『あのこたちは、どこに』①小説
仕事を辞めて、2週間が経つ。この前、一社を受けるが、連絡がない。
自分は、社会に必要とされていないのではないかと平日の青い空の下、買い物に車で走っていると時々思う。
自宅にいると自分を責めてしまうので、藤田風海は外出した。乾燥した冷たい風は、服装の薄いところから入って肌を突き刺す。名前に『風』とあるけれど夏生まれの風海は、厳しい冬の時期は苦手だ。
車に乗ってエンジンをかける。行き先は何となく決めているが、そこに何があるかわからない。一度行った記憶は、ある。
時間だけはある。なので、行ってみようと思った。
自然公園に続く広い道路を通って行くと、次の信号から細い道路になる。急にカーブになり、少々ブレーキをかけて、車体の後ろのストップランプが赤く光る。
辺りは民家はなく、木々の間をアスファルトの道が通る。そのうち平坦な道路になると道の左手に小さな滝が流れていた。
随分遠くまで来た気がした。車のフロントガラスに白い小さなものが当たっては溶けた。
「あっ、雪だ…」その雪は、初雪だというのに風海には「今日、雪降ったね」と言える人もいない。
大きな池をまたぐようのな真っすぐな道を通る。池はエメラルド色をしている。けれど、対向車もなく街灯もないところだ、何かをこの池に投げ入れても気付かれないだろう。そんな池に、もし事故か何かで池にはまったら、そう考えると風海は少し不気味な気がした。
そのうち、川になり、桜の並木が川沿いにずっと植えられている。
風海は、車を進めて行くと民家が現れた。この辺りの民家は、どういう交通機関で街に出るのだろうか?そんな事を思いながらアクセルを踏む。
その先にある信号機が、赤になった。 三差路になっていた。
「どっちに行こうか」風海が呟くと、
左の車の窓から特産物の店があった。信号機が青になったのでその店の駐車場に車を止めて店に入った。
店にはこの辺りで採れた葉付の大根や土が付いた芋や玉ねぎが、ずらりと並んでいた。
その奥に民芸品だろう、竹細工で籠が大小と並んでいた。その横には手作りのハンカチや鞄、チャームが売られていた。その壁に箱が掲げられて「自由にお取りください」と貼られていた。黄土色の紙に、
「あなたの手作りや趣味の物、要らなくなったものを売りませんか?」と書かれていた。
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