#39 社会人編 〜雨の日の憂鬱〜
私は雨の日が嫌いだ。
自然とか農業とかの視点で見ると、雨も一概に悪いものではないことはわかっている。
しかし自分の心持ちとしては、やっぱり好きになれないというのが正直な所なのだ。
その理由は幾つかある。第一に気分が滅入る点だ。
私は、自他ともに認める怠け者である。できる限り何もしたくないと思っているタイプである。
そんな私でも晴れてさえいれば、
「ずっと室内は体に悪いよな。外出くらいはするか。」
という気持ちになる。
それが雨になるとどうだろうか。途端に、
「雨か〜、ちょっと外出はめんどくさいな。よし、今日は一日部屋に篭ろう!」
となるわけである。
ただの怠け者が、ものすごい怠け者にモデルチェンジしてしまう。
そんなことは自分の匙加減なのかもしれないが、雨の鬱々とした雰囲気は、私のやるきスイッチをOFFにするどころか、破壊しにかかってくるのだ。
第二に、余計な道具が必要な点だ。
昨今の時代の流れは、全てにおいて“小型化”だと思う。
そんな中雨具は、古くからその形は大きく変わっていない。
雨、というだけでもすでにめんどくさくなっているのに、身を守るために傘やら雨ガッパやらを持っていかなければならないのは、私にとってはマイナスポイントでしかないのだ。
子供の頃のように、新しい傘やカッパでルンルン気分になるのは、はるか昔の話なのである。
それでも傘が嫌なら差さなければ良い、という考えもあるかもしれない。
どうやら海外では、ちょっとやそっとの雨では傘なんかは差さないということを聞いたことがある。
聞いた感じ、それはなんだかおしゃれな気もしてくる。
しかし実際にそんな人がいたらどうだろう。
日本は割としっかり雨が降る国だと思う。そんな中、傘も差さずに歩いている人がいたら、私は正気を疑う。
日本中探しても雨の中傘も差さずに普通に出歩ける人というのは、テレビ撮影の俳優か傘を忘れた人か、はたまた本当に正気を失った人かのどれかだろう。
めんどくさがりの私とはいえ、正気を疑われるような真似は控えたい。
第三に、湿気が私の相性が最悪である点だ。
湿気というのは大変に厄介で、せっかく自宅で髪をセットしても、外の空気を浴びた瞬間に、くるくると曲がり始める。
自分の髪の毛が湿気に弱いと子供の頃は考えてこなかったが、大人になり多少なりとも自分の見た目にも気を使うようになってくると、非常に厄介な存在になってくる。
私の癖毛具合だと、たとえアイロンで真っ直ぐにしようとしても、ぴょんぴょん跳ねて寝起きのような髪型に逆戻りするし、ワックスを使って強制的に髪を流してもすぐに抵抗され、やがて反対に曲がり始める。
以前、いっそのことセットすることを諦めて職場に行ったことがある。
そこで同僚に、
「あれ、パーマでもかけたんですか?」
と聞かれたときは、衝撃だった。
私の癖毛はもはや美容院でかけるパーマレベルなのか。もしかしたらこのままの方が反対にオシャレなんじゃないかとさえ思い始める。
ただ本来のパーマはコントロールすることができる。だからおしゃれに決めることができる。美容師とは素晴らしい職業だ。
しかし、私のパーマの場合は基本的に操縦不能なのだ。
うまくいく可能性もあるのだが、大抵の場合はただの爆発ヘアーとなるのが、いいオチであろう。
そんなわけで、私は雨の日が嫌いなのだ。
この前は買い物に行かねばならないということで、大変重い腰をようやく上げて、薬局に出かけて行った。
なんだかんだで外出してしまえばこっちのもんだ、と自分を奮い立たせて買い物を終えるまではよかった。
しかしその帰り際、店を出て両手に買い物袋をぶら下げた状態で、私は盛大に滑った。
大人になってから、こんなに盛大にこけることがあるのだろうか、というくらい綺麗に転んだのだ。
よく漫画であるような効果音をつけるのなら、
「ツルーン」
といった感じである。
そして尻から見事に着地もとい強打した私は、人びとが往来する店の前で一人買った物をぶちまけながら、尻の痛みに悶絶することとなった。
恥ずかしいやら痛いやらで、とにかく早く帰りたいと思ったことはよく覚えている。
そして、帰る道中の車内で、転んで痛みかつ雨でビショビショになって尻をさすりながら、
「これだから雨は…」
と、より雨の日嫌いが深刻になるのだった。
これからも雨の日と私の間の攻防は続くだろう…そう考えるとより憂鬱な気持ちになる。
雨の日の素敵な過ごし方を知っている方がいたら、ぜひ教えて欲しい。
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