街と旅のあいだ
旅って何だろう?
私にとって、「旅」は必ずしも身体の移動を伴わない。
体が弱くて、布団の中で過ごす時間が長かった幼い頃。
私は、物語の中の世界では、元気に動き回り、いろんな冒険に出かけたものだ。
大人になった今、私は国内だけでなく、海外に出かけたこともある。
遠くへの移動を伴う旅は、刺激的で、未知の体験をさせてくれる。
だけど、どこにも行かなくても、今いるここではないどこかに出かけ、いつもは知らない誰かと出会い、未知なる体験をすることが出来ると私は知っている。
行先は、実在するどこかの時もあれば、自分の頭の中の空想の世界だったり、本や映画、ドラマの中の世界だったりもする。
ほんの少しの時間。
必要なのはそれだけで、空想に浸る間、本を読む間、映画やドラマを観ている間、私は身体をここに置いたまま、普段の自分の生活から離れ、ここではないどこかに行ける。
そして再び私はここに戻ってくる。日常に。
日常の中の、ほんの少しの非日常。
身体の移動を伴わなくとも、ここから出かけ、ここに戻ってくる。
それはもう、私にとっては「旅」以外の何ものでもない。
街での暮らしという日常と、非日常である旅を、行ったり来たり。
街と旅のあいだ。
これまでも、そしてこれからも。
それが私の暮らし。