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朧の森に行ったら魂が帰って来れなくなった話。東京編(ネタバレあり)

こんにちは、はるりんpicです。
今回の記事は観劇ログです。この度の演目は…

べぇん!!(三味線の音)

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』
2007年に劇団☆新感線が上演した同名タイトルが歌舞伎NEXTとして帰ってきました、という舞台です。
2024年の年明けに上演決定&キャストの発表がされて、「なんかすごいのが発表されたぞ、松也さんもご出演だしこれは絶対見に行かねば」と思いました。
またある時に知人からも「オリジナル(新感線版)もすごかったよ」とおすすめいただき、話を聞いたあと速攻で円盤を購入。17年前の映像を見ながらさらに観劇意欲を高めていくことになります。

劇団☆新感線、実は子どもの頃に父から劇団と劇団付き脚本家・中島かずきさんのお名前だけは教えてもらっていました。
が。
劇団☆新感線の舞台を『朧の森〜』の歌舞伎NEXTでの上演決定まで全く見たことがなく(強いて言うなら父が見ていた『星の忍者』のビデオをチラッと見たことがあるだけ、デーモン閣下が出演されてた以外の内容は全く覚えていない)、舞台に興味が向いてきてからいつかは見てみたいなぁと思うようになったある種憧れの劇団でした。

その劇団の演目が2024年末に見られる。
面白いと聞く。推しも出演する。

見ない理由がどこにある!!!

6月の配役とティザービジュアルの発表に発狂し、メインビジュアルの発表(10月に出ました)をそわそわ待ちつつ東京と博多での観劇予定決めとチケットの手配、博多遠征のヒコーキと宿も併せて確保していきました。
2月に東劇で上映された歌舞伎NEXT『阿弖流為』や8〜9月に東京・明治座で上演された『バサラオ』も見に行って、「劇団☆新感線すげー!」と期待をさらに高めたりもしていました。

鑑賞席からの眺め。
ツッコミどころが写ってますがそれはまた別の機会に。

物語のあらすじは冒頭のリンク先を参照、博多遠征のログはまた追い追い載せるとして(博多は2025年2月の話になりますし)、ここからは観劇の所感をつらつらと綴っていきます。

⚠️ネタバレ配慮は一切ありません。初見のワクワクドキドキをとっておきたい方はこれ以降は閲覧しないことをおすすめします。

11月30日:圧倒された初日

劇場の正面入り口。満員御礼の札がありました。

というわけでやってきました新橋演舞場!
↑の写真は昼夜の間で撮ったので閑散としてますが、入り口周辺は大勢のお客さんで賑わってました。

初回は俯瞰で見ようと3階席で鑑賞。花道は死角に入ってしまうため花道でのお芝居は完全にSOUND ONLYでしたが、特に鑑賞に難儀することもなく楽しめました。

舞台は朧の森をイメージしたであろう障子風の幕に戦場の映像が投影され、花道から主人公・ライ(松本幸四郎さん/尾上松也さん。以下幸四郎さんのライ=ライ四郎、松也さんのライ=ライ也)が登場するところから始まります。
円盤で見た景色と展開だ、うんうん。なんて見ていたらあっという間にタイトルロールである朧の森の滝の場面に。
障子風の幕が再び開き、森の滝と3人のオボロの姿が見えた瞬間鳥肌がゾワゾワ立ちました。朧の森、本当にあった…。
中村時蔵さん・坂東新悟さん・市川染五郎さんが演じるオボロたちの踊りが妖しくも綺麗で、双眼鏡越しに魅入ってしまいました。

幕が開くまで一切ビジュアルの情報がなかったエイアン四天王・サダミツ(尾上松也さん/松本幸四郎さん)でしたが、結構歌舞伎色が強い拵えという印象でした。そしてこのサダミツ、かなり特徴的な笑い方をするキャラクターなのですが松也さんが初っ端から「ふぁーっふぁっふぁっふぁ!!」と最高な笑い方を披露してくれました。待ってました、これぞサダミツ!!!(だけど喉が心配になる…)

歌舞伎要素が入ったことで立ち回りのシーンがよりクローズアップされた印象で見られたり、ラジョウの酒場のシーンがだいぶマイルドになったり(個人的に新感線版のラジョウの酒場のシーンは刺激が強かったのでありがたかった)と、新感線版を踏襲しつつ歌舞伎と上手く融合されていました。

