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三都メリー物語

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神戸、大阪、京都を背景に男女の人間模様を描いてみました。
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2020年1月の記事一覧

『三都メリー物語』⑤

日が暮れてしまうと11月でもやけに冷える。電車の中にいても扉からの隙間風で、そう感じる。座席に座っていると足下だけがやけに暖かくて電車の小さな揺れが眠気を誘う。
藤岡准教授は、東向日という駅で降りた。四条河原町の駅のホームで藤岡准教授は、なぜ私を抱きしめたのだろうか?
奥さんに離婚しましょうと言われて寂しかったのだろうか?  抱きしめたかったのは誰でも良かったのだろうか?
それとも、私だから

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『三都メリー物語』⑥

大学の図書館の窓から見える空は、12月とあってどんよりしている。川田レイは、3時限めが終わってから大学が明日から冬休みに入るので学生は少ない図書館でレポートを提出するためにまとめていた。
暖房の効いた天井の空調機から暖かい空気が、レイに眠気を誘う。レイの手からボールぺンが離れて机に転がって椅子から何処かへと落ちていった。
レイの斜め後ろの席の学生の足下にあることに、その学生が気付いて、ボールペン

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『三都メリー物語 』⑦

1月に入っても気温が15℃という暖冬だ。2時限で終わったので川田レイは、異人館に行ったことがないという佐野美緒と一緒に行ってみることにした。美緒は、四国からこちらの学生寮に住んでいる。

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