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「小学生の親1年生」の私はクタクタだった

土曜日の朝、一人暮らしをしている娘からラインがきた。
小学校の40周年記念行事の時にタイムカプセルに入れた作文を20年後の今日取り出すらしいから自分の作文をもらいに行ってきて欲しいというのだ。

娘がちょうど1年生になった年、小学校は創立40周年を迎え記念行事を盛大に行ったのを覚えている。

早速私は家から歩いて5分ほどの小学校の正門へ向かった。校庭は若い子のグループや、私のように代理で来た親が集いとても賑やかだった。


娘の同級生には小さな子供をベビーカーに乗せて来ている人や赤ちゃんを抱っこして夫婦で来ている人もいた。
昔の面影を残しながらも皆すっかり大人顔になって、時の流れを感じてしみじみする。

私も当時のママ友さんたちとの久しぶりの再会に話が弾んだ。

今から20年前。
娘が小学校に入学したのと同時に私も「小学生の親1年生」になったのだ。
近所の公立の小学校で娘の学年は1クラス40人の4クラス編成だった。
同じ幼稚園だった子が学年に15人程度いたと思うが、ほぼ親も子も知らない人だらけの中でのスタートだ。

あの頃の私たち1年生親子は今にも共倒れしそうなくらい日々を必死に過ごしていたように思う。
親の私がもっとどっしりと構えて娘を見守り、そっと支えてあげれば良かったのだが、私ときたら小さな出来事も大きく受け止めて動揺してしまい娘より先に不安になりアワアワしてしまうような頼りない母親だったからだ。


「休み時間がやだー 」
小学校に入学して2週間程たったころだったか。
娘は朝になると学校に行くのを渋った。
理由を聞くと、休み時間になると皆が一斉に外に遊びに行くのだそう。一方、娘は外で遊ぶのはあまり好きではなく教室で本を読んだり絵を描いて過ごしたいのだが、先生が「みんな〜外に出て遊びましょう!」と言うので教室には誰も残らないらしい。
仕方なく娘は1人で外に出るが、遊具も校庭も人でいっぱいで居場所がないのだという。

そんな話を聞いた私は、休み時間中ずっと我が子だけが1人ぼっちで校庭の片隅にしょんぼりしている姿を想像するだけで胸が締め付けられる思いだった。
休み時間というのは子ども達にとっては楽しい時間なんだと思い込んでいた私はショックだった。

娘が友達と一緒に楽しく外遊びができることを願いつつも、雨が降れば外遊びをしなくてすむだろうと考えた私はその日から毎日「雨が降りますように」と天に祈ったりもした。
ある日は、休み時間の時間を調べてこっそり学校に様子を見に行ったこともある。
誰にも見つからないように帽子とメガネで変装までして。



次にショックを受けたのは保護者の学級懇談会でのこと。
「うちの子は学校が大好きで〜」

「うちの子はお友達が沢山できて帰ってくるとずっと学校の話をしています〜」

「うちの子は日曜日も学校があればいいのにと言っています〜」

担任の先生を囲み、親達が一人一人順番に我が子の家での様子などを話すのだが、皆さん、学校が楽しくて、楽しくて〜〜みたいな話ばかりで驚いた。
和やかな懇談会の中で私の番がまわってきたが、面白いエピソードのネタも無い私は「新しい環境に慣れるのに少し時間がかかる性格ですが、親子ともども1年間よろしくお願いします」みたいな当たり障りのないことをサラッと話すだけだったと思う。
ようやく学校生活に慣れたところだった我が家では1週間が無事に終わると、ドッと疲れが出て心身ともにクタクタだった。
日曜日まで学校に行きたいなんて言葉が娘の口から出るはずもなく、私は「うちはおかしいのかな?学校ってそんなに楽しいものなの?」とショックで寝込みそうになった。

しかし、しばらくするとこんな「一年生母さん」にも頼もしいママ友ができて、彼女たちの存在が私にはとてもとても心強かった。

頼もしくて優しいママ友さんは、「今日役員会で学校へ行ったら、娘ちゃんは友達と楽しそうに鉄棒で遊んでたわよ〜」とわざわざ私に知らせてくれたり、「うちのお姉ちゃんの時はね〜〜」と上の子の体験談を聞かせてくれたりして私が不安そうにしているといつも助けてくれた。 

「皆同じようなことで悩んだりしてるものよ」

「子どもは子どもの世界でちゃんと成長するから焦らずに見守っていれば大丈夫だよ」

こんな言葉に私はずいぶんと救われたのだ。
お陰で肩の力が抜けて母も少しずつ成長できたように思う。

同じように娘にも仲良しの友達ができて、毎日一緒に下校する友達や放課後遊ぶ約束をする友達ができると自分に自信がついて徐々に逞しくなっていった。


タイムカプセルのお陰でそのママ友さん達とランチ会の約束をすることができたのは嬉しかった。

後日のランチ会では食べて、喋って、笑って、ちょっとシンミリして。あっという間に時間が過ぎた。
子育てが終わった私達はそれぞれがまた悩みを抱えながらも前を向いて一生懸命生きているのだ。


がんばろ!

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