留年に対する、とりとめのない感想。
割と人に恵まれた人生だったと思う。
特に高校時代に関しては。
人より1年多く高校に通った。
病気というか、障害というか。
とにかく、入学して最初の1年間は廃人のような生活をし、
次の年から“普通の”高校生活に戻った。
“自分は普通じゃない。人と同じ生活ができない。”
と悟りつつあったのか、“普通の”生活にものすごく執着した。
普通であることが重要だった。
「1年先に入学してるからって、不利にも有利にも取り扱わない」
と事前に担任に言われていたが、実際は有利に取り扱われていた気がする。
先生方も何かと気にかけてくださっていた気がするし、
入学した年…要は留年前の…元同級生の子たちからも心配されていたようだった。
廊下ですれ違う度に手を振ってくれる元同級生や、
廊下に張り出されたテストの順位表で私の名前を探して喜んでる
元同級生もいて、自分が思ってたより疎外感はなかった。
「元の学年に戻りたい。どうして自分は留年してしまったのか。」
という呪いのような気持ちとの戦いでもあったが、
新たな学年での友人にも支えられて、その後は何とか“普通に”進級した。
高校3年の秋のこと。
“普通に”過ごしたいと言ってる割にはサボり癖のある私は、
何かがあって学校を早退しようと思い、職員室の担任に言いにいった。
担任からブツブツ言われながらも早退の許可を得て教室に戻ろうとしたところ、
職員室と廊下をつなぐ準備室の奥に、誰かいるのに気づいた。
隣のクラスの女の子だった。
私は下宿して高校に通ってたのだが、
同じ下宿に住んでる女の子と仲良くしていた子だった。
だから、顔と名前は一致していた。
そして、その子がいた準備室の奥の場所が
「学校には来られるけど、何らかの事情で授業に出られない人」
の居場所であることも私は知っていた。
「どうしたの?!」
話を聞くと、出席日数が足りないのでここにいる…とのこと。
文化祭の日も来ざるを得なかったとか、
その子の担任が留年を許してくれないとか、
いろいろ話を聞いているうちに授業開始のチャイムが鳴ってしまった。
授業が始まってから早退するために教室に荷物を取りに行くのは
さすがの私でも気まずい。
その時間に帰るのは諦めて、話を続けた。
その女の子によると、
私が留年後に在籍していた学年でも留年した子がいて、
その子が廊下を歩いていて元同級生に会うと、
舌打ちというか、すごく白い目で見られてつらい、
と言っていたそうだ。
あと、その子が勉強をしていて分からないことがあって
先生に質問をしに行くと、
「授業に来てない生徒に質問されてもねぇ」
と全然相手にしてもらえない、ということもあったとか。
私は心底びっくりした。どこの世界線の話かと思った。
前述のとおり、私は元同級生に白い目で見られたことは
ゼロとは言えないが、ほとんどなかった。
むしろ、みんな助けてくれていた。
あと、先生方も、私が学校に通えてなかった入学した年でさえ
「勉強してて分からないことがあったら、遠慮なく聞きにきなさい。」
と言ってくださっていたのだが…。
私が学校に通うようになってから何か変わったのか、何なのか。
「私、ノートならいくらでも貸すよ!」
と私が言ったら、その子は英語のノートを貸してほしい、
というので、私は英語のノートを貸す約束をして、
その日は一緒に学校を早退した。
卒業式なんて絶対出たくない!クラスの子と顔を合わせるのも嫌だし…。
と言っていたその子は、約半年後、私と同じ日に卒業式に出席していた。
私は卒業式の日にその子に声をかけなかったことをとても後悔している。
「卒業式に無理矢理出席させられたんじゃないかな?」
という不安な気持ちと、
「卒業できたじゃん!」
と祝いたい気持ちと。
私は卒業式までの約半年間、彼女がどのように過ごし、
卒業式に出席するに至ったのか、何も知らなかった。
だから、そんな事情など私が気にする権利なんてなかったのかもしれないけど。
私自身、未だに「どうして留年したんですか?」
という質問に対する上手い答え方、というものを編み出せていない。
未だに自分の中では咀嚼しきれていない。
だけど、「だったら、実家から通える高校に通った方がよかったのでは?」
という安直な質問には、「絶対違う」と断言する。
確かに、あの高校に通わなかったら、
留年なんてしなかっただろうし、
そこまで苦労することもなかったかもしれない。
だけど、留年しなかった場合の自分の人生、
というものがまるで想像がつかないのだ。
留年しなかったら、その後の高校の友人とも、
その先の大学の友人とも知り合えていなかっただろう。
それらの友人のいない、私の人生があり得ない。
だからといって、「留年してよかった!」と大手を振って言えるほど、
私は器の大きな人間でもない。
ほら、結論出てないでしょ。
いつもこの堂々巡り。
きっとこのまま、留年した理由については
分からないままなんだと思う。
ただ、1つ言えるのは、
“あの高校生活がなければ今の自分はない”
ということだ。
友達にしろ、物事の考え方にしろ、
真っ直ぐ生きてたら、きっと分からなかったこと。
真っ直ぐにしか生きてこなかった人からは
バカにされがちなんだけど、
そういう人たちには絶対に分からないこと。
それが分かっただけでも、まぁいいかなぁと思ってる。
たぶん、結果オーライ。