私の小説

 もっと純粋なものだった。
 物語を考えるのが好きだった。
 いつからか苦しいばかりで、人の視線ばかり気にするようになった。
 真剣になったから。プロになることを意識し始めたから。もっと読んでほしいから。
 それはそれで純粋だろうとは思う。でも私にはその考えすら汚れて思える。
 物語を考えて、自分が楽しくなれるようなものを。人を楽しませる前に自分が楽しまなくては、そもそも面白いものなんて書けないだろうと。

 始めは漫画が、絵が描けないから書き始めたような気がする。もしくは国語の授業で小説を書いた時。それからずっとずっと書き続けてきた。十年以上。

 私には小説しかない。本当に、これしかない。それ以外にやり続けたいことも、注ぎ込みたいものもない。
 小説を取ったら、誰も私に見向きもしない。私も誰かにやっていることとして言えることがなくなる。それくらいに小説という存在は、私の人生の九十九パーセントを占めている。

 小説をやめるつもりは毛頭ない。
 だけど、最近は何を書いても昔ほどの勢いも、愛情も沸かない。ゼロとは言わない。言いたくもない。その時その時、精一杯書いているし、書きたいものを書いている。だけど、純粋だったと思える頃に比べたらなにもかもが劣って見える。文章力は向上したと思う。だけど見た目よく整えているだけでさらけ出しきれていないんじゃないか。キャラクターもストーリーも、昔に考えていたらもっと面白かったんじゃないか。そんなことばかり考える。

 今は今の良さがある。
 きっとそうだろう。
 だけど、私にはわからない。

 ありがたいことに、何名かの方に「あなたの小説には力がある」「読んで心を動かされた」と言ってもらった。だけど私にはピンとこない。もちろん言ってもらえたことは嬉しい、感謝もしている。だけど分からない。

 「誰かの心を動かす話が書きたい」
 高校生くらいの時に思ったことだ。今もそれは思っている。
 私がかつてそうだったように、物語を読んでて、生きようと思えたり、楽しいと思ったりしてほしい。
 私にはそんな力があるんだろうか。よくよく考えればそれは途方もないパワーのような気がする。

 何がいけないのだろう。

 それでもやっぱり、書くしかない。
 書かなくては、私自身生きる意味を見失ってしまう。

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春野訪花
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