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はじめてのえくすとりーむきりょう


これはエクストリーム帰寮2021 Advent Calendar 2021の寄稿記事です。

ルールはかんたん.
車でどこかに拉致されて徒歩で帰って来るだけ.

財布なし 地図なし
防寒対策はしっかりしよう.

エクストリーム帰寮(@shiranbasho)


クレイジーな京都大学の、クレイジーな熊野寮の中で、最もファンタスティックでクレイジーなイベント、熊野寮祭が始まった!!!!!

その中でも群を抜いてクレイジーな企画!!!
言うなれば 𝒕𝒉𝒆 𝑪𝒓𝒂𝒛𝒊𝒆𝒔𝒕 𝑬𝒗𝒆𝒏𝒕!!!
それが「エクストリーム帰寮」!!!!!!!!!!!!

私はエクストリーム帰寮の存在だけは知っていましたが、去年の様子をTwitterでちらっと見たことがある程度でした。しかし熊野寮に入ったからにはエクストリーム帰寮をしなければなるまい。ということで、今回30kmで初参加してきました。その体験記をつらつらと語っていこうと思います。

詳しいルールはこちら

出発まで

いつものようにTwitterを開きながら現代文明IIを受講していたとき、あるツイートが飛び込んできた。

は????????今日???????????????

待て待てこんな過酷な企画は土日の間にやるもんじゃないのかとか、土曜のは準備と仮眠に充てるはずだったのにとか、授業で疲れた体のままで深夜徘徊させるのかとか、言いたいことは色々あったのですが、全て自分の勘違いに帰結するので、5限を終わらせて急いで準備をしました(焦っていたので自転車用ライトと飲み物を忘れた)。

服装は下からこんな感じ。気温は4℃でしたが、そこまで寒くは感じませんでした。むしろ手が冷たい。

・インナーシャツ
・半袖Tシャツ(6.2oz)
・ドライスウェットプルパーカ
・ウィンドブレーカー
・寮祭スタジャン(バーガンディ)
・反射タスキ(支給品)

(寮祭スタジャンはこれ。かっこいい)

ボトムスは黒スキニーの上からウィンドブレーカーのズボンを履いて行きました。

持ち物は非常用の小銭、モバイルバッテリー、ポケットティッシュ。
これ+飲み物があれば大丈夫だと思います。

22時にロビーに集合。50人規模の参加者でロビーは満員状態。
ソーシャルディスタンスの確保もままならないまま誓約書を提出し、ドライバーとのマッチングを待つ…はずでしたが異様な混雑のせいでなかなか受付が始まらない。

この時間で私はTwitterにZenlyを晒しました。位置情報を開示して恋人を監視する待ち合わせに使うアプリです。

参加者のツイートと実際の位置を見比べて「こいつ迷ってるぞwww」とか実況してくれたら面白いだろうなという考えです(あと何かあったときに位置の特定が容易になる)。
帰寮中に3人くらいからフォローリクエストが来ました。実際にTwitterで実況してくれたのは一人でしたが…

なんやかんやで受付が済んだのが22:20、そこからドライバーとマッチングし、ロビーで携帯食料を買い、熊野寮を出発したのは22:40頃でした。

一番下に映っている四角いプレーンのパンを詰めさせてもらいました。
ただ噛んでると口内の水分が持っていかれる。

そんなこんなで出発です。

車内

車内ではパンを食べたり眠ろうとしたりしました。
開催を土曜の夜だと勘違いしていたのでこの時点で少し寝不足気味なんですね。もちろん熟睡はできませんでしたが。

走行中はできるだけ案内標識などを見ないようにしようとはしていましたが(現在位置を推測できないようにするため)、大まかな方角はなんとなく分かる。
川端通を北上して岩倉のあたりから山道に入りました。

熊野寮から20kmの円。申請したコースは30kmだが、これは直線距離ではなく道のり。

貴船あたりの山中に降ろされるのかなとか、これで亀岡や大津だったら面白いなとか、そんなことを考えながらうつらうつらしていました。

ちなみになぜ30kmかというと、以前尼崎まで70km限界サイクリングをしたことがあったので、その半分以下なら大丈夫だろうという判断です。

実際、ドライバーとのマッチング用紙は、~30km、30km~50km、50km~の三段階に分けられていたので、初心者にはちょうど良い難易度だと思います。

1時間ほど経つと車は駅のような公民館のようなよく分からない建物の前で停まりました。私は同乗していた参加者の中では距離が一番短いので、ここが私の出発点というわけです。ずいぶん文明的だな。

正直山道に捨てられると思っていたので拍子抜けしました。

振り返ると車は他の参加者を乗せて行ってしまいました。私一人です。
とにもかくにも現在地を確認しないと始まらない。幸い施設なんだから施設名がどこかにあるはず。やけに強く吹き付ける風に違和感を覚えながらも施設名を見つけます。

道の駅びわ湖大橋米プラザ。

時刻は0時を回りました。
エクストリーム帰寮の開始です。

歩く

風が強いのは琵琶湖の目の前だからでした。

静まり返った道の駅で身に沁みる強風は死ぬ!こんな市街地で死ぬんか?