何より映像で見た幸四郎さん演じるライが目の前におられて感無量でした。幸四郎さん、めっちゃ悪い奴の役なんだけどめっちゃかっこいい。

大ラスの演出も「ふわぁぁぁ…ッ!」って言葉にならなかったです。滝の中へと消えたはずのライが鬼に姿を変えて現れて宙乗りをして去っていくのは反則でしょう。
「新感線版ではティザービジュアルでしか登場しなかった鬼の姿はこういうことだったのね」と銀座しらたまやさんでの初日打ち上げでも話が盛り上がった演出でした。劇伴曲もロックだし、あのシーンは一度見たら忘れられない。

幕間含めて4時間でしたがあっという間に終演。スタンディングオベーションも起こりました。

初日夜公演の鑑賞席からの眺め、
ほぼドセン!

ちょっと一息ついたのち今度は松也さんがライを勤める夜公演。なのにボーッとしていて、松也さんが落武者狩りのライの姿で現れたとき「あれ、ライは松也さんだっけ?」とすっとぼけた疑問が(汗)
合ってるよ、主演Wキャストだよ! この回のライは松也さんだよ!!

…ワタシのすっとぼけはさておき、初っ端の落武者との乱闘?シーンからすでに幸四郎さんと松也さんでライの違いが見られて面白かったです。
ライ四郎は劇伴曲のリズムに乗りながらキンタ(尾上右近さん)と落武者の乱闘を見てなかったよ?
あと、ライ也は話が進むほど悪いことすると悪いニヤリ顔をするね? ストーリー序盤でシュテン(市川染五郎さん)との義兄弟の契りで交わされた時に使った血人形を斬るときもニヤリしてたよ? でもこのニヤリはショックだったなぁ。。。

観劇していて驚いたのが、夜公演にはすでにブラッシュアップが入っていたことでした。そして早々にアドリブの台詞! すごいなオクマちゃん(片岡千壽さん)…!

夜公演もあっという間に幕、その後銀座しらたまやさんで観劇談義に花を咲かせて久し振りの終電で帰宅。
…しましたが、帰りの電車内でもうすでに放心状態。ずっと息をしないで見ていたようで頭も痛かったです。期待と覚悟はしていたけど、とんでもない舞台を見た気がする…。

12月9日:ライのなれの果てを見た気がした2階席観劇

今度は2階席の上手側から

初日から約10日後、再び新橋演舞場へ。今度は2階席から観劇です。
…というのも、9月の舞台制作会見で「本水や宙乗りなど、歌舞伎でおなじみの演出も盛り込みます」というお話があったけど、後援会にチケット手配をお願いしたときに宙乗りがよく見える席を考慮してなかったなぁ、と思ったのです。
1回分だけ追いチケできる余裕があったので(←嘘ですわざと余裕を作りました確信犯です)、宙乗りがよく見えそうな2階右列の席をライ也回でセルフ手配見切り発車のおかわりしました。

2階右列の席は上手側・附打ちさんのいらっしゃる辺りが見切れてしまうぐらいで、ここも特に難儀なく鑑賞できました。花道もほぼ全部見えるし宙乗りもほぼ一部始終見える良席。我ながら良いところを押さえた😏
(ただ、ずっと首を右に向けていたので首が痛くなりました😅)

初日を見てから10日ほどでしたが、すでに演出に変化がありました。シキブ(坂東新悟さん)が絶命するシーンで海老反りをしていた気がするんですがいつの間にかなくなっていました。
あとは、シキブが一句読むシーンで『春の海』(お正月でお馴染みのアレ)が流れたり、キンタとオクマの馴れ初め?シーンで『禁じられた遊び』が流れたり。『禁じられた遊び』はこの回しか聴けてないからもしかしたらアドリブだったかも。

さて、この日の目的は大詰めラストの宙乗りをがっつり見ること。東京ではこの1回しかガン見できるチャンスがなかったので、周りが拍手で盛り上がるなかヒトリ双眼鏡でじーっと宙乗りをする鬼のライ也を見ていました。

すーっと離陸?しながら宙を歩く動きで前へ進んでゆき、左右を見渡しながら見得を決める…。
見得の動きも表情も、松也さんだけど松也さんじゃない。ライだけどさっきまで舞台にいたライとも違う気がする。朧の森の魔物になり果ててしまったライがそこにいました。
見得を決めた瞬間に目が合った、ライ也の目が忘れられない。あれはもはや人ではなかった…。

12月12日:ライ四郎とライ也の見比べ観劇、と思いきや…

昼の部(ライ也回)は上手寄りの席から
夜の部(ライ四郎回)はほんまもんのドセン!

