2020年2月の記事一覧
『三都メリー物語』⑨
立春後の寒気で、寒があけてもまだ残る寒さのことを余寒(よかん)というらしい。
レイは、氷点下で白く凍った道路を仕事に向かう駅へと歩いていると、そのうち東の空から眩しい太陽の日が差し掛かってきた。レイは、自分の吐く息が一段と白くなるのがわかった。
入社してレイは、3年目からもうすぐ4年目に入る。そんなある日の午後の3時の休憩後に、レイのいる部所に上司の島田さんと共にフロアに入って来る女性がいた。
『三都メリー物語』⑩
西の空に夕日が沈みかけている。辺り一面が
藍色に染まるそんな光景をブルーモーメントというらしい。天気がよく雲のほとんどない、空気の澄んだ日にだけ現れると言われている。
レイは仕事を終えて駅まで歩いていると、その光景を目にした。電車に乗り、帰宅ラッシュの人並みに押され車内の奥へと進む。
昨日は、何のメールもなかった。そんなものよ。名前も書かずにいたのだから。レイはそう思う。
電車は進み出すと、