地図があります。

ロータリーから道伝いに脱出して幹線道路に合流します。

どうやらこの道路を西に進めば湖西道路に着くらしい。

湖西道路は確か南北の幹線道路のはずだ。浜大津まで南下して、山科から三条に抜ければいい。幸い逢坂越えは経験がある。帰寮プランが固まった。

余談ですが、上の画像を見て、今歩いている、琵琶湖大橋につながる道路が国道161号線だと勘違いしていました。実際はこの道は477号線で、161号線は湖西道路のほうです。

477号線を歩きます。

舐めくさっています。

しばらく歩くと急に住宅が減っていきます。
実はもう少し手前の交差点で左折し、高島大津線に乗るべきでした(後述)。
うっすら不安を覚えつつも湖西道路が見えるまで直進します。

滋賀は空気が澄んでいて、南東の空にオリオン座が綺麗に見えました。

合ってません。さっきも言った通り161号線は湖西道路のほうです。

そうです。あなたが歩いているのは477号線です。

ともかく、ようやく湖西道路に着きました。手前のコンビニでトイレ休憩をします。

コンビニに入ると、スタジャンに反射タスキのグループが!
別の参加者グループでした。ほっとしたのもつかの間、彼らから恐ろしい事実が告げられます。

「琵琶湖大橋から来ました」
「えー!私たちこれから琵琶湖大橋に行くんですよ。
琵琶湖沿岸を通って山科を抜けるんです」
「湖西道路から行かないんですか?」
湖西道路は歩行者通れませんよ?

!?!?!?!?!?

確かによく見ると湖西道路には歩道がありません。これはいわゆるバイパスですね。

帰寮計画が崩れ去る音が聞こえました。

えっどうすんのこれ

彼らと同じように琵琶湖大橋に戻るか?
しかし1時間分の移動が全て無駄になってしまう。沿岸部の強風にも当たりたくない。

ほとんどコンコルド効果の中、私が取った行動は、

477号線を直進し続けることでした。

湖西道路を越えた先は暗い山あいの道です。しかし私は2つの理由でもってこのルートを選びました。

1. いつかは京都盆地にたどり着けるはずだから
京都盆地の北東の隅、川端通と白川通の合流地点(宝ヶ池)からは国道367号線が北にのびていて、瑠璃光院、三千院などを通って左京区の山間部を貫いています。東西にのびる477号線を西に進んでいけば、いつかは367号線と交差するはずです。

国道367号線

2. たぶん往路と同じ道を歩いているから
車でドナドナされていたとき、山道を長い間走ったあとに住宅街に出ました。道のりの計算はGoogleマップで行っているという証言を踏まえると、ナビもGoogleマップを使っていると考えられます。ならば、琵琶湖大橋への主要道である477号線は、車で通った道である可能性が高いというわけです。

そういうわけで、いずれ大きな道と交差することを信じて、真っ暗な山道を歩く決意を固めたのです。

余談その2ですが、このタイミングで1000フォロワーを達成しました。

車一台通らない山道を歩きます。動物とか出てきそうで怖いです。

しばらく歩いていると、異変に気づきます。

スタート直後には左斜め後ろにあったオリオン座が今は真後ろにあるのです。
2時間半ほど経っているのでオリオン座は南中している頃でしょう。
つまりこれは、道が北向きになっているということです。

これは大きな誤算です。477号線は今までずっと西(西北西~西)にのびていました。これが北に大きく迂回するとなると体力が保つか分かりません。

367号線と合流するまでに、477号線は緯度にして
堅田駅~和邇駅もの距離(5km弱)を北上している。
もし477号線が真西にのびていたとしたら、三千院のあたりで合流しただろう。

ですが歩き続けるしかありません。中学校やら墓地やら妙に生活感のある夜の山道を進んでいきます。

バス停でネチコヤンを見つけました。

道が川沿いになり少ししたとき、ふと振り返ると見覚えのある光景が!

車の中でぼんやり見ていた景色と一致しました。
やはり往路と同じ道だったのです!

気力が湧いてきました。うねる夜道を進んでいきます。
自動車や他の帰寮カップルとも遭遇し、孤独も和らいでいきます。

そしてついに367号線との交差が目の前に…!

その交差点の名前は…

まだ途中

そうです。まだ途中です。
いくらこの道を南下すれば京都に出るとはいえ、まだ15kmもあります。
そしてまだ上り坂です。上り坂のトンネルが高圧的に待っています。

トンネルを抜けるとこんな施設がありました。

自然博物館的な何かかと思ったら山崎砂利商店という会社の施設らしいです。
色々な事業をやってるみたいだから気になる人はホームページを見てみてください。

上り坂に山影がそびえ立つ光景は圧迫感があります。

卯辰山にもあった頭上の構造物が怖いです。

その直後、歓喜の看板が!

滋賀から京都へ!
同時に坂が下り坂になりました。
峠を越えたのです!

さらに3kmぶりの信号機を発見!

光を放つ人工物に安心感を覚えます。

これは構図が好きな写真。

しばらく歩くと集落に出ました。

大原は京都じゃないみたいです。

はい。京都盆地まではあと7kmほどあります。

そして12kmぶりのコンビニです…!文明を感じる…!

しかし喜んだのもつかの間、大原を抜けると再び真っ暗な山道に入ります。

しかも月明かりも遮られた暗闇の道で、歩道はなく、道幅も狭く、片側は崖で、カーブも多く、さらには交通量が少なくないという地獄の道でした。
危険度でいえば一番の区間でしたね…

戦々恐々としながら歩くと別の集落に出ました。住宅が国道の崖下にあるのでしばらく気づきませんでした。

八瀬という集落らしいです。

そうしているうちに空が白んできました。夜明けが近いです。
橋を渡るとトンネルがありました。

八瀬トンネルには確かに母性がありました。
胎内回帰ってこういうことなんだなぁと思いました。
疲れてたんじゃないかって?そうともいう。

甘えたくなる欲求を抑えてトンネルを抜けるとなんと夜明けが!!!

川の向こうには集落も見えます。

ここが一番感動しました。
人間の暮らしが有彩色で彩られている。

あとはもうウィニングランです。

コンビニで文明を享受し、

晩秋の紅葉を堪能し、

澄んだ空気の中、まるで早朝の散歩をするかのように、

京都盆地に到着しました。

ここからが長いんです

「百里を行く者は九十を半ばとす」って言葉あるじゃないですか。
プロジェクト全体が巨大だと最終タスクが十分に分割されておらず、その大きさを見誤ってしまうってやつ。
今回、「京都盆地に入る」ことに意識を向けすぎた結果、そこから熊野寮までの道のりを過小評価していました。

宝ヶ池駅から熊野寮って5kmもあるんですって。

しかもハイになってるから疲労にも気づかない。
さらに何をとち狂ったのか1日1回大文字をしようと寄り道を考える始末。

大文字に行くため遠回りの白川通を下っている途中にスマホの電源が切れました。

さっきまでの疲労と負債が一気に襲いかかります。

希望と絶望って本当にあるんですね。
夜が明けてからはあんなに動いた体と脳が今は鉛のように重い。

白川通、今出川通、立ち止まるたびに寝そうになり、そのつど自分を叩き起こして前に進みました。
京都市のど真ん中で遭難するのだけは嫌だ。

東大路通では全てのコンビニでトイレが使えないという目に遭いました。
残り1kmでストレスがマッハ。

それでもボロボロの体を引きずり、あらゆる障壁を乗り越え、午前9時5分、

帰寮しました。

総括

今回通ったルートはこちらです。

脳内地図では琵琶湖大橋からまっすぐ西に進めば瑠璃光院のあたりに出ると思ってました…バカ?

お叱りを頂きました~!こんなんなんぼあってもいいですからね!

模範解答はやはり山科経由ですね。
スーパーやマクドナルドがあるうちに左折して高島大津線に乗るのが最適解でした。一般道の主要道ですからね。
ただ高島大津線、そこまで大きな道路じゃないんですよね…片側一車線だし…
深夜では見落としても仕方ないと思います。

振り返ってみて思うのは、今回の私の帰寮はイージーモードだってことですね。

距離も30kmと短いし、何より国道沿いに歩いているだけで帰寮できる。
道に迷う要素が全くない。
これではエクストリーム帰寮というよりオリエンテーリングです。

Twitterを見ると、60kmで自分の位置も分からず彷徨っている人、地元の人にコーヒーをご馳走になる人、無一文で沖島に置いていかれる人、パトカーに乗る人、いろんな物語が生まれています。

みんなが見たいエクストリーム帰寮はこういうもののはずだ。
一本道のチェックポイントを通過していく姿じゃない。

そして、こんな道のりでさえも困憊してしまう私は弱い。

私のはじめてのえくすとりーむきりょうは、
コンテンツ力に乏しかった
この一言に集約されると思います。

来年はもっと変なとこに飛ばしてくれてもいいんだよ?

ここまで長々と駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

参加者の皆様、お疲れ様でした。
ドライバーの皆様、運営の皆様、ありがとうございました。

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