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In The Heightsーとにかくパワフルな最新作、絶対劇場で見て欲しい

というわけで1作品めは「In The Heights」。現在公開中の最新ミュージカル映画だ。

私も先日観に行ったが、このミュージカルに関しては「映画であること」を最大限に活かしており、かつその映像・音楽の体験は「劇場での鑑賞」で至高なものとなる。つまりとにかく劇場で見て欲しい。

のっけから始まる「In The Hights」、主人公のウスナビが曲に乗せて登場人物や舞台を簡単に説明した後に、盛り上がりに合わせて街の人がたくさん出てきて踊り出す。いわゆる「アンサンブル」がたくさん出てくる曲だが、私はこの時点で「あ、好き」と思った。
ミュージカルにおいてツカミの一曲めはかなり重要だと思うし、多くの場合そのミュージカル全体を象徴するような曲がくる印象がある。
しかしその中でもピカイチだったように思う。問答無用でテンションが上がってしまうような、大迫力のビートと群舞。いやぁ最早もう満足したわって思いながら曲の最後にドーンとタイトルが出てくる。もう最高。

このミュージカルに登場する曲はアップテンポで明るくて、元気が出るようなものが多い。
主人公のウスナビが歌う時はラップ調である一方、ヒロインたちの歌声は澄んでいて伸びやかなのも、個性が出ていて楽しい。
そして要所要所で一曲めのような、大勢で歌うアンサンブル曲があり、とにかく大迫力だ。自分もワシントンハイツの一員になったかのような高揚感があり、巻き込まれていく。
ほかにも登場人物の口癖やセリフがそのまま曲のモチーフになっていたり、ミュージカルらしさ満載というか、セリフパートと曲に連続性があるところがとても良い。「ミュージカルは急に歌い出すから意味不明で好きじゃない」とか言ってる人も、比較的すんなり受け入れられるのではなかろうか。

しかも「ミュージカルという舞台ありきの作品の映画化」というのを逆手に取ったような、映画ならではの演出も盛り沢山で、見ていて楽しい。私は舞台版を見たことはないが、演出の違いを感じながら見れたら尚面白そうだと思う。

さて、物語についてだが、舞台はNYのワシントンハイツである。
ラテン系の移民が多く暮らすこの街で、若者たちが「故郷」そして「アイデンティティ」とは何か模索する話であるが、結論から言えば特に何かが社会的にも解決するわけではない。
主人公たちに個々人の問題が現れ、悩み、乗り越えていくのが軸となっている。だからあまり派手なストーリーではないように思った。

しかし、そこに通底しているのは大きな社会問題で、「移民」や彼らに対する「差別」、そして彼らの街が直面する「ジェントリフィケーション」の波である。
日本は単民族国家だし、特にこの辺りのテーマに私はかなり疎かった。しかしこのミュージカルを通じ、てニュースで見るような、遠い異国で起きているそれらの問題を登場人物の「自分ごと」、つまり生の人間としてのスケールで捉えることができた。
だから、このミュージカルのストーリーは決して派手じゃなくてもいいのだ。

閉幕した時、これらの社会問題が解決しているわけでは決してない。それでも主人公たちが決断し、個々の問題を解決し、前を向き未来へ進んでいくことにより、観客も何か達成感のようなすっきりとした気持ちになっている。
そして登場人物と同じように、またこれからの日々を、時には困難もあるかもしれないが、頑張っていこうと思えるのだ。

また、大きな軸となっている「故郷とは何か」「アイデンティティとは何か」というテーマも、共感しやすく身に沁みるものである。
ウスナビたちの物語を見て、自らを顧みるのもまた一興だと思う。

楽しいシーンばかりではないが、通底して明るさがあり、パワフルな音楽と相まって元気が出る。
とにかく劇場で見てほしい作品である。

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