助けられなかった。
学部2年のレポート課題には、
英語でアブストをつけなくてはならないものがあった。
とはいえ、実験手順等を受動態で書けばいいだけで、
さほど難しいものではない。
そこで、よく知ってる後輩から割と衝撃的な質問が出た。
「受動態って何ですか?」
彼は英語が苦手だ…ということは聞いてはいたのだが、
受動態は中学校で習うものだろうし。
私も「教えてあげなきゃな」と思う反面、
どこから手を付けたらいいのか、と困ってしまった。
彼は、そのためかレポート負債をかなり抱えていたようだったし、
(必修科目なので、レポートが通らないと卒業ができない)
他の科目も単位がかなり厳しいところがあった。
彼自身からも、そのことについて悩んでいると打ち明けられ、
私もかなり悩んだ。
「私が過去問の模範解答を作って、それをその子に
覚えてもらえばいいのかな?」
私は、そんな風に私の友人たちに相談した。
相談した結果、私がめちゃくちゃ怒られた。
「何で、はるぴょんがそこまでしなきゃいけないの?
あなた、そんな暇じゃないでしょ?!
ちゃんと自分のことをやりなさい!!」
何も言い返せなかった。
当時、院生だった私は全然暇じゃないにもかかわらず、
自分のことをかなり放りっぱなしにしていたから。
結局、彼には貸せるもの(文献とか)は貸して、
相談に乗ったりはしたけれども、
手助けらしい手助けがまるでできなかった。
それから時間が過ぎ、彼から退学した旨の連絡をもらった。
とても申し訳なかった。
「何とかできたのではないか…」という気持ちが
頭から離れなかった。
その子はバイト先の後輩でもあったのだが、
そのときと同じようなアルバイトをして生活をしている、
と言っていた。
ときどき大学のキャンパスに行って、ボーっとすることもあると。
(私もその気持ちはよく分かる)
当時のバイトに対しても、大学に対しても、
彼はいいイメージを持ってたんだな、
少なくとも、悪いイメージはないんだな、
と、私は少しほっとした。
不器用な生き方ではあるんだろうけど、
彼がかつての居場所を好きでいてくれたこと、
今の居場所を好きなこと、
要するに、前向きであることが、とても嬉しかった。
私の方が力をもらった気がした。
彼は元気だろうか?
久々に連絡してみようかしら。