か十幾つかのお歳に、わらわ病(わらわやみ)にかかられた時のお話でございますね。 」
「 え? 」
父は、夕霧を見た。
夕霧は、父の方を向いて、人差し指を上に指し、得意げに語った。
「 三条院の女房達や、他の周りの方々からお聞きしたのですが、昔、父上が当時都で広まっていましたわらわ病に、『耐え難く患って』いられて、様々な修験者達に、まじないや加持祈祷(かじきとう)をおさせになった。しかし、何の効果も出なかった。
しかし、ある、北山の聖(ひじり)がその道に優れていられたという事で、聖のもとへ加持をお受けに行かれた時のお話でございます。それに、若かりし頃の父上のお姿から拝見しましても、おそらくその時期かと察しはつくのですが……。 」
手を下ろして、父から視線を外し、今ほどまで源氏と母が話し合っていた、今は一人のみ座す母の長い黒髪を静かに見つめた。
「……それに、先程、若かりし頃の父上が、母上にお話しになられたどこかの山道の景色のお話で、そこに出てきました山桜のあるご様子が、どうも北山の山桜のあり方に似ていたのです。そうですよね、父上……。 」
母の後ろ姿を見て、自分も同様に、悲しくなった。
父は、囁くように応えた。
「 あの時はな。 」
続きます。