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『デジタル激弱な作家ですが、Kindle出版できるでしょうか?』 ~3、やっぱり無理! と半泣きで頑張ったこと。

 こんにちは、野村美月です。
 ここからはKindle自主出版までの具体的な作業工程を語ります。

 最初にしたことは、出版社さんに契約解除の申し入れをすることでした。
 とっくに絶版している本ですが、こちらから解除をお願いしないかぎり契約は自動的に更新されてゆきます。
 このあたりのことは、作家のわかつきひかるさんが詳しくまとめられています。 

 わかつきさんはKindle自主出版についての記事や動画も公開されていて、どれも大変参考になりました。
 出版社へ送る申請書のサンプルまで格安でダウンロードできるという面倒見の良さで、私も購入させていただきました。
 わかつきさんは編集部ではなく総務部に送るよう書いておりますが、出版社の部署が細かく枝分かれしていて、ネットで調べても総務部の住所に確信が持てません。
 仕方なく20数年ぶりに、かつてお世話になった編集部にお電話しました。
 緊張しすぎて、めろめろのぐだぐだで、どうにか用件を伝えたのでした。

「契約解除の書類を送りたいので、総務部のご住所を教えてください」

 実際はもっと噛み噛みです。
 お電話をとられた編集者さんも、ぶっきらぼうで怖かったので(きっと忙しかったのでしょう。ごめんなさい)、余計に萎縮してしまいました。

「それなら総務ではなく、編集部に直接送ってください」

 住所を確認し、「あの……お名前を」と、おずおず尋ねたところ、これまたぶっきらぼうに「編集部宛で大丈夫です」と言われて、ご対応くださったかたのお名前をうかがえないまま、「しょ、承知しました。では、本日中に送らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」と引き下がったのでした。

 そんな感じで依頼書をポストに投函してから一ヶ月が過ぎました。
 なんのお返事もありません。
 仕方なく、またおずおずとお電話したら、今度は優しいお声のかたが親切に対応してくださいました。担当者から連絡しますとおっしゃってくださり、翌日メールが届いたのですが……。

「編集部内を捜索いたしまして、お手紙確認いたしました」

 え? 捜……索……? 

 つまり私が送った出版契約解除願いは、どこかに放置され埋もれていたということでしょうか?
 契約解除の合意書も送っていただけることになり、まずは安堵したのですが……。
 やっぱり担当者の名前は最初からしっかり聞いて、そのかた宛にきちんと送って、すぐに到着の確認をすべきだったと思いました。
 さらに契約解除の正式な日付が、先方の処理の都合なのか、この40日後です。

 ともあれ、契約解除の目処もついたので、そのあいだにKindleのほうを進めることにしました。

 次のステップは、KDPアカウントを取得することです。
 検索すると丁寧に解説してくださっているかたがいます。これなら私でもできそうです。
 ところが!
 登録のための情報を入力してゆくのですが、変換でリターンキーを押すと何故かすべて確定してしまい、次の入力スペースに飛んでしまいます。
 どうしてっ?
 わからないまま極力リターンキーを押さないよう気をつけて、気をつけて(それでも何度もやり直しました!)、どうにか入力を終えた──と思いきや、次の難関が待ち構えていました。
 今度は半角のカタカナで入力しなければならないのですが、半角カタカナの入力方法がわかりませんっ!
 Windowsで一太郎を使っていたときには簡単にできたことが、Macでは初体験です。半角カナの入力を検索してそのとおりにしたのに、全然変換されません!(※日本語入力ソースの設定で半角カナ入力モードを選択しておかないとダメだったようです)これも、さんざんやり直して、最終的には変換候補の中から半角カナを一文字一文字選んでゆくという、ものっっっすごくイライラする方法で入力を終えました。二度とやりたくありません。

 口座の登録まですべて終えると、通帳にAmazonさんから確認のため1円の振り込みがあります。
 それを見て、ああ……登録できたんだ、と気持ちが明るくなりました。

 さて、次です。
 販売用の原稿を作らなければなりません。
 大昔にワープロ専用機で作成したものなので、原稿を保存していたフロッピーディスクはとっくに処分しています。
 つまり文庫を横目で見ながら、私が自分で一から手入力しなければならないのです。
 この期間は、毎日毎日、パソコンに向かってキーを叩いていました。

 ここでまた問題が……。

 MacBookでegWordを使って執筆するようになってから、出せなくなったものがたくさんあります(正確には出せない、ではなく、出し方がわからないもの、ですね)。
 まずダッシュ線です。横棒をどう繋げていいのかわからず、原稿は常に「ーー」のような状態でした。
 波線も同様です。「~~」と打っていました。
 ルビや傍点も【ルビ】【﹅】と打って、おしまいです。
 英数字の縦書きが横になってしまったり、半角しか出せなかったりで、それも全部そのままです。
 これらはゲラにする際、担当さんがすべて正しく直してくださいます。
 けど、今回は自主出版です。
 頼りになる担当さんはおりません。
 ひとつひとつ調べながら、「──」や「〰︎〰︎」を入力していったのですが、これがのちに最大の頭痛の種になることを、このとき私はまだ知らずにいたのでした。

 さぁ、egWordで、とりあえず1冊分の入力が終わりました。
 ここからKindle用のデータに変換してゆきます。
 egWordの原稿をテキスト変換し、そこからMacBookに入っている文書専用ソフトpagesに変換します。ルビと傍点はここで追加します。傍点は簡単でしたが、ルビ! めちゃくちゃ打ちにくいです! 何故こんなに打ちにくいのか? 一太郎はあんなに楽ちんだったのに。
 途中から、ここはもうルビ無しで良し! ここもルビがなくても読めるでしょう! ここは──ええい、漢字をやめて平仮名にしちゃえ! と、どんどんルビが減ってゆきました。 

 そのままpagesで誤字脱字などの最終チェックをし、今度はそれをEPUB(イーパブ)に変換します。このEPUBがKindle入稿用のデータとなります。
 ようやくここまできました!
 あと一息です!

 が──。
 そう簡単にはいかなかったのです。
 むしろここからが、めちゃくちゃ大変でした。

 まず、EPUBに変換した縦書き原稿の「──」がどう見ても左に寄っています。「〰︎〰︎」もつながっていません。縦に「~」がひとつひとつ並んでいるという見苦しいことに。
 さらにさらに、ここからKindleビューで試しに確認してみると、「──」が太いのです! 左に寄っているのも変でしたが、太いのも相当変です! おまけに真ん中に寄せていたタイトルが、右に寄ってしまっています。

 結果、「~」に関しては早々にあきらめました。「~~~」で入力しています。
 けど「──」が太ましいのは、どうしても気になります。私はよくモノローグや回想シーンで「──」を使うので尚更です。
 どうしたら細くなるの~~~~! と半泣きで検索しまくりましたが、答えが見つかりません。
 Wordで書いていたら、こんな苦労はなかったかもしれません。でも、Wordで書くほうが私にとってはそれ以上の拷問なのです。
 けどこれはもうWordで一から原稿を作り直すしかないのでは?
 私が現在所有しているWordはMacに入っている無料のWordだけです。これだとレイアウトが縦書きになりません。
 製品版のWordを購入して一からやり直す?
 やっぱりそれだけは嫌です~~~~!

 他にも、pagesで目次を作るためにアップルサポートに電話をかけまくり、サポーターのきっつい女の子に叱りつけられながら作成していたら、途中で原稿がまるっと消えてしまい、
「なんで消えていい用の原稿を作って、それで試さないんですか!」、
 とまたガンガン叱られて、
「すみません、すみません」
 と謝りまくったり。

 ※アップルサポートのかたがたはいつも大変親切です。このお嬢さんも途中までは優しかったのですけれど、間に処理内容確認を2回挟んでの(調べてお電話しますというやつです)長時間に及ぶサポートにうんざりしたのか、だんだん声が冷え冷えとしてきて、口調もどんどんきつくなってゆきました。

 タイトルを真ん中に固定したくて、中央揃えを試みたら本当にど真ん中に移動してしまって、YouTubeの動画を参考にしてインデントを調整しようとしたら、何故かその項目が私の画面にはなくて、結局これもあきらめたり。

 困難は山のようにあり、どうにか乗り越えたものも、これでいいやとあきらめたものもありますが、最後の最後まであきらめきれなかったのが「──」です。

 最終手段で、某お仕事サイトで、有料相談を購入しました。
 が、……なにかもう最低でした。
 相手のかたの説明が回りくどくてものすごくわかりずらかったことや、え? と驚くような暴言を吐かれたり、しまいにはキレて怒り出して怖かったり、あげくに問題はまったく解決せず、先方申し出でキャンセルになったり、それは盛りだくさんでした。
 詳しく書くと1記事分はありますが、万が一相手に知られて、また絡まれると怖いのではぶきます。
 ただ、初めて利用したお仕事サイトの印象は、この件で地に落ちました。

 そんな、あらゆる意味で悪夢となった「──」ですが、当初はシフト、オプション、「ー」で作っていました。そのあと「けいせん」で変換させるやりかたを知り、今度はこれで作ってAmazonのビューワーで見てみました。若干ですが細くなったような……うーん、まだちょっと太いけど、もうこれでいいや、と妥協するよりなかったのです。

 気がつけば契約解除までの40日間はとっくに過ぎていました。
 まだ1冊もデータ化できていません。

 とにかく今あるものでテスト配信してみることに。
 Kindleのページで、販売のための金額設定やあらすじなどを入力してゆきます。
 送信して、あとはAmazonの審査待ちです。
 通常だと数時間で審査が終了して販売開始となるようなのですが、1日過ぎても2日経っても3日目に突入しても審査が終わりません。

 過去に別名義で出版した本を、今の野村美月名義で配信申請しているので、もしかしたら著作権侵害と思われているのでしょうか?
 本の紹介欄に別名義で出版した本だと書いたし、最初のページにも記載しているけど、それだけじゃダメだった?
 検索してみると、noteの記事をまとめてKindleで出版したかたが著作権侵害の警告を受けています。相手が人間ではなくAIなので、本人だと言っても聞いてもらなかったようでnoteの記事を削除して申請し直しておりました。
 やっぱり私も疑われているのでは?
 最悪アカウントを停止されたらどうしよう!

 じりじりしながら待つこと70時間──ようやく販売開始の案内メールが届きました!
 よかった!

 さっそくタイトルで検索してみます。
 ありました!
 ところが、試し読み機能で開いてみて愕然です。
 「……」が、縦書き表示で思い切り左にズレています。
 ビューワーでは普通に表示されていたのに、なんで~。

 またまた半泣きで検索すると、試し読みで三点リードがずれる場合も、実際にKindleのアプリで開けば普通に表示されるとあります。
 そこでKindleにダウンロードしてみました。
 ドキドキしながら専用アプリで開いてみたらちゃんと普通に表示されています。さらに、あんなに苦しんだ「──」もほどよい太さで表示されているではありませんか!

 嬉しい。
 これなら、ダウンロードしてくださったかたに快適に読んでもらえる。
 みなさんも、ぜひKindleの専用アプリからお読みください。
 アプリは無料です!

 著者セントラルにも登録しました。
 こちらで著作一覧を見ていただけます。商業出版中のものも追加しようと試みたところ、エラーになってしまいました。メールで問い合わせると、すでに野村美月の一覧があるため別人認定され弾かれてしまうようです。そのつど、ご連絡くださいとのことで、今回は『ものがたり洋菓子店』の1、2巻だけ追加してみました。

 これですべて終了です。
 ここまで本当に長かったし、頑張りました。
 今度は感動で、涙ぐんだのでした。

 最後に、ひとつ追記です。
 EPUBにしたデータには、呪文がかかっています。
 この呪文をかけないと正しく出力されないそうです。
 大切な呪文を教えてくれたのは、こちらの記事の松浦照葉さんでした。

 松浦さんもMacでデータを作成しています。私がメールで教えを乞うたところ、それは親切に丁寧にわかりやすく呪文の唱え方を教えてくださいました。
 本当に良いかたで、メールでの「頑張ってくださいね」という優しいお言葉も胸にしみました。
 綺麗に出力されたKindleのページを見ながら、心の中で「松浦さん、ありがとうございます」とお礼を言ったのでした。
 松浦さん、本当に、本当に、ありがとうございました。

 そして追記のさらに追記です。
 『夏のピルグリム』でポプラ社小説新人賞・奨励賞を受賞され、Kindle出版の大ベテランでもいらっしゃる高山環さんを、ポプラ社の担当さんにお願いしてご紹介いただきました。

 高山さんは、 Word(docx形式)で作成した原稿を、そのままKindleにアップロードしているそうです。私が3工程、4工程かけているものが 、Wordだと単体で完成してしまうのですね。

 でも、Wordだけは……Wordだけは、やっぱり嫌なんですぅぅぅ! Wordで執筆されているみなさん、どうしたらストレスなくWordを使えるのか教えてください! 重たくて、余計なことをしまくる上に、複雑すぎて理解不能なあの子は、どんな呪文を唱えたら素直な良い子になってくれるのでしょう?