12日は2階席で見た大詰めラストシーンの衝撃から間を空けず、初日ぶりの昼夜通し観劇。
(12日は昼=ライ也、夜=ライ四郎でした)
…いや、ホントは通うなら週イチくらいのペースにしたかったんですが仕事の都合で間隔が詰まってしまったんです(´・ω・`)

「回数見たい演目は、初っ端は寄りと引きの画で見る」がmy慣例なので、やっとこ同じ条件で見て比べてができました。
松也さんのライは″堕ちていく″かつ繊細なライ、幸四郎さんのライは″突き進んでいく″かつ大胆なライだなという印象でした。同じ脚本・同じ演出なのに演じる俳優さんが替わるだけでこうも違うのか。確かに「2回は見てほしい」と宣伝していたのも頷けます。

でもこの日一番ささったのはキンタでした。
朧の森のおばけにビビったり、自分の存在を無視するシュテンにオラオラしたり。鑑賞回数が増すほど表情が面白くて目が離せないキャラクターでしたが、「自分も裏切られてしまうんじゃないか」とライに詰め寄るシーンや血人形の呪いで失明してしまうシーン、そして何より信頼していたアニキに裏切られてもなおライを「アニキ」と呼ぶキンタに心がきゅっとなってしまいました。
オリジナル(新感線版のキンタは阿部サダヲさん)・歌舞伎NEXT(ライ四郎・ライ也)の3パターン見ていますが、ライ也ver.が一番感じ方が強かったです。中の人同士が普段から仲が良いと聞くし、役でも仲良しの義兄弟がこんな運命を辿ってしまったから余計にそう感じてしまったのかしら。。。

12月25日&26日:堕ちていくライの哀しさを噛み締め、見たかったシーンを間近に見た東京千穐楽

東京の千穐楽だよ、全員集合!
…ってまたツッコミどころのあるものが写り込んでますが
こちらもまた別の機会に。

ついに来てしまった、東京千穐楽。
ライ也千穐楽は過去の1階席観劇と場所に大きな違いはなかったのでとにかくじっくり見るに徹する、ライ四郎千穐楽は花道横ブロックだったので見たかった花道でのお芝居をがっつり見るに重きを置いて観劇しました。

『朧の森〜』は花道でお芝居するシーンが多く、初っ端の「屍人の山は宝の山だー!」から、「一緒にのしあがろうな!」と義兄弟で約束を交わすシーン、イチノオオキミ(坂東彌十郎さん)とお客さんの寸劇、いつの間にかセリからひょっこり顔を出すキンタとショウゲン(大谷廣太郎さん)、悪巧みから一気に転落して右往左往するサダミツ、感情を爆発させるツナ(中村時蔵さん)やシュテン、人ならざるものへと姿を変えるライ…、と花道がメインになる気になっていたシーンやクローズアップで見たいシーンをばっちり観劇できました。やはり花道横はよい。

ライの決めの台詞もやはり千穐楽が気迫が凄かった。ライ也の「外道? 冗談じゃねえ、これが本道だよ!」の台詞は千穐楽が一番でしたし、花道横で聞いたライ四郎の「俺がこの森を、滅ぼしてやる!」「これが俺の! 最後のペテンだァ!!」は空気がビリビリと震えていました。月並みな言葉でしか言えないけど、やっぱり俳優さんは凄い。

千穐楽はカーテンコールで一言ご挨拶がありましたが、二人ともやりきった表情をされていました。熱い熱い約1ヶ月、お疲れさまでした。そしてありがとうございました。

とても長くなってしまったので、ちまちました所感とちょいちょい写真に写り込んでいるアレについては以下の記事で触れたいと思います。

ここまでのご精読、ありがとうございました。