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#23 社会人編 〜ゴロゴロの極意〜

私の基本的なスタンスは、めんどくさがりだ。

もちろん楽しいことや、やるべきことには時間は惜しまないのだが、それ以外に関しては、できるだけ省エネで生きたいと思っている。

そんなわけで、昔から今まで私は、勝手に“ゴロゴロする日“というものを作っている。

何もしないって何なんですかと聞かれそうだが、ひたすら“何もしないでゴロゴロする“、ただそれだけなのである。

以前友人に

「休みの日とか、何してるの?」

と聞かれたことがある。当然私は、

「何もしないで、ゴロゴロしているよ。」

と答えると、友人は

「分かる。休日ってやる気が起きなくて家でゴロゴロテレビ見たり、携帯いじったりしちゃうよね。」

と共感したわけだが、それはちょっと違う。

私の場合、“ゴロゴロしながら何かをする“のではなく、“本当にゴロゴロのみする“ことが重要なのだ。

お気に入りのソファの上で、ひたすらにだらけている、これがまた大変心地良い。

だから友人よ、共感してくれたことは嬉しいが、私の言っているゴロゴロは意味が違うのだ。

と、反論すると

「え、何もしないで転がっているだけ?変なの…」

と、そちら側から始まった質問なのに最終的に私が非難される、非常に納得のいかない感じになってしまった。

ここで私が声を大にして言いたいのは、ただひたすらにゴロゴロするというのは、簡単なようで実は難しいことだということだ。

まず、何より自分の周囲の環境を整えねばなるまい。

例えばせっかく心地良いポジションで寝っ転がることができたとしよう。やっとこれでゴロゴロできるよなんて思った時に、鼻をかみたくなったらどうする。

ティッシュをとればいいじゃないか、というだけだが、この時もしティッシュの場所が手の届くところになかったら、わざわざ絶好のポジションを捨てて、言うことの聞かない鼻のために移動しなくてはならないのだ。

何て鼻につくやつなんだろう。などと上手いこと言っているんだかわからないが、ともかくそういうことが起きてはならない、絶対に。

なので、ティッシュはもちろん、リモコン、ゴミ箱、携帯、充電器等、必要になりそうなものは手の届く範囲に持ってくることを怠らない。

だがここまでにしてもまだ油断ならない。次なる刺客として、宅配、ということが考えられる。

せっかく夢見心地でいても、

「ピンポーン」

なんて鳴らされた日には、夢→現実へ急転直下となる。

幸せからの不幸せはより堪えるのだ。

かの御隠居のドラマは“人生楽ありゃ苦もあるさ〜“

などとかなり渋めのテイストで揚々と歌っているが、私のゴロゴロでは楽ありゃ苦もあっちゃ困る。楽だけでいいのだ。

だから、

「ゴロゴロするぞ!」

と決めた日には絶対宅配の注文は入れないし、誰が来るか分からない時にはそもそもインターホンの音量を最小まで下げて、余計な音を排除するのだ。

さあ、ここまでやればもう安心だ。これ以上邪魔するものはなんもないだろう、と言いたいのだがもう一つだけある。

最後の刺客は何と自分の腹である。空腹はゴロゴロする上で最大の敵になり得るのだ。

仕事中や遊んでいる最中では、多少空腹でも他の何かに集中していればなんとなく気分が紛れるものだ。

しかしゴロゴロ中はひたすらだらけているだけなので、とにかく空腹が紛れることがない。そのうち、ゴロゴロよりも空腹に意識が支配され始めてしまったら、一貫の終わりである。

そう、最大の敵は自分なのだ。

カッコ良さそうなセリフだが、その内容はめちゃくちゃダサい、と言う自覚はある。

ともかく空腹に邪魔されないように、私はちょっとしたものをいつも近くに置いておくようにする。その際に飲み物を置くことも忘れない。

注意ポイントとしては、お茶やコーヒー系の飲み物ではお手洗いが近くなる恐れがあるので、あまりお勧めできない。

温度も温かすぎず冷たすぎず、常温くらいがちょうどいい。

ここまで不測の事態を想定したプランを立てて初めて、極上のゴロゴロが手に入るのだ。

結果的にそこから得られるもが何か、と聞かれてしまうの非常に困るのだが、強いて言えば、一番贅沢な時間の使い方なのかもしれない。

もしゴロゴロライフに興味がある方がいたらぜひやってみてほしい。意外とこれにハマることがないとは言い切れないのだ。

ちなみに以前私に休日の質問をした例の友人も、その後実践したらしい。

「ほんとに何もせずゴロゴロしてみたけど…いいね。」

となかなかの好感触だったので、少しずつ同士を増やしてみようかと思う。


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