生きるのが難しそうなあなたへ
「生きるの、難しそうやなぁ〜、自分」って言われたことが、妙に見透かされてしまったようでびっくりした。
大阪hoffmaに来ていた常連のお客さんの1人が急に僕にそう言ってきた。おもしろかった。全然そんなことないよって言いながら、そんなふうに見えてしまうのが勿体無いなーって思った。
「それなのに、音楽がめっちゃ人」って言っていた。褒め言葉として全部飲み込んだし、そのつもりで言っていたんだと思うけれど、あまりにもズバズバ言ってくるから楽しかった。
コロナ禍以降初めて県外に出た。それが大阪だったのは、なんだか自分でも変なのって思うくらい正直なんでなのかはっきりとは分からなかった。くるくると回っていたら辿り着いたっていうのが1番近い感じがする。縁のようなものに呼び込まれた気もするし、たまたまだと一蹴してしまえそうな気もするのかもしれない。
でも、人懐っこい人が多い大阪の街が、妙に僕は居心地がいいです。居心地いいなーって思っていたら、「生きるの難しそうやな〜、自分」って言われたからびっくりしたけど。
大阪 谷町6丁目のhoffmaという服屋兼バーみたいな場所でライブをした。Fuyuhikoくんっていうセンスのよい企画者(オーガナイザー?)がこの日を作ってくれた。
2年半ぶりに見る知らない街の景色は、外国に来たときの気持ちと似てた。車を降りると馴染みのない大阪弁が聞こえてきて心地よかった。「ほんなん、やめときー」とか言ってた。
街は都会っぽい格好をしているのに、ところどころ古くて愛おしい路地や家屋が並んでいた。隙だらけだったのがなんかほっとした。
アジアだなあって思ったし、日本だなあって思った。でも、僕に馴染みのない日本。
ライブのことはあまり覚えていない。覚えていないというか詳しく言語化したくない気がした。なんだかとてもいい時間だったから。
大阪の人は怖いって思っていたし今でも少し思っているんだけど、今日、あんまり怖くないかも知れないって思った。みんなあたたかくて柔らかくて、僕と僕の音楽を大いに受け入れてくれた。嬉しかったです。
十数人のお客さんが来ていた。知らない人がほとんどだったけど、みんな楽しそうだった。
変わらず2年半、みんなも生きていたって思うと親近感が湧いた。だって、差こそあれそれぞれの範囲に閉じこもっていたから。
おんなじような顔してるのに、少しだけ違う空気を纏ってる。みんな。それが楽しかった。名古屋にも岐阜にも、あんな人たちはいないなって思う。だからその地に赴くことがやっぱり尊くなった。
音楽は、接続器みたいな役割だった。人と人とがそれを通して交わって、ぱらぱらと店を出てどこかに帰って行った。
商店街の脇、公園の隣、瓦屋根の下。変だった。日常みたいな顔してるのに、非日常を見ていた。
僕以外にあと2人の人たちが音楽を奏でた。
音楽って言葉はとても狭いって思った。弾き語りって言葉も、ソロって言葉もとても狭い。
ニシヤマユウタは、ニシヤマユウタだし、シラハタショウコはシラハタショウコでしかなかった。僕は僕だったと思う。
そういうのは、TwitterやInstagramを眺めていても分からない。「ハッシュタグ弾き語り」では見えてこない。
だけど、整理しやすいからデータにタグを付けていく仕組みがとても稚拙に思えた。
「大阪」っていうタグも、ずっと狭い。だから、記号としての大阪は、ほとんど何も表していないって思った。
見たものだけが全て。
20歳くらいのオーストラリアの朝焼けの浜辺の僕が、遠くから睨んでくる。白けた目をして。
忘れてしまうからね。忘れてしまうようなことは大したことがないというのは嘘だ。人間は大したことも忘れてしまう。だから戦争だってするんでしょ?
今日は何を書いているか、ほとんどの人には分からないかもしれない。なんだか、それでもいいやって思うくらいに、いい日だったってことです。わざわざ2時間半車に乗って知らない街まで行くことは、わざわざ2時間半車に乗って知らない街まで行くこと以上のことが待っているってことでした。
ゆっくりと春が興り出しているように、僕もなんだかうごめいている気持ちになった。新しい曲を5月終わりにリリースするから、その前に1人でもたくさんのまだ僕を知らない人に聴いてもらいたかった。今の自分の歌を。だって、レコーディングしたものは、レコーディングしたときの歌になってしまっているんだから。
そうやって、全部過去になっていくのかもしれい。だから、歌い続ける理由ができる。ここにいるのですって言うのってとても健全だ。「おはよう」とか「おやすみ」とか、「うまーい!」とかと一緒だとも思う。
次のライブは、5月21日土曜日。京都です。これまた楽しみすぎる日。それまでまた毎日をごそごそとやっていきます。
こんななんの整頓もしていない文章を最後まで読んでくれて、きっと変わり者の方だと思います。そういう人は好きです。ありがとうございました。おやすみなさい。